先月20日、都内でボイスメディア「Voicy」で活躍中の人気パーソナリティーたちのトークショー「Voicyファンフェスタ」が開催された。
Voicyは音声で情報を発信する、いわば"声のブログ"で、個人がチャンネルを作成することができ、SNSのようにフォローしたり、配信に対しコメントをすることも可能だ。ジャンルはニュース、美容・ファッション、エンタメ、スポーツ、映画、恋愛、雑学、働き方など、多岐にわたっており、著名なインフルエンサーなどが続々と参入。今年に入って利用者は50倍になったといい、立ち上げから2年で100万人を突破しているという。
イベントにはブロガーのはあちゅうさんやサウザーさんが登壇、(イケハヤ)イケダハヤトさんも中継で加わった。1枚2000円のチケット制だったが、600枚が完売したというが、代表の緒方憲太郎氏は、前日に無料に切り替えたのだという。「わざわざお金を払ってでも申し込みたい人は、すごくVoicyのことを好きでいてくれているわけで、その人たちに一番ギブしたかった」と笑う。
Voicyの人気の秘密はどこにあるのか。「聴くだけでヤせるラジオ」を配信する森拓郎さんは「本当に録音するだけのイメージなので、そんなに時間もかからないし、すぐできちゃうのがいい」と話す。また、ラジオ番組のパーソナリティも務めるDJ Nobbyさんも「ラジオの世界だと、どうしても音質やタイミングとかにこだわるし、色んな人の手がかからないと作品にならないけど、自分が思い立った時に"これ喋ろう"っていうのをiPhoneだけでパッと録ってそのまま出せるリアルタイム感はVoicyにしかないのかなと思う」と、配信者としての魅力を説明した。
実際、Voicyの操作はシンプルだ。専用の録音アプリを使って録音し、アップロードするだけだ。また、ランキング上位の配信者に対するスポンサー制度もスタートしており、収益化の可能性も広がる。
本業で忙しいAV女優の紗倉まなもリスナーから届いた性の悩みや恋愛相談に答えている。「帰ってきてから布団の上で録ったり、ソファーに寝転びながら録ったり。ラジオだと音がきれいに録れる場所でしか録らないけど、空調とか雑音とかも入ることで、逆に良い感じの生活音になって、状況も同時に伝える事ができたりする」と話す。
■「面白い人ほどめちゃくちゃ忙しい」
緒方氏はVoicyを立ち上げた理由について、次のように話す。
「声ってむちゃくちゃ可能性があると思っていて、声の新しい文化を作るにはどうしようってことを考えていた。声って普通の情報よりもリッチだと思う。活字や動画だと誰が作っても一緒かもしれないが、声は"ありがとう"と言うだけで、"本当に思ってる?"と言われたり、"もっと喜んでよ"と言われるくらい、ものすごいバリエーションと感情が乗る。その人の人間味が届くので、そこが表現できるメディアになればいいなと思って。僕は世の中に面白い人ってめちゃくちゃいると思っている。でも面白い人ほどめちゃくちゃ忙しい。そういう人たちがわざわざスタジオに来て、台本を読んで、っていうよりも、忙しい中でもちょっと何か喋ってくれた方が面白いだろうって思った。そして、その人の魅力を装わないというか、計算しないようにしたいと思った。録音アプリは世の中にいっぱいあって、編集できたり音楽を乗せられたり、こだわれるものがものすごくある。だから逆に全然こだわれないようにして、そのまま出すのをひたすら作るというふうにした」。
Voicyは台本や決まった枠がなく、好きなことを好きなだけしゃべることができる。前出のはあちゅうさんも、「旦那がAV男優あるあるその3は、大人のオモチャが家に死ぬほどあるってこと。家がナチュラルに秘宝館になってるからね。私、秘宝館行ったことないけど、行こうと思わないですよね」と、新婚の夫・しみけんさんとの生活を赤裸々に語る。
一方、誰でもチャンネルを作成できるわけではなく、審査制を取り入れ、全体の数を制限している。「1週間に100ぐらいの応募が来るが、1つか2つ通すかな、というぐらい。伸びている方をとにかく残して、新陳代謝をしながら、だいたい200チャンネルでやっている」と緒方氏。「声の良さというよりも、その人の頭の中の面白さを引き出していきたかった。良い声の人だけが面白いわけじゃない。むしろ、喋りが苦手だと思っているけど、人生が面白い人とかの話をもっと聞きたくて、農家の方とか漁師さんとかにも喋って欲しい」と、審査は文書で行っている。
■「画面を見ない社会」へ
Voicyが見据える新たな未来が、朝起きてから眠るまで、モニターを1つも見ない社会のインフラを作ることだという。
「僕自身、次は何が来るんだろうというのをずっと考えるタイプ。テレビとかモニターがあった中からスマートフォンの時代になって、より手軽にメディアに触れられる時代が来た。机とか椅子に情報が入ったらどうなるのかをずっと考えていた。そうしたら、1個ずつがモニターを積むことはなく、全部音声で情報が出てくるんじゃないかと思った。わざわざ画面を持って一生懸命歩くより、何も邪魔しない状態で情報がやってくる時代を作ってみたいなと思って、すべてのIoT機器に音声を配給できるインフラを作ろうというビジョン。2年後ぐらいには"今まで天気見るのにわざわざアプリ開いてたんだ""起きて会社行ったら知ってるの当然じゃない?"という感じになる」。
現在、Amazon EchoやLINE Clovaといったスマートスピーカーでの配信を始めており、Google Homeで流れる15社のニュースのうち、6社がVoicyのインフラなのだという。新聞社が自社のニュースを配信したい場合、「原稿をVoicyに送る」「Voicyがパーソナリティーに送る」「パーソナリティーが原稿を読み上げてアップする」という3ステップ、トータル30分ほどでできるのだという。東京証券取引所も活用、午前・午後の概況やマーケットコメントなどを日に3回配信しており、依頼から1時間以内に配信が可能だという。「安価にすぐ作れるし、自分たちのアプリで配信するだけでなく、QRコードを名刺やイベントのチケットに印刷して、一緒に出すこともできる」。
「"通勤で景色が見えた"ということを書いている人もいて、すごく嬉しかった1日40分以上使っているようなアプリになっているので、ずっと聞いていられる生活も面白いかなと思う。」と話す緒方氏。「目の見えない人も健常者と同じくらいの楽しみ方ができるものも作りたい」と意気込みを語っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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