
「選手ファーストじゃないんですよ。選手や監督が組織の権力闘争に巻き込まれ、道具にされてしまっている。現場じゃない人が、選手に関して口を出し過ぎです。そういうところは、絶対に強くならない」
真剣な表情、強い口調で昨今、スポーツ界で話題になることの多いパワハラ問題について持論を語ったのは、8月に行われた「U12世界少年野球大会」日本代表監督としてチームを3連覇に導いた元木大介氏(46)だ。
2020年の東京五輪を控えた今、スポーツ界においてパワハラや指導と暴力の境界線など、様々な問題が明るみに出ている。一連の出来事について元木氏は「もちろん暴力は絶対にいけない。でも、パワハラや暴力が、どのような状況で行われていたかは僕ら第三者には分からない」と前置きをしたうえで、自身の指導における考え方を次のように語った。
「そもそも選手に対して『怒る』という行為について、少し考える必要があります。私の場合は、個人が成長するため、チームとして勝ちに行くために必要なことは何か。そのために選手は何をしなければならないか。そういった話が前提になるので、怒るという感覚にはなりません。ただ、一生懸命プレイしていない選手がいたら、『(一生懸命やらないなら)グラウンドから出ていけ!』くらいは言うと思いますけどね。それを怒ると言われたら、どうなんですかね。一生懸命頑張るのは、成長するため、勝つために最低限必要なことですから」
そんな元木氏が、U12世界少年野球大会で選手たちに言い続けたことがあるという。それは「野球をナメるな」だ。その真意とは?
「野球というスポーツは、2死ランナー無しからでも逆転され、負けることがある。だから試合終了まで油断をしてはいけない。そして、その1つの勝ちを掴むためには、さまざまな準備も必要になる。準備をしっかりしなさい。そういった意味なども含めて『野球をナメるな』と言い続けました」
最後にパワハラの渦中にある組織の長が、納得いく説明なく、その職も辞さないことについて「何かいいこと、いい思いをしているから離れられない。そう受け取られても仕方がない」と指摘した元木氏。前述のとおり、真相は当人のみ知るところだが、2020年東京五輪を機に、スポーツ界における「選手ファースト」の精神が広く深く浸透し、正々堂々、溌剌としたプレイを選手には期待したい。
(C)AbemaTV