175センチ・75キロ。アスリートとして特筆するほどの体格ではない。しかし、その太ももはまるでスピードスケート選手や競輪選手のようであり、そのガタイはまるで、プロレスラーのようである――。
丸山将輝、23歳。立川・府中アスレティックFCに所属するその男は、ピッチが狭く感じるほどの圧倒的なフィジカルを武器に前線に君臨している。まるで、「100年に1人の逸材」と呼ばれるプロレスラー・棚橋弘至のように。
クラブの伝説的なピヴォの背中を追って
丸山のTwitterのプロフィール写真は、正面を向いたプレー写真ではなく、後ろ姿だ。その写真を一目見た人はみんなこう思うだろう。「太ももがヤバイな」と。推定70センチの太ももが、今にもパンツをブチ破ってしまいそうなほどに主張している。いったい、どうやったらそんな筋肉を獲得できるのだろう……。
高校時代は、長野県の強豪・長野日本大学高校でサッカーに明け暮れたが、卒業後にフットサルに転向して、立川・府中アスレティックFCの門をたたいた。サテライトチームでプレーしながら、当時トップチームに所属していたクラブの伝説的なピヴォ・小山剛史の背中を追い掛けて、自身もピヴォとして日々研鑽を積んだ。
2017年3月の全日本フットサル選手権では、今や日本代表の次期主力と期待される内田隼太や、Fリーグ選抜でメキメキと頭角を現している新井裕生らとともに、東京都大会、関東大会を勝ち抜いて全国大会への切符を獲得。Fリーグのチームが同組に入るグループリーグを突破できず8強入りは逃したものの、自身も2得点を挙げて爪あとを残した。
憧れの小山が退団した昨シーズン、入れ替わるようにして(サテライトチーム所属のままトップチームに出場できる)Fリーグ特別指定選手として「背番号19」でFリーグデビューを飾った。しかし、7月に3試合連続で途中出場を果たしたものの、トップに定着できないまま姿を消した。
12月、特別指定選手が解除され、晴れてトップ登録となったが出番はなし。昨シーズンは3試合・0得点。丸山にとっては、Fリーグの洗礼を浴びるシーズンとなった。時は流れて2018年6月の今シーズン開幕戦、かつて小山が背負った「背番号12」を付けた丸山が先発のピッチに立っていた。するとわずか1分57秒、待望の瞬間が訪れる。
ゴール左でパスを受けた丸山は、エスポラーダ北海道のゴレイロとの混戦を抜け出してこぼれ球をシュート。デビューから11カ月目に記録した初ゴールだった。しかし、彼の真価はその先にあった。
4-0で迎えた22分、ゴール前に張り出していた丸山は、相手の隙をついてフリーでパスを受けると、軽快なターンから左足でシュートを放つ。対面したゴレイロが反応したのは、ボールがネットに突き刺さった後だった。パンパンに張った太ももから繰り出される強烈なシュート――。圧倒的なインパクトとともに、丸山は開幕戦2ゴールの大活躍を見せたのだ。
立川・府中は元来、王者・名古屋オーシャンズのメンバーにも引けを取らないフィジカルを武器に、バチバチの闘争を繰り返すチーム。その中でも丸山のフィジカルは突出し、Fリーグを見回しても、彼ほど屈強な選手は多くない。開幕から4カ月、丸山の反転シュートは対戦相手も最高の守備職人を当てないと対応できないほどの脅威となっている。
18試合・5得点。ここまで全試合でピッチに立ち、谷本俊介監督も大きな信頼を寄せているが、本人はその数字に満足していないだろう。「反転シュートまでは持っていける」が、それだけでは通用しなくなる。ゴールを奪い、味方のゴールをお膳立てする役割があるピヴォとしては、まだまだ成長しないといけない――。
実は丸山のパンツは、ユニフォーム発注の手違いでワンサイズ小さいものになってしまったのだという。それを差し置いても、彼の太ももは際立っている。しかし、注目してもらいたいのはそこではない。
「丸山の太ももハンパない」から「丸山ハンパない」へ。クラブの次代を担う逸材・丸山将輝の“太もも以外”にも注目だ。
文・本田好伸(SAL編集部)
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