DDTグループの男子団体、大家健率いるガンバレ☆プロレスとプロレスリングBASARAの対抗戦がスタートした。
(試合後、言いたいことを言って引き上げようとする戦闘民族に、大ダメージのためほふく前進で迫る大家)
発端は9月29日のガンプロ板橋大会。夏のトーナメント「ガンバレ☆クライマックス」で初戦敗退し、翌日から失踪していた大家は、この大会で復活を果たした。
そこに乱入してきたのがBASARAの関根龍一だった。関根はBASARAでユニット「戦闘民族」に加入したばかり。しかも戦闘民族の中心人物にしてBASARA代表の木高イサミが負傷欠場している。そんな時期だからこそ、下村大樹とともに勢力拡大を狙いたいところだった。
大家に「お前の戦闘力なんかゼロじゃ!」と宣戦布告した関根。するとBASARAの新木場1st RING大会(10月5日)には大家と翔太のガンプロ勢が乱入。これを迎え撃った流れで、フリーの藤田ミノルも戦闘民族入りすることに。
(関根との大将戦が始まってすぐ、場外戦で流血した大家は苦しい闘いを強いられることに)
そして対抗戦第1弾となる、ガンプロ新木場大会。ガンプロ軍は大家、翔太、DDTからレンタル移籍したばかりの石井慧介が乗り出し、BASARA戦闘民族の関根、下村、Xと3対3で激突した。6人タッグマッチではなく、シングルの「抜き試合」だ(大将戦以外はオーバー・ザ・トップロープルールを採用)。
戦闘民族のXはどう考えても藤田なのだが、本人はユニット入りはしたがXとして出るとは言ってないと謎の主張。入場してくるまでXが誰かは分からない中、入場してみればやっぱり藤田なのだった。
これまで数々の団体で活躍し、日高郁人との「相方タッグ」ではプロレス大賞の最優秀タッグを受賞したこともある藤田だが、実力派であると同時にクセの強さも。この対抗戦でも、石井慧介との大激戦を制したかと思えば大家とのマッチアップでは自らリング外に飛び出て失格に。意味不明、理解不能、それゆえ目が離せない藤田にかき回された対抗戦の幕開けは、関根が大家をフォールしてアウェーのリングを戦闘民族が占拠する結果となった。
藤田はマイクを握ると、対抗戦参入の目的を「お前たちを潰しにきた」と言いつつ「潰すっていうのは抽象的で分かりづらいですよね」と、まずはプロレスっぽい表現を否定。そして「試合で勝ったとか負けたとかの潰すじゃなく、ガンプロのヨカタ(ファン)をごっそりBASARAのヨカタにする!」。
つまりファン=観客を奪って団体運営を機能停止に追い込もうというわけだが、わざわざヨカタという業界用語、隠語を使ってくるあたりがタチの悪い愉快犯というか藤田らしいというか。
もともと藤田はガンプロにレギュラー参戦していた時期もあり、大家と構想を展開。その中で自らのプライベートをもさらけ出し、リング上で離婚を告白したこともあった。しかも、レスラーだった元妻とガンプロ後楽園大会(2016年)で対戦まで。ガンプロのファン、通称ガンプロユニバースにとっても藤田は特別な選手の一人なのだ。
そんな藤田があらためて“敵側”としてやってきた今回も、だからそう簡単にブーイングを飛ばすわけにはいかない。基本的なことから言ってしまえば、ガンプロもBASARAも同じDDTグループ。身内同士の対抗戦と捉えることもできる。ガンプロユニバースが関根、藤田、下村を嫌いなわけではないし、BASARAファンも大家、石井、翔太が好きか嫌いかで言ったら好きだろう。
ただ、そういう状況だからこそ藤田が提示した「ファンの奪い合い」という構図はリアルでもある。敵側のファンになってしまう素養を、それぞれが持っているからだ。この対抗戦、ファンも気合を入れて、腹をくくって応援する必要があるのかもしれない。
(戦闘民族が存在感を発揮する中、BASARAではユニオンMAX王者の中津良太、ダブプロレス王者の谷嵜なおき、瀧澤晃頼の新ユニットも誕生(10.13大阪大会))
次回の対抗戦は11.17新木場で行なわれる予定。この日は15:30からガンプロ、19:00からBASARAの興行がある。対抗戦にはうってつけのシチュエーションだ。
文・橋本宗洋