プロのバスアングラーは本場・アメリカを目指す。バスフィッシングの本場がアメリカで、そのメジャーな大会に出場するのがアメリカを目指すことになるので当たり前だが、この傾向はトーナメンターと呼ばれるアングラーに強く見られる。
日本のシーンで活躍し、実績を重ねてから本場に渡るというパターンは、いまや海外で活躍するプロスポーツ選手のセオリーになってはいるが、一方でいきなり本場に渡ってチャレンジする者もいる。それが、内山幸也だ。国内のトーナメントにも参加はしていたが、若くしてアメリカに渡った。そして若者らしく“色々あって”日本に戻ってきた。色々と言うのはつまるところ、活動における現実に直面しての諸々である。しかし、その内なる心には並々ならぬ思いがあるに違いない。
そんな内山が得意とするのはトップウォーター、中でもフロッグ(=蛙)の釣りだ。しかし内山の場合、得意というよりはオンリーの釣り。トップウォーターは文字通り水面を対象とした釣りで、フロッグは構造上の根がかりにくさから、カバーでの使用をメインにしているルアーとするのが一般的。水面でカバーでトーナメントと聞くと、本気とは思えないが、内山はそれを実践し、見事に成立させている稀有な存在なのだ。
理由は簡単、カバーに限らずどこにでも投げるからだ。カバーを攻めるルアーではなく水面下にいる「やる気のあるバス」を誘うためのルアーとして使う。しかも内山はフロッグをフロッグとは思ってはいない。むしろフロッグはバスの好きなエサではないと話す。フロッグの最大の魅力は釣れるバスがデカイことにある。デカければ試合でも通用するし、むしろビッグフィッシュの効率が上がれば、勝算も高くなる。
フロッグのスタイルはアメリカで身につけた。日本の食わせの釣りが通用せず、迷った時に出会ったルアーだった。ちなみに愛車はもちろん、フロッグをイメージさせるグリーンカラーのアイテムを必ずどこかに身に着けているのも偶然ではない。
トップウォーターは攻撃的なルアーだが、カバーをもろともしないフロッグはさらに攻撃的だ。だからかどうかは知らないが、内山は完全なツッコミキャラである。シリアスだったり熱血だったりハッチャケだったりと、バスアングラーにも多くのキャラクターがいるが、ツッコミタイプは珍しい。
そんな内山が、AbemaTVで現在放送されている『AbemaTV presents WORLD CHALLENGE』(以下ワールドチャレンジ)に招待された。ワールドチャレンジとは、LeagueAとB、2ブロックの総勢8名によるリーグ戦。その勝者にはアメリカのトーナメント「B.A.S.S.バスマスターオープン」への参加権と年4戦の渡航費や滞在費をはじめ、大会エントリーフィー、ボートや車など、総額約2000万円のフルサポートが得られる夢へのチャレンジマッチだ。
その8名の参加者は国内トーナメントのタイトルホルダー5名とファン投票によるバスプロ2名、そして一般参加枠の1名と、すべてのバスアングラーとファンを巻き込んで、大々的に展開されているのだが、ワールドチャレンジへの出場が、唯一のファン投票ということも、彼の魅力を物語っているといえる。バスフィッシングの本場アメリカのプロトーナメントに、フロッグオンリーのツッコミキャラが出場する。もちろん人それぞれだが、想像しただけでもグッとくる。【text・コガネジュン】
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