13日、東京・テアトル新宿にて映画『止められるか、俺たちを』の初日舞台挨拶が行われ、俳優の高岡蒼佑が、井浦新、山本浩司、岡部尚、大西信満、タモト清嵐、伊島空、外山将平、藤原季節、上川周作、中澤梓佐、柴田鷹雄、脚本家の井上淳一、そして同作のメガホンをとった白石和彌監督と登壇。共演した井浦の演技を絶賛した。

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 2012年の若松孝二監督逝去から6年がたった今、白石監督が本作で描いたのは、1969年の若松プロダクションを舞台に命懸けで映画を作っていた若者たちの青春群像劇。権力に媚びない反骨精神の塊である若松監督が代表を務めた映画プロダクションである若松プロは、性と暴力を正面から取り上げ、過激な作風で「国辱映画」と揶揄されながらも、当時の若者たちを熱狂させるセンセーショナルな作品を次々と発表。同作では若松孝二役を『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)以来、若松組の常連だった井浦が、大島渚役を『千年の愉楽』(13)にも出演した高岡が演じた。

 高岡は「こうやって舞台挨拶するのは久々なんですけど、とても緊張しています」とハンカチで汗をぬぐいながらも、しっかりと挨拶。「僕は(自身が演じた)大島渚監督とはお会いしたことはないんですけど、何かをマネするのではなく、自分も大島渚監督の印象といったら舞台上で野坂(昭如)さんと喧嘩しているという印象しかなかったですけど。モノマネをするのではなくて、自分の中で若松さんと対極にいるような、ただ映画に情熱を持っているという姿を表現できたらと思い演じました。参加できたことが本当に嬉しく思います」と、誠実に向き合った大島渚役への想いを語った。

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 さらに「この作品が始まる前はどうなるんだろうなって思っていたんですけど、現場に行くと、そこに新さんがいて、それが新さんではなく紛れもない若松監督の若かりし頃の姿でありました」「若松さんがこの作品を見て『ふざけんじゃねー』と言ってるかもしれませんが、僕は井浦新さんが演じた若松監督が、とても愛情深い若松監督になっていて感動しました」と井浦の演技を絶賛。井浦は大きな声で「ありがとう!」と感謝を述べ、客席からも拍手が沸き起こった。

ストーリー

 吉積めぐみ、21歳。1969年春、新宿のフーテン仲間のオバケに誘われて、“若松プロダクション”の扉をたたいた。当時、若者を熱狂させる映画を作りだしていた“若松プロダクション“。そこはピンク映画の旗手・若松孝二を中心とした新進気鋭の若者たちの巣窟であった。小難しい理屈を並べ立てる映画監督の足立正生、冗談ばかり言いつつも全てをこなす助監督のガイラ、飄々とした助監督で脚本家の沖島勲、カメラマン志望の高間賢治、インテリ評論家気取りの助監督・荒井晴彦など、映画に魅せられた何者かの卵たちが次々と集まってきた。撮影がある時もない時も事務所に集い、タバコを吸い、酒を飲み、ネタを探し、レコードを万引きし、街で女優をスカウトする。撮影がはじまれば、助監督はなんでもやる。

 「映画を観るのと撮るのは、180度違う…」めぐみは、若松孝二という存在、なによりも映画作りに魅了されていく。

 しかし万引きの天才で、めぐみに助監督の全てを教えてくれたオバケも「エネルギーの貯金を使い果たした」と、若松プロを去っていった。めぐみ自身も何を表現したいのか、何者になりたいのか、何も見つけられない自分への焦りと、全てから取り残されてしまうような言いようのない不安に駆られていく。

「やがては、監督……若松孝二にヤイバを突き付けないと…」

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写真:野原誠治

テキスト:堤茜子

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