イッテQの“やらせ疑惑”報道にデーブ・スペクター氏「まずいと思ったものはボツにすべき。それができる番組だったはず」
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 日本テレビが誇る高視聴率番組、謎解き冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』に突如浮上した"やらせ疑惑"。

 「『祭り企画』をでっち上げた」と報じた『週刊文春』に対し日本テレビは8日、ホームページにコメントを発表。今回の企画は現地からの提案を受けて成立したものであり、番組側で企画、セット設置、賞金を渡した事実はないと否定した上で、水上の一本橋を自転車で渡る催しは東南アジアのテレビ局で取り上げられるなど各地で人気があるものだと説明した。その一方で、その会場での開催実績を十分に確認しないまま作業を進めてしまったとして、「誤解を招く表現があった」との認識を示している。

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 『週刊文春』は日本テレビの発表に対し「記事で報じた通り」とする反論コメントを発表している。また、AbemaTV『AbemaPrime』がラオス大使館に聞いてみると「『橋祭り』という祭りについてはない」との回答が返ってきた。

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「橋祭り」企画をめぐっては、放送当時からネット上に「ラオスの橋祭りなんて聞いたことがない…」という声もあったが、文春報道を受け「ホントならやらせどころか捏造じゃないの」「でっち上げ?やらせ?んなこたぁない演出。バラエティーだから」「やらせならやらせではっきりして欲しい!!」などの声も上がっている。同日夜に放送された『AbemaPrime』では、テレビ番組における"やらせ"問題を議論した。

■デーブ・スペクター氏、イッテQは「いわば"ボツにする余裕"のある番組」

 ふかわりょうは「真実を追及すること、やらせや演出の境界線を考えることも大事だが、波紋がこんなにも広がってしまう、萎縮にもつながる社会現象の方が深刻ではないのか」とした上で、「あたかもその場で思いついたように歩いているお散歩番組のルートが仮に決まっていたとしたら、それはやらせに該当するのだろうか、現場で事前に依頼した協力者に、生中継しながら見つけたように話してもらう街頭インタビューはやらせに該当するのだろうか。僕はこれらはやらせだとは一切思わない。このままいくと、"あの時、モノマネのご本人登場は知っていました。大変申し訳ございませんでした"って言わなければならない時代が来る」と疑問を呈した。

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 ふかわの意見に対し、放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏は少し違う意見を持っているようだ。

 スペクター氏は「例えばフジテレビの『有吉くんの正直さんぽ』は完全に"アポなし"だし、バラエティーでもテレビ朝日の『金曜☆ロンドンハーツ』はガチでやっている。そういう番組もある。でも、ドッキリを先にアレンジしたりするのは必要のない演出だし、軽い"やらせ"だと思う」とした上で、「イッテQは生粋のバラエティー番組というよりは、ドキュメンタリー的な番組でもあり、教養番組の部分もないとは言えない。お子さんも含めた視聴者に向けて、ないものをあるように見せかけたという罪は大きいと思う。それはタレントがタレントに仕掛けるドッキリとは違うし、TBSの『世界ふしぎ発見!』が同じことをするだろうか。今までのロケや、今後のロケも疑われてしまうことになる。テレビって信用できなくなったらおしまいだ。NHK・民放含め、みんなが潰したいモンスター番組なので、言っては悪いが、この記事が出たことを内心喜んでいる人たちもいると思う。キャスターのスキャンダルなどはどの局にもあるが、今回は"言わせてもらうぞ"という気持ちになってると思う」と話す。

 さらに、そんな『イッテQ』だからこそ、今回のような問題を回避することもできたのではないかと指摘した。

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 「20%もの視聴率を取っていて、日本テレビ全体にも貢献している番組。スポンサーも高いお金を払っているので、その分の責任も大きい。予算もなく、お笑いタレントに頼っている深夜番組とは違って、いわば"ボツにする余裕"のある番組なんだから、他の企画も作れたはず。映像を見て"これはおかしい"って誰かが気付けたと思うし、お蔵入りさせてもよかったのではないか。コーディネーターのせいで片付けていい問題でもない。雇ったのは制作会社で、その上にテレビ局がある。特にバラエティーは上の人がうるさいし、延々と会議をやって決めているわけだから、コーディネーターが勝手に作っちゃったというのはおかしい。出演した宮川大輔さんも、人もいないし歴史がありそうにもない、何か不自然という現場でお芝居して盛り上げなきゃいけなかった。彼に罪はないと思う」。

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■「一番参っているのは、バラエティ番組の関係者ではないか」

 東洋経済オンラインの山田俊浩編集長は「"やらせ”と"でっち上げ"はだいぶ違うと思う。イッテQの場合、やっぱり高視聴率の番組ということもあって、どうしてもより刺激の高いものを求めていく中で、でっち上げをしてしまったのではないか。テレビ局には下請けや出入り業者のせいにする体質があるが、チェックしないといけないのは放送する側なんだから、コーディネーターの責任にしてしまうと、ますますテレビが嫌われる原因になると思う。ここは真摯に"事実と違う放送をしてしまった。申し訳ない"とすればいい」とコメント。

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 プロデューサーの若新雄純氏は「テレビやエンターテインメントを裏切ることになったとして、視聴者はそこまで怒ってない気がるし、この放送で誰が傷つくのかなと思う。ここまで問題が尾を引く理由がよくわからない。報道では許されないし、バラエティーでも捏造は良くないが、やりすぎに関しては"ごめんなさい"で許される余地があってもいいと思う。今回の件に関しては、業界内で"それをやったか""俺たちまでそう見られるんじゃないか"みたいな気持ちも渦巻いてると思う。一番参っているのは、バラエティ番組の関係者ではないか」と指摘した。

■現役のテレビ関係者は…

 現役のテレビプロデューサー・ディレクターのAさんは、「利益を求める営業の部署は別として、番組制作に携わる業界関係者はイッテQをライバル視することはあっても"潰れてほしい"とは思っていない。20%もの視聴率を取れるバラエティーはあれぐらいしかないわけで、いい意味で意識しているし、尊敬の念を抱いている。今回の件に関していえば、海外のコーディネーターが持ってくる情報にはかなりの割合でトンデモ情報があるし、それは番組制作をしている方はみんな知っていること。それらを精査しながらも、信じてやるしかない。言葉がわからないこともあるし、現場に行ったら全然違っていたとかということもある」と話す。

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 その上で「スポーツバーでの取材をしたときに、演出として応援が盛り上がるよう番組側でメガホン用意してお客さんに渡したことがあったが、持ち込んだ瞬間にスタッフが"あ、やらせ。テレビ局ってやっぱりやらせをするんだ"と言われた。昔に比べて気にしなきゃいけないことが多くなったのは間違いないとは思う。むしろ誰からもクレームが来ないように意識していて、一つでも不安要素があったら外すっていう作り方をしている」と明かした。

 また、放送作家のBさんは「テレビ業界の常識と、視聴者の方の常識のズレもあると思う。例えば私たちは"ロケ台本"というものを作り、流れだけでなく、コメント案を書くこともある。もちろんその通りになることは決してないが、スタートとゴールがなければ、限られた時間の中でロケができない。でも、視聴者の中には"ロケに台本があるなんてやらせだ"っておっしゃる方もいるのかなと思う。テレビ業界の常識の中のやらせと、視聴者の方が感じるやらせってだいぶ違うのかなと思う」と話していた。

■「まずいと思ったものはボツにすべき」

 今後についてスペクター氏は「25年ぐらい前のテレビを見ると、ぶっ飛んでいて、とんでもない。コンプライアンスもないしSNSもないから、今では考えられないようなことをする最高の時代だった。でも公共の電波を預かっているわけだし、今はテレビ離れが深刻化しているだけに、ちゃんとやらないとダメだと思う。今もうるさい人達が何か発見できないかと、過去の放送をYouTubeで探していると思う。経質になりすぎている部分もあるが、そういう時代だからこそ、まずいと思ったものはボツにすべきではないか」と提案。

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 ふかわは「視聴率が物語っているように、毎週笑わせてくれてありがとう、というお茶の間との絆ができあがっている。文春が取り上げた問題はその大きな分母に対してそれほど大きな分子ではないと思っている。絆が希薄になったり、分母を超えたと視聴者に判断されたりしたら数字に現れると思う」と話していた。

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