「ネットがあれば生きていけるので、家にない。ゲームのモニターがあれば十分。ひどいことを言えば、あんまり期待してない」(30歳女性)

 「あんまり家にいることがないので、見逃しちゃったらYouTubeにないかなって検索して"あった"みたいな」(21歳男性)

 「見逃したやつはTVerで見ている」(23歳女性)

 「その時しか見られないからあえて見ようって思うけど、いつでも見られるなら、"今じゃなくてもいいか"ってなっちゃいそう」(20歳女性)

 急成長するネット業界に追い上げられ、広告費は減少傾向。街の若者にテレビについて聞いてみると、辛辣な意見ばかり。テレビ業界を取り巻く環境は年々厳しさを増している。28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、そんなテレビの未来を探った。

■「つまらなくなった」…テレビ業界を目指す若者たちの複雑な心境

 先行きが不透明とも言われるテレビ業界をあえて志す若者たちを取材するため、日本工学院専門学校の放送芸術科(2年制)を訪ねた。同校にはディレクターの基礎を学ぶ制作コース、撮影・照明・音声といった技術系のコースがあり、1学年あたり約180人が学んでいる。ドキュメンタリー番組など、具体的な作品の中身について議論する授業を覗いてみると、講師の構成作家・山田素子さんが「言葉は悪いけど、(被写体が)さらし者になるわけじゃん。そこであなたが何を言いたいのかが視聴者の見たいところ。本当に痛み伴うよ?…みんな静かになるな!」と真剣に、そして厳しく語りかけていた。

 また、スマホで撮影した映像の発表会では、カメラワークを工夫し、長回しで出会いのシーンを演出した作品や、画面を分割して同時刻の2人の動きを表現した作品などが上映されていた。誰もがカメラで撮影し、簡単に情報を発信できる時代。ある学生は時間さえあれば「Cute CUT」というアプリで動画の編集・加工して練習しているといい、様々な機能を用い、指1本・1分足らずで映像を仕上げていく。なかなかのスキルのようだが、かつてテレビ業界に身を置いていた科長の高沢敦博さんは「映像を見る力がみんな弱まっている。テレビって、喋っていることがそのままテロップで出るのは当たり前でしょ、全部説明じゃん。みんなを責めるつもりはないんだ、俺たちのせいだから。テレビのせい。そうなんだけど、まずそれを認識してほしい」と指摘する。「機材やアプリなどの機能が向上しているので、誰でもそこそこのものが撮れるようになっちゃった。けれども、やっぱり最終的なところで何を伝えたくて、何を表現したくてということを突き詰めているのがプロ」。

 台頭するインターネット業界を志望する人が増えているのかと思いきや、学生たちは口々に「ドラマの監督がやりたい」「大勢の人に見せたい。影響力があると思う」「地上波っていう名前が強い」と、地上波のテレビ放送で活躍する夢を描いているようだ。実際、在籍する学生の約8割がテレビ業界を希望しているといい、ほぼ100%が就職できているという"超売り手市場"となっているのだ。地上波やBS、CSだけでなく、ネットテレビなどのコンテンツが増えたことから、むしろ人手不足の状態だという。「確実にコンテンツは増えていて、ネット系の番組の会社からも電話を頂くことが増えた」(教員の上遠野順子さん)。

 生徒の中には現役YouTuber・AYZシヴァさんの姿もあった。シヴァさんの夢は、YouTubeだけで食べていけるようになることだ。表現のスキルを磨きたいと思い、この学校に通っている。高校1年生の頃からゲーム実況動画など150本以上の作品をYouTubeで発信、視聴回数が5万回を超えるものもある。動画を見たというアメリカ人のファンが、はるばる日本まで会いにやってきたこともあった。「嬉しかった。YouTubeで世界に繋がっている楽しみかな」この日もアップする動画の撮影を行い、スマホから発信していた。

 しかし、「テレビをつけること自体かなり減った」(テレビなどの脚本家志望)、「つまらなくなった印象が強い」(映画・CM業界志望)と、学生たちは現状のテレビに満足しているわけではないようだ。「昔は動き回っている番組が多かったような気がする。今は出演者が座ってVTRを見てコメントするだけ」。"テレビはつまらなくなった"と話す学生たちの中には、YouTubeで「ドリフ」にハマったという学生(バラエティ番組のディレクター志望)もいた。「車が突っ込んでセットが倒れるやつ。こんなのもうできない。○×クイズで違ったらミサイルが飛んできて爆破する番組とかを見ていると、やっぱり芸人も体を張っているし、規模が違う」。

 初音ミクの動画などを手がける映像作家の三重の人さんは「やるとしたらネット。最近でいうと例えばAmazonで松本人志さんがやっている『ドキュメンタル』や浜田雅功さんがやっている『戦闘車』とか。テレビがなぜつまらなくなってきたのかっていうと、制約が増えてきたから。クレームを気にしすぎている。それこそ本当に面白いものを作って"嫌なら見るな"でいいと思う」と指摘する。ドラマ監督志望の学生は「一度で良いから、クレームを気にしないで番組を作れたらいいな」と話していた。

■"Tプロデューサー"土屋敏男氏「制約なんて面白いものを作ったことがない奴の言い訳」

 『進め!電波少年』などを手がけた日テレラボシニアクリエイターの土屋敏男氏は、最近のテレビについて「僕は面白いと思うな」と断言する。また「僕が拉致されて車に押し込まれるというシーンを撮ったとき、"オラ!"とか言ってる車内の半グレ集団全員がちゃんとシートベルトしていた」という俳優の石井正則の証言にも「制約なんて昔もあった。それなのに"最近は制約が"とか、"コンプライアンスが"というのはおかしい。その隙間を縫っていく気概があるかないかだ。自分からがんじがらめになっている人の言いわけだ。そういことを言う奴は、面白いものを作ったことがないだけだ」と苦言を呈した。

 「傲慢な言い方になってしまうが、いくつかの番組は面白いが、ほとんどの番組は面白くないということ。昔の番組なんて、ほとんど覚えていないでしょう?昔だって面白くない番組の方が多かった。僕が思うのは、今までに見たことないものを見せてくれるものがテレビだということ。今年で放送開始から65年になるけれど、その歴史の中でも見たことないものを作らないとダメ。僕が『電波少年』作った時は"こんなのテレビじゃない"と言われたし、それが流行った後は、ロケバラエティばかりになった。そんな中で、今度はスタジオで芸人さんが喋るという『アメトーーク! 』が生まれたんだと思う。欽ちゃんだって最初は"こんなのお笑いじゃない"とか、"こんなものはラジオから持ってきただけだ"って言われた。『ひょうきん族』も『元気が出るテレビ!!』もそうだった。最近"面白くない"と言われるのは、どこみても"なんかどっかで見たことあるな"という番組ばかりになっているということではないか。数字ではなく、ワクワクする新しいものが生まれていないんじゃないか」。

 電通に勤務していた時代に「radiko」を考案・実用化した三浦文夫・関西大学教授は「視聴率ってイコールお金。誰に届いているのかはよく分からないが、とにかく1%でも2%でも取ればそれで物が売れると信じて、広告代理店も広告主もお金を払ってきた。東京の局で1%だったら、15秒で大体10万円。でも15年くらい前から、その"貨幣価値"が下がりつつある。世帯視聴率の分母はテレビを持っている世帯なので、実はテレビを置いてない若者は分母に含まれていない。だから10年前の1%と今の1%は違うのに、同じビジネスが続いている。学生に聞いても、地上波、衛星、ケーブル、ネットの何が違うんですかと言われる。そんな中で、とにかくテクニックで1%でも取ればいいし、1円でも安く作ればいい、そういうのが透けて見えるようになってから面白くなくなったと感じる」と指摘する。

 フリー編集者で雑誌『TV Bros.』や書籍などを手がけているおぐらりゅうじ氏は「ZOZOTOWNの前澤社長が宇宙を目指すというような、かつてテレビがやっていたようなダイナミックなことが、他の場所で起きていると思う。80年生まれの僕にとっては、例えば『情熱大陸』に密着されたと聞いたら"すごい"と思うけれども、今の高校生や大学生にとってはTwitterのフォロワー100万人いるほうがすごいと思うというような状況になっているのだろう。YouTuberも最初はバカにされていたが、子どもたちの"なりたい職業"にランクインするくらいに夢を与えるものになってきたので、もはやくだらないものでは済まされない」と話す。

 これに対し土屋氏は「それはテレビが出てきた時に、映画の人が言ったことに似ている。でも結局YouTuberは再生数とかお金儲けの話ばかりで、テレビでやってない面白いもの作っているという人は見たことないし、未来を感じない。人間にとって、確かに"暇潰し"は必要だ。テレビが出る前はラジオ、映画だった。それが今、ネット、スマホになってきた。ただ、やはりその中から心を揺らすような出会うことが人生にとって必要だと思う。TikTokで見ている若い子もそういうものに目覚めることがあると思うし、テレビがそれをやらないといけないのに、ここ10年くらい、"暇潰し"に特化しすぎたのではないか」との見方を示し、パンサー向井も「YouTuberの企画は、テレビ番組が考えてやったことをそのままやっていることが多い。テレビが無くなると、できなくなると思う」と話していた。

■テレビ版「radiko」は誕生するのか?

 子育て世代の元経産官僚・宇佐美典也氏は「うちは毎朝、Eテレと、YouTube、Amazon Primeビデオのアニメの争いになっている。テレビデバイスでネットのものが観られるようになったので、地上波とネットを行き来しながら選ぶ面白い時代になったと思う」と話す。

 そんなネット時代にテレビが生き残るための方策として参考になるのが、一時は"死んだ"とまで言われたラジオの復調だ。聴取者数の減少に悩まされる中、三浦氏らによって2010年に誕生した「radiko」はラジオ界の共通プラットフォームとして全国91局のラジオ局と提携、同時ネット配信やタイムフリー機能によって、新たな聴取者層の獲得にも成功している。

 三浦氏は「学生時代に聞いていた深夜放送で映画や音楽の知識を得た。それが死にかけていたので、パソコンで簡単に聴けたら良いなと考えた。障害になったのは放送局で、ネットで流した場合の権利はどうするんだとか、使うのは若い人だけでラジオファンは振り向かないだとか、色々なネガティブなことを言われた。でも現場にはラジオ愛のある人が多く、10年ほどかけて丁寧に説明し続けた結果、信頼も生まれ、実現に至った。嬉しかったのは、作り手の人たちに前向きな人が増えてきたこと。テレビも面白いものを届けるという前向きな気持ちになれば、道は開けると思う」と話す。その上で、「テレビがラジオと違うのは、"出してあげている"感があること。音楽についても"流してあげているんだから権利料は払わなくていいじゃない"というようなところがある。ネットの同時配信、オンデマンドなど、なかなか権利関係がクリアにならない。また、ネット配信の時に忘れてはいけないのはローカル局の問題だ」と指摘した。

 土屋氏は「アメリカでNBCがネット配信するようになった時、なぜすぐできたのか会長に聞いた。すると"これから俳優協会とハードネゴシエーションやるんだよ。ビジネスなんだから当たり前だ"と言われた。日本の場合、全員が納得してから一歩進むという文化だから時間がかかってしまう。今まではテレビがキングだったが、テクノロジーが進んでいる今、それを使うのが当たり前。ネットとテレビを対立するものと考えることがおかしいし、オンデマンドで全部見られるようになっていくんだと思う」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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