企業とプロ契約を結んだMリーガーたちが、チームの威信をかけて知を競い合う麻雀プロリーグ「Mリーグ」。2018年8月7日、その初代Mリーガー21人を選ぶドラフト会議が行われたのだが、会場となったグランドプリンスホテル高輪に、石橋伸洋(最高位戦)の緊張した姿があった。「ドラフト指名枠は21名。自分は当落線上なのかなと思いながら会場にいました。女流プロ選手の指名人数次第によっては、可能性はあると思っていたんです。でも1巡目の指名選手にすでに女流選手が2人入っていたので、これはかなり厳しい。チャンスは来年以降かな」と思っていたという。
「ただU-NEXTさんが、1位指名が小林剛(麻将連合)、2位指名が朝倉康心(最高位戦)だったんで、ネット麻雀で成績を残しているふたりを指名してきたんで、ひょっとしたら」とドキドキしていたと振り返る。
株式会社U-NEXTが率いる「U-NEXT Pirates(ユーネクストパイレーツ)」は、3巡目に鈴木たろう(協会)を指名したのだが「渋谷ABEMAS」と「赤坂ドリブンズ」と指名が重なり、外れ抽選指名で石橋を3位指名した。「天鳳(てんほう)名人戦に出ていて本当によかったと思ったのが正直な気持ちです」と石橋は、RTDリーグ出場に加え、第三期天鳳名人位になっていたことが大きく作用したと感じている。
「天鳳名人戦」とはトップクラスの人気を誇るオンライン麻雀ゲーム「天鳳」で頂点を極めた天鳳位をはじめとした天鳳の強者とトッププロ雀士の計12人によって1年間戦うタイトル戦。第一・二期天鳳名人位は小林剛、第三期が石橋、第四期がASAPIN(アサピン)こと朝倉康心が獲得している。ということは、天鳳名人位を取った3人が同じチームとなったわけだ。
ネット麻雀では牌譜が残るものが多く、自分の牌譜を見直すことが出来るので、様々な角度から研究しやすい。さらに多種多様なデータも集計されるので、強者のデータとの比較も出来る。現行では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により、18歳以下だと麻雀店には入店出来ないが、ネット麻雀に年齢等の制限はない。
「将来的にMリーグで高い年俸をもらえるような世界になれば、子供が麻雀プロを目指せる世界になっていく。そうなれば麻雀のレベルも当然のごとくどんどん上がっていく。そういった選手たちと対等に戦わなければならなくなるんですけど、それが理想の未来なのかな」と麻雀業界の将来を見据えている。
Mリーグでは自動配牌卓を使用し「東南戦一発、裏ドラ、赤牌入り」ルールと発表されている。赤牌とは、ドラ扱いとなる牌を指し、萬子、筒子、索子に1枚ずつ入る。「赤牌入りだと、RTDルールに比べるとスピード勝負になる。僕もそうですけど、小林も朝倉も仕掛けの多様さは得意分野なので、そこでは負けない」と自信をのぞかせる。
小林、朝倉、そして石橋。3人が初代Mリーガーとして活躍すれば、ネット麻雀の世界から天才少年プロ雀士が誕生するかもしれない。その目標となるべく、石橋は大航海に出る。「U-NEXT Pirates」の船出は、10月1日だ。【福山純生(雀聖アワー)】
◆石橋伸洋(いしばし・のぶひろ)1980年9月29日、千葉県生まれ。O型。最高位戦日本プロ麻雀協会所属。主な獲得タイトルは第36期最高位、第19期發王位、第10回モンド杯、第3期天鳳名人位。著書は「黒いデジタル麻雀~現代流データ戦術を斬る~」他。異名は「黒いデジタル」。
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