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 最高裁は17日、東京高裁の岡口基一裁判官に戒告処分を下した。理由は岡口裁判官のツイートが、裁判所に対する国民の信頼を損ねたというものだ。

 問題視されたのは今年5月、拾われた犬の所有権を巡る裁判についての「公園に放置された犬を保護したら、元の飼い主が名乗り出て『返して下さい』え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?3カ月も放置しておきながら…」というツイートだ。これに対し「感情を傷つけられた」として元の飼い主側が裁判所に抗議、裁判官が裁判官を裁く「分限裁判」に発展した。

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 処分決定後に会見を開いた岡口裁判官は「長官は、あなたは仮に裁判官を辞めることになってもツイートを止めないんですか、と私に聞いた。要するに、ツイートを止めなければ裁判官を辞めさせるということだ」とコメント。さらに「申立書は"本件ツイートで原告の方が傷ついた。だからけしからん"という話だったが、今回の決定では、本件ツイートはあたかも原告が訴訟を起こしたこと自体がけしからんと私が言っていると思われるもの。私は最高裁がここまで手続き保障というものを理解していないことに非常に愕然とした」「最近ちょっとがっかりすることが多い。最高裁にはね。何かもう辞めちゃおうかな」と話した。

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 岡口裁判官は1966年生まれの52歳で、東京大学法学部卒。著書『要件事実マニュアル』は現職弁護士のバイブルとして知られている。一方、SNSに自身の裸の画像などを掲載したことからネット上では"白ブリーフ裁判官"とも呼ばれ、これまで殺人事件の被害者に関する不適切な書き込みと合わせ、東京高裁長官から2度の厳重注意を受けている。

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 18日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した岡口裁判官の次男・和也氏は「"やっぱり僕は父の味方"という立場。父は2年前くらいからニュースになっていたので、"またか"という気持ち。処分については特に何も感じてはいない。家では寡黙で、白ブリーフは履いていません(笑)」と話す。

 その上で「父はTwitter上で名前は明かしているが、職業は明かしていない。だから裁判官ではなく、私人としてのツイートなのでここまで反対しているんだと思う。このようなツイートするのにも、父なりの信念や理由があると思っている。昔、部屋を掃除していると、父が母へ宛てた手紙が引き出しの中から見つかった。それは父がちょうど裁判官になった時の手紙で、"僕は裁判官という保守的な世界を変えたい"ということが書いてあった。そういう信念をずっと持っていて、裁判官の"表現の自由"を目指していると僕は考えている」とコメント。ふかわりょうやインパルスの板倉俊之の"あえてやっているのではないか"との見方に同意した。

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 岡口裁判官と直接の面識は無いものの、後任として水戸地裁に赴任したという縁がある元裁判官の木野綾子弁護士は「少年事件などに非常に熱心に取り組んでいらっしゃって、水戸地裁の職員の方々からもいい話を聞いていた、いい人なんだなあと言う印象を持っていた」とした上で、「インターネット上では岡口さんを擁護する声が大きいようだが、どちらの気持ちが理解できるかを率直に申し上げると、裁判所側が中立性、公正性、信頼感を守ろうとしている気持ちはよく理解できる。職業は明かしていなかったとしても、一見して岡口さんだと分かるということになると、やはり信頼を害するということにつながり、問題にされると思う」と指摘。「裁判所にいた時は居心地が良く、窮屈さはないと思っていたが、弁護士になってから"こんなに自由なんだ"と思ったことはある。ただ、普通に働いている裁判官が最高裁にがっかりするとか、そういう発想はないと思う」とも話した。

■コメンテーターからは「処分は妥当」との見方が相次ぐ

 今回問題となった犬に関するツイートについて、東京高裁長官は「クエスチョンマークを3つも使って書き込んでいる。判決文についての岡口判事の意見と捉えられるのではないか」と指摘。最高裁も「一般の閲覧者からすると、本件ツイートは、原告が本件訴訟を提起すること自体が不当であると被申立人(岡口氏)が考えていることを示すものと受け止めざるを得ないものというべきである。そうすると、被申立人は、原告が本件訴訟を提起したこと自体が不当であるとする一方的な情報を不特定多数の閲覧者に対し、公然と伝えたといえる」と結論づけている。

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 和也氏は「父はよく裁判の記事を取り上げ、要約した文を投稿している。それがあたかも自分のツイート(意見)のように取り上げられてしまったというところが今回の問題だったんだと思う」「(殺人事件の遺族の方に対し)申し訳ないと思っているが、Twitterは文が短いので様々な捉え方ができてしまうし、誰かが嫌な気持ちになってしまうからといって規制してしまうと何も言えなくなってしまう。もちろん被害を受けている遺族の方ことはしっかり考えながらツイートしていってくれたらいいと思う」と説明する。

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 しかし木野弁護士は「形式や場所はともかく、現役の裁判官が誤解される内容を表明したところが問題ではないか」と指摘、柴田阿弥も「一番傷つけてはいけない人を傷つけてしまうことに対する言い訳にはならないと思う」と反論した。

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 会見で岡口裁判官は「裁判官がやっていいツイートとよくないツイートとか、しっかりとルールを作った方がいいと思う。私たちはルールがない段階で処分されちゃっている訳だ。ルールがあるのにこれは破ったからいけない、というのは理解できるが、表現の自由というものが、やはりそこで傷つけたからいけないんだという流れになっちゃうのが私は嫌だ」とも述べている。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「裁判官の仕事とは別だということだと思うが、例えば身内が犯罪に巻き込まれ、きちんと裁いて欲しいと思ったときに、出てきた裁判官を見て"あ、この人か…"という感情は起きると思う。その割り切れない部分を裁判所側は調整したかったのではないか。裁判官が何をツイートしていいのかが法律で決まっていない、という意見も分かるが、世の中の期待する"品位"というのはルールや理詰めではなく、せめぎあい、ぼんやりしたもの。"表現の自由"についても完成された何かがあるわけではなく、まさに"どこまで認められるか"ということを、裁判を繰り返しながら考え続けてきているはずだ。それなのに、裁判官にこれは"表現の自由だ"って言われてしまうと…」とコメント。

 東洋経済オンラインの山田俊浩氏は「裁判官は裁判所法で縛られていて、品位、中立性が求められている。白ブリーフが品位を汚したかどうかについての争いはあると思うが、少なくとも今回の分限裁判で問題となった犬のツイートは、裁判になっていることについて一定の評価を加えてしまうという、中立性に問題がある行為。裁判官はみなこういうものだと思われてしまうことは非常に問題だ、という判断を最高裁がしたということだと思うし、判断は正しいと思う」と指摘。

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 司会進行の小川彩佳アナウンサーは「ありがたいことに公に発信する機会を与えられている身ではあるが、報道ステーションを7年半担当してきた中で学んだのは発信することの怖さ。自分の発言で炎上したこともあるし、練りに練った言葉であっても誤解を持って伝わってしまい、誰かを傷つけることもある。番組に臨む時にはブレーキをかけている」と話していた。

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 今回の処分内容は、あくまでも減給のみで、SNSの使用制限がかけられることもない。会見で「SNSはこれまでも15年以上やっているが、ネットでの情報発信というのは、これまでと同じようにやっていきたいと思っている」と述べた岡口裁判官。会見後の深夜にはブログを更新し、1枚の写真を投稿。そこには「神は白ブリーフを見放したか…w」と書かれていた。

 働く人によるツイートが問題視されることが少なくない昨今。ネット上には「呟きも規制されるのは疲れるよねw」「うーん…考えなさ過ぎも良くない気がしますけどSNSってなんなんだろうって思いますね」など岡口氏の意見を擁護する意見も多数見られた。岡口裁判官が投げかけた論点を受け手、私たちが境界線を引くことはできるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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