![“しゃぶしゃぶ鍋パワハラ”被害男性が語った『洗脳』に若新雄純氏「疑うことを教えない学校生活からの負の連鎖」](https://times-abema.ismcdn.jp/mwimgs/4/2/724w/img_4259ef8dab95cb09cfadddc0d71e82ee191245.jpg)
21日発売の『週刊新潮』が報じた、芸能プロダクション社長による部下へのパワハラ。『デイリー新潮』で公開された動画には、煮えたぎる鍋に顔を押し付けられる衝撃の映像が映っていた。
動画が撮影されたのは2015年12月、渋谷区内の芸能プロダクションの忘年会で、十数人が参加していた。鍋に顔を突っ込まれたのは男性従業員で、顔を押さえつけたのは芸能プロダクションの社長だという。男性従業員は顔一面にII度のやけどを負った。
この件について22日午前、鍋に顔をつけられた男性従業員が会見を行った。男性は経緯について、「その場の空気を壊してしまうと後日怒られてしまうので。自分が空気を壊してしまうとクライアントやモデルの空気も壊れてしまう。でも一番は怖かったので『やるしかない。盛り上げるしかない』と。周りは所属していたモデルやアーティストで社長には逆らえなかった。クライアントも止められなかったと思う」と説明。翌日、自宅に社長が訪れたというが「お前、自分から頭突っ込んだんだよな」「何日後から仕事できるの?」「2、3日後から仕事できるんだよな」という発言があったという。
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また、パワハラと取れる行為は日常的で、2014年の忘年会の翌日に男性が二日酔いで遅刻した際には、社長から丸刈りの強要と罰金10万円の支払い要求(現在は返金済み)もあったという。男性は「自分の中で社長に洗脳されていたというのもありますし、言葉で精神的にやられていた。周りも助けようとしてくれていたが、自分は洗脳されていたので『大丈夫、大丈夫』と。社長が怖かったですね」と当時の心情を語った。
芸能プロダクション社長が行った鍋に顔を押し付けるパワハラ行為について、22日放送のAbemaTV『けやきヒルズ』で「主従関係の中で断りにくいということで生まれたと考えるとパワハラだけど、明らかな傷害罪だと思う」と断言した慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏。一方で、従業員男性が語った『洗脳』という言葉が引っかかるといい、放送後さらに詳しく話を聞いた。
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「学校の部活にしてもなんにしても、疑うことよりも『信じてのめり込む』ことを大事にするように教えられてきて、本当は早く抜け出さなきゃいけない場所に入ってしまっても、そこでの威圧的な教えを信じてしまう傾向がある。この業界はこういうものなんだ、これを乗り越えて面白い人間だと思われないと業界のエージェントになれない、と吹き込まれていたんだと思う」
これまでの学校生活や部活を通して、“疑わない”土壌が培われてしまったという若新氏。そこから負の連鎖が続いていると指摘する。
「中高の学校生活や部活の中で『一度やると決めたらやり切る』『やると決めたら疑わない』ことが美徳だとされてきた。部活を辞めるのはよほどの理由がないと無理で、辞めた人は“ダメな人間”という目で見られる。小学校では仲良しで“たかしくん”だった先輩が、中学校の部活の関係になったら“たかし先輩”と呼ばないと怒るなんてこともある。校則や学校の習慣、先輩と後輩の関係にしても、疑いを持って『おかしい』と言うことの大切さを教わったことがない。中学生の時になぜ校則を守る必要があるのかを担任に聞いたら『決まりだから』『変えたいならまず守ってから言え』と。パワハラの現場もこれに近くて、それをやり切ってから言えというのがすんなり入ってしまうのでは」
またパワハラが日常的な状況の中、被害者男性が会社から逃げ出すことが出来なかった理由については「それまでと違う人に会ったり違う場所に行ったりして、やっと俯瞰して相対的に見ることができる。洗脳されている時は相対視することが不可能になっているわけで、ルールを守らないと自分の居場所がなくなると考える。居場所に心酔することで集団が強くなった時代もあったけど、職業やライフスタイルが自由だといわれる今日においてもそれがあるのは、学校の教育の現場が“居場所洗脳”で悪い連鎖が続いているから。中学生の頃はその学校以外の世界があるとは思っていないわけで、疑うことをやめる方が楽だし、その中で生き抜く方が大事」との見方を示した。
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キャスターを務めるテレビ朝日の大木優紀アナウンサーも『洗脳』という言葉には納得感があるといい、学生時代のミュージカル部の活動を振り返って「みんなで熱くなって『ここは泣くところ』というところで泣かないと、裏切り者というか一生懸命でなかったようになる。悪いことではないけど、集団の常識という怖さがあった」と語った。
なお、被害男性は刑事告訴と損害賠償請求を行う方針だという。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)