終盤までもつれ、大いに盛り上がった大相撲九州場所は25日、今場所から千賀ノ浦部屋所属となった小結・貴景勝(千賀ノ浦)の初優勝で幕を閉じた。22歳3カ月での初優勝は元横綱・若乃花(当時・若花田)に次ぐ史上6番目の年少記録。さらに殊勲、敢闘のダブル受賞が初の名誉に花を添えた。その注目度の高さは、千秋楽の視聴率22.6%(先場所の千秋楽は12.8%)にもあらわれている。そして今場所は、白熱した取組以外にも注目され、盛り上がりを見せる場面が目立った。それは力士の所作。ルーティンである。
今場所6勝9敗に終わり、四場所連続の負け越しとなった前頭四枚目・阿炎(錣山)の美しい四股はその代表例で、場所中も観衆を大いに沸かせていた。本人も「自分が一番キレイ。四股なら誰にも負けない」と強いこだわりを語っている。大相撲は神事として古くから受け継がれており、四股には祓い清めの意味合いもある。そのため土俵上の所作に独自性を加えることに賛否はあるが、見る側からすれば美しい四股は鍛錬の賜物でもある。
塩をまく所作にも四股と同様の意味合いがあるが、塩をまくことで観客を魅了した力士といえば、元関脇・水戸泉(現・錦戸親方)だろう。その大きな手一杯に塩をとり、頭上に大きな弧を描く姿はソルトシェイカーと称され喝采を浴びたが、それを受け継ぐ力士が十両で今場所10勝を挙げた照強(伊勢ヶ浜)だ。千秋楽の対千代の海(九重)戦では、まだ空席の目立つ時間帯にもかかわらず「オォ!」と館内がどよめき、次の瞬間には盛大な拍手に包まれた。
塩をまく直前、塩を取った右手を額に持っていき、祈るような仕草を見せるのが前頭筆頭の北勝富士(八角)だ。その姿が映し出されるたびに、AbemaTVの視聴者からは「渋いポーズ」「瞑想」「白星に願いを」などのコメントが寄せられていた。しかしその祈りは届かず、千秋楽の一番で前頭十三枚目・隆の勝(千賀ノ浦)に突き落としで勝利するも7勝8敗で負け越しとなった。
その他にも大関・栃ノ心(春日野)や前頭八枚目・勢(伊勢ノ海)などが小走りで塩を取りに行く姿、大関・高安(田子ノ浦)が時間いっぱいで巨体を揺らしながら「フンッ」と気合を入れる様子など、細かいことを言えば枚挙にいとまがない。
最後は何といっても、今場所の優勝力士、貴景勝の「ポヨン」だろう。土俵下に用意された座布団に座る際にひざを曲げ、お尻の筋肉の柔軟性を確かめるためのルーティンだというが、その小さくて丸いカラダが、お尻から座布団に飛び乗る仕草はネット民の間で「ポヨン」として親しまれている。
本割での迫力と緊張感が大相撲の醍醐味であることは言うまでもないが、このように少し見方を変えるだけで、また違った相撲の魅力、力士の個性を楽しむことができる。平成最後の九州場所が幕を閉じてまだ2日しか経っていないが、年明け1月13日から東京・両国国技館で行われる大相撲初場所が待ち遠しい。
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