「私たちは歴史的建造物でおしっこしません。大便もです(禁止大便)。スウェーデンではトイレに行きます」
スウェーデンで放送されたテレビ番組をめぐり、中国が抗議する事態が起こっている。問題となっているのは、スウェーデンの国営テレビで21日に放送された番組。中国外務省はスウェーデンの国営放送に「中国を侮辱する内容の番組を放送した」と抗議の意を示した。
その発端は2日、中国人観光客3人がスウェーデンのホテルから警察に追い出された時の映像。3人はチェックイン12時間前の午前2時にホテルを訪れたがチェックインを断られ、ロビーで寝泊まりしようとしたところホテル側が呼んだ警察に連れ出されたという。映像には、「助けてー」「これは殺人だ、殺人だ、殺人だぞ」と泣き叫ぶ中国人観光客の姿も。
この騒動について、スウェーデンの国営テレビが放送した中国人観光客についてのパロディ番組には、「もし道端で犬と一緒にいるところを見たら、それは買ったばかりのランチではありません」「中国の皆様がスウェーデンに来ることを熱烈歓迎します。ただし、態度が悪ければ皆さんのおしりを叩きます」「スウェーデンではご飯を食べながらおしっこをしません」などのナレーションもあり、中国外務省は「差別と偏見に満ち、非常に挑発的だ」と非難している。
スウェーデンでこのような放送が行われた背景には何があるのか。過去にスウェーデンで現地取材を行っているジャーナリストの増田ユリヤ氏は、違う文化を持つ人への違和感が募っていたと指摘する。
「日本人にとっては、スウェーデンや北欧の国は移民や難民に寛容な国というイメージがあると思う。今から3年前、大量の難民がヨーロッパに押し寄せて、普段の生活を乱されることが非常に増えてきた。中国も経済状況が良くなって、移民や難民でなくても海外旅行に行く人が増えた。寛容さがだんだん失われてきて、自分たちと違う行動を取ったりマナー違反の人が目立ったりするようになってきて、そうした人への嫌悪感を表に出して言うようになってきた」
また、嫌悪感が全面に出されるようになったのにはあるきっかけがあったという。
「トランプ大統領の誕生をきっかけに、どこの国でも『自分の国が一番だと言っていいんだ』という風潮が強くなってきている。今月9日のスウェーデンの選挙でも、反移民難民を掲げている極右政党、ネオナチの流れを汲む政党が非常に議席を伸ばした(12.9%→約18%)。他者を受け入れたくないという気持ちが、自分たちの生活を脅かされる、自分たちの安心安全が保障されないというところから不満として出てきて、選挙の結果につながったところはある」
日本でいうNHKのようなテレビがこのような放送をしたことに、歴史学者で東京大学史料編纂所の本郷和人教授は「これはジョークの域を超えていてそりゃ中国の人は怒る。でも午前2時に行く中国人観光客も悪くて、スウェーデンの人から言わせれば『我慢の限界』ということなんだろう」と推測。一方で、日本の「刺青」の問題を引き合いに、「外国の方からしたらファッションの一部でやっているものを、反社会的勢力だと温泉に入れないのは問題になる。中国は大声で話す方が多いけど、それも文化というものがあってのこと。日本も何十年か前の先祖は世界でひんしゅくを買っていたこともあるし、文化の違いをお互いに思いやらないといけない」と他人事ではない点を指摘した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶泣き叫ぶ中国人観光客、スウェーデン国営放送の映像はこちら(22:15~)
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