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 来年、「爆風スランプ」がデビュー35周年を迎える。また今年は1988(昭和63年)年にリリースされた「Runner」がリリース30周年を迎えたのを記念し、4月には“平成30年Ver.”の「Runner」もリリース。公開された同曲のMVでは、女子高生や会社員など、さまざまな人がバトンを渡していく姿が印象的だ。まさに平成を駆け抜けた応援歌――色褪せることない「Runner」が、新たな時代へ受け渡し、繋いでいきたいのは、どのようなメッセージなのか。

「応援歌を書こうとは思っていなかった」

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 今では“応援歌”として定着している「Runner」だが、そもそもは、脱退するバンドメンバーへの想いをつづったものだ。私小説的な、センチメンタルな、泣きたいような気持ちで詞を書き上げたという中野くんは、「応援歌を書こうとは思っていなかった」と振り返る。

 しかし、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)内で、弱小アイスホッケー部を応援するコーナーで流されたのをきっかけに、「応援歌」というイメージが浸透する。運動会での定番曲になり、子供たちの間では替え歌が大ヒットするなど、国民的応援ソングとしての位置を確立させていくなかで、それでも中野くんは「応援歌」とされることに戸惑い、なぜそう言われるのかについて考え続けたという。

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中野くん: 一つには、僕の声質が応援に向いているらしいということ。小学校か中学校で応援団長をやっていて、一生懸命フレー!フレー!と声をあげていたら、先生が「中野の声で応援されたら、選手もがんばれるよな」と言われたことがあります。…でもこれは、後から思い当たったこと。実は、応援歌って、あえて作らないようにしていたんです。だって無責任じゃないですか? 目の前にもいないのに、「がんばれ!」なんて。

これはもう応援歌だ! と思えるようになったのは、30年ぶり、再録するタイミングでした。

基本的に「応援歌」って、歌う人と歌われる人が乖離している。グラウンドやスタンドにいて、「がんばれー!」って言われても、(応援される側からしたら)「わかんないでしょ、あなたには」っていうことも多いのかなと…。でも、「Runner」は同じバンドメンバーに向けたものなので、応援する側とされる側が乖離しない。自分も相手も主人公として、気持ちが一つになれる。それで応援するときに自然に熱く歌えるんじゃないかなと思いました。そう考えたとき、これは、俺が今まで思っていた応援歌ではないけれど、確かに「応援歌」だと。

「競争」ではなく、「協走」

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 30年前の「Runner」と、平成30年バージョンの「Runner」では、アレンジに少し変化をつけた。また意外なことに、MVは出来上がってから初めて見たという。

平成30年バージョンの「Runner」

中野くん: 歌い方は変えないように意識しながら、平成30年バージョンの「Runner」では、キーボードは使わず、ギターのロックサウンドで、声がよりストレートに伝わるようにアレンジしました。

MVは、監督の解釈で作ってくださって。感動的ですね。…僕が好きな歌の、「この素晴らしき世界」(ルイ・アームストロング)に、“子供たちの泣き声が聞こえるよ、この子たちは成長していく、僕が知らないことを学んで成長していくんだよ、なんて素晴らしいんだろう”っていう歌詞があって。MVを見て、それに通じるような…がんばってね、ありがとう、という気持ちになりました。ただ、それは僕が大人になったからわかる気持ちだと思うんですよね。30代だったら、まだまだ子供たちと張り合うと思います(笑)。

人間って、競争ばかりしているイメージがあるじゃないですか。子供の頃から得点競わされて、大きくなったら「となりの旦那は部長になったわよ~」とか、そういうようなことをずうっとやっている。でも、本当は競いたいわけじゃない。

誰かの発信したものを受け取って、自分も知らず知らずのうちに、また別のところに返していて…。「体」は違うんだけど、みんな一緒の世界に生きているんだよっていう。そう、「Runner」の歌詞って「俺たち」なんですよ。「俺」でも「お前」でもない。「俺たち」。そして、一言も“競争しろ”って言っていない。競争ではなくて、“協力して走る”っていうイメージです。今の時代にこそ「Runner」を歌うことで、みんなでお互いをケアしながら一緒に走っていこうよということを伝えられるんじゃないかなと。

被災地への思い

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 中野くんは、東日本大震災後、災害を忘れずに、長い復興の道のりを一緒に歩んで行こうというメッセージを込めて「TOMOSHIBI~地震が来たら~」を発表。盟友・パッパラー河合と訪れた被災地では、気後れしながらも「Runner」を歌い、「いちばん最初に中野さんが来てくれて嬉しかった」という漁師の声を聞いて、歌って良かったと号泣した。その後、復興ライブも継続して開催している。そこには、協力しながら、共に走る「協走」の姿がある。そして、心を重ね合わせることができる歌詞だからこそ、「Runner」が広く愛され、長く歌い継がれてきた所以なのだろう。

 10月16日からは、ソロ名義初のツアーとして、東名阪ツアー「サンプラザ中野くん Style #3(ナンバースリー)」がスタート。共にツアーをまわるバンドメンバーには、もちろんパッパラー河合もいる。中野くんは「お互い健康に気をつけて長くやっていこうねと言っています」と笑いながら、「河合さんと一緒にやれて幸せですよ。魂は変わりません!」と意気込みを語ってくれた。高校の同級生だったパッパラー河合と中野くん。友と共に、「俺たち」の走りは続く。

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テキスト:吉河未布

撮影:You Ishii

ツアー情報

【名古屋公演】

日時:2018年10月16日(火)

時間:開場18:30/開演19:00

会場:名古屋 ELL fit's all

お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション

【大阪公演】

日時:2018年10月17日(水)

時間:開場18:30/開演19:00

会場:梅田シャングリラ

お問い合わせ:キョードー大阪

※なお、2018年10月23日(火)の東京公演についてはSOLD OUT

出演者:サンプラザ中野くん (Vo) / パッパラー河合 (Gt)

望月大輔(Ba) / ジミー岩崎(Key) / 肉野バンバンジー(Dr)

チケット代:全席指定 ¥3,780 (税込/drink別)

名古屋、大阪公演のチケット発売中

サンプラザ中野くん Official Site
サンプラザ中野くん Official Site
所属事務所アミューズによるサンプラザ中野くんオフィシャルサイト
www.spnakanokun.com
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