元幕内で三役経験も豊富な西幕下筆頭の豊ノ島が9月14日の秋場所6日目、十両の常幸龍を取り直しの末、上手投げで破り、4戦全勝で勝ち越しを決めた。来場所は2年ぶりの関取復帰が濃厚となったベテランは、勝ち名乗りを受け、支度部屋へ引き揚げる途中で涙をこらえることができなかった。
「泣くつもりはなかったけど、花道を下がったらホッとしてしまった。正直、こんなに時間がかかるとは思ってなかった」
幕内の前頭十一枚目で迎えた2016年七月場所前の稽古で左アキレス腱を断裂する重傷を負い、この場所と翌九月場所を全休。同年十一月場所は12年半ぶりに幕下に陥落。連続勝ち越しですぐにでも関取復帰かと思われたが、患部を庇うあまり右足ふくらはぎの肉離れを発症させるなど、その後も度重なるケガに泣かされ、今年三月場所は幕下三十五枚目まで番付を下げた。
年齢も30代半ば。家庭を持つ身での先が見えない幕下生活は精神的にも経済的にも相当、堪え、何度も辞めようと思ったという。負け越しなら引退も覚悟して臨んだ同場所で6勝1敗の好成績を残すと、その後は連続勝ち越しでようやく復活の手ごたえをつかんだのだった。
苦しい時期を乗り越えることができたのは、やはり家族の支え。「嫁と娘には感謝しています。1人だったら続いてなかったと思う」としみじみと語った。
かつてはもろ差しを得意とする技能相撲で三役の常連。2010年十一月場所には14勝1敗で横綱白鵬と優勝決定戦で雌雄を決したこともあった。十両復帰を確定させるためにも、35歳は残り3番も全力で白星をもぎ取りにいく。
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