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 「本が売れない」と不況が叫ばれて久しい出版業界。2007年には2.65兆円あった総売上高は、昨年には1.62兆円にまで落ち込んでいる。そんな中にあって、「出版"社"不況は終わっていないが、出版不況は終わったと思っている」と話すのが、"編集界の革命児"と呼ばれる箕輪厚介氏だ。3万部も売れればベストセラーといわれる時代に、『多動力』(堀江貴文著、32万部)、『お金2.0』(佐藤航陽著、21万部)、『日本再興戦略』(落合陽一著、14万部)と、手がけた本は次々と大ヒットを記録している。

 「ちょちょって頑張ったら絶対ヒット出ちゃうもん。他の編集者何してんの!?(出版業界からは)死ぬほど煙たがられてる(笑)」。29日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、そんな箕輪厚介氏に密着した。

■原稿を読みながら表紙やプロモーションをイメージ

 1985年に東京に生まれた箕輪氏は、内定していたリゾート会社が倒産したこと機に双葉社に入社、出版の道へと入っていく。

 「こういう性格なんで、テレビ番組や本を作るとか、面白いこと以外は本当にダメ人間。でも、当時はウェブメディアも今ほど強くなかったし、テレビ局と出版社にも落ちて、沖縄のホテルでパラソルをさす係にしか受からなかった。まあいいや、沖縄好きだし、適当に泳ぎながら仕事しようと思っていた。そうしたら会社が潰れたので、就職活動をもう一度したら双葉社に内定した。そこで幻冬舎の見城徹社長の本を担当して、それが8万部、文庫版も合わせて10万部以上売れた。それで気に入ってもらえたのか、"幻冬舎来いよ"と言ってもらった。結果として、出版社で良かったと思う。本って中小企業が出しているので、極端な話、殺人犯の本を出したって良い。そこが僕のやり方にあっていた。テレビって国民のものなので、入っていたら"変な人"で終わっていたかも」。

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 仕事風景を撮影させてほしいと依頼したところ、指定されたのは午前3時半の幻冬舎のオフィス。仕事関係の会食を終えて現れた箕輪氏は「二日酔いで気持ち悪すぎて死にそう」とぼやきながら仕事をスタートさせた。お酒は出会いを広げ、人間関係を作り、仕事にも跳ね返ってくるという大切なツールだというが、目の前の仕事も山積みだ。この日は3時間半後の午前7時が「SHOWROOM」前田祐二社長の著書の原稿が締め切り時間だといい、上がってきた原稿を時間の限りチェックする。「ぶっちゃけ機械的な作業なんだけど、これをやることによって前田さんの強調したいところが理解できるし、表紙やプロモーションをイメージしながら文章読んでいくことができる」。

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 さらに締め切り時間ギリギリになるとスマートフォンでTwitterを操作し始める箕輪氏。遊んでいるのかと思いきや、これも本を売るための大事な作業だという。「もう中毒。気になって気になって。Twitterの効果を考えたら、打ち合わせをやるより、家で一日中Twitterをやってムーブメントを作っていったほうが絶対に売れる」。

 そうこうしているうちに時刻は午前7時。酒も抜け、前田氏の新著『メモの魔力』の原稿が完成した。しかし仕事はまだまだ終わらない。「これからプロモーションの打ち合わせ」。

■「それほど仕事してない。"いいっすね!"って言っているだけ」

 いつもこのような生活を送っているかと言えば、追い込まれるのは締切前だけだといい、それどころか「それほど仕事してない。"いいっすね!"って言っているだけ。それが全員の力を引き出すことに気付いた」と話す。

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 箕輪氏は出版社「幻冬舎」のサラリーマン編集者でありながら、月の半分は全国各地で講演会をこなし、テレビや雑誌に登場しては芸能人との対談を次々と行う。それだけではない。活動は育児サービス事業のコンサルティング、全国100軒の展開を目指しているというシェアハウス『みの邸』の運営にも及ぶ。「単純に楽しそうだし、やってみたいから。結局、編集者が土地だとしたら、本はそこから出てくる木。土地が豊かでなければ同じ木しか生えないし、やせ細っていくと思う」。

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 これもすべては編集者としてヒット書籍を生み出す為の大切な作業なのだという。「編集者って、要は世の中のあらゆる情報や経験を一冊の本に編み直して届ける仕事。デスクで仕事してるくらいだったら、テレビに出るとか、雑誌の取材を受けるとか、感じたり見たりしたことが豊富な方が絶対に土壌が豊かになる」。

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 さらに、自身の生き方に共感する人々が集うオンラインサロン「箕輪編集室」も話題だ。約6000円という月額料金ながら、会員は1000人を超える。「量は質を スピードは熱を生む」「死ぬこと以外はかすり傷」をモットーに、メンバー限定のSNSや交流やイベントなどを行っており、参加者の職業はテレビ局や新聞社、出版社などメディア企業の社員だけでなく、高校生や大学生にも及ぶ。

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 「時代の空気感として感じるのは、かつて若い人が芸人さんやロックミュージシャンに求めていた、権威や体制への反抗というのが、起業家の役割になってきていると思う。ビートたけしさんやブルーハーツ、尾崎豊に集まっていた人たちが、サービスを作って世の中に変えることに熱狂している今の時代は起業家に集まる。僕はそういう起業家たちの本を作るプロデューサーなので、人が集まってくる。でも、僕自身が起業して会社を作るということはしない。ローンのために会社に残ったり、モチベーションが低かったりする社員も出てくるが、クリエイティブなものはお金をもらって作業にするより、お金を払ってでも好きでやったほうが良いものができる」。

■「単に僕が読みたいだけ」本づくりは"たった一人の熱狂"から始まる

 そんな箕輪氏の本づくりは、マーケットを分析して"流行りそうだから"と考えるのではなく、自ら動きまくり、時代や社会を肌で感じることから始まるという。

 「僕も一人のビジネスパーソンとして編集以外の仕事もやっているので、同世代でビジネスをやっている前田さんや佐藤さんと対等に話ができる。そうすると、勢いや才能がある人も集まってくるので、そこで"この人の考え方が面白いな"と思ったら"本書いてくださいよ"と言う。多くの編集者は、ヒットしている本やテレビを見て一本釣りしようとするが、僕はその釣り堀の中で一緒に泳いでいるようなもの。根っこにあるのは"自分が読みたいから"ということ。"これから動画ってどうなるの?"って思ったら、じゃあ一番面白いし、最先端を行っている明石ガクトに話を聞いて、本にしてくださいと言うコンテンツを作るということは、本当に"たった一人の熱狂"だと思う」。

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c 箕輪氏が売ろうとするものが売れるのか、それとも箕輪氏が編集をすればどんなテーマでも売れるのか。

 「売れればいいとは思っていなくて、本によって合格ラインは違う。ビジネス書の場合、ビジネスパーソンを取りきって30万部くらい。日本刀の本などの場合、市場が小さいので1万部くらい売れたらゴール。その本が本来の魅力を全部出して、ポテンシャルを発揮できるようにするということ。でも、強烈に信じているやつが一人でもいたら大外れはしない。当たるとまでは言わないけど、伝わる。難しいけど、どんなものでも売る、というある種のプロモーション術は当然持っているが、根本的に人に届くものって、なんのカラクリもなく、僕自身がそれを知りたくて、がむしゃらにその原稿に向き合っているもの。意外とピュア」。

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 箕輪氏の編集により『動画2.0』を出版した明石ガクト氏は「必死に書かせる最後の一押しをやる。だからSHOWROOMの前田裕二さんや僕みたいな忙しい人がちゃんと本を出せる。他の編集者だったら無理だった」、同じく『人生の勝算』を出版した前田氏も「箕輪さんの解釈の力がすごく高いという安心感がある。だからどんどん自分のノウハウや経験を話したくなる。不思議な、引き出す力がある」と絶賛する。

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■「常にチャレンジしなきゃいけないし、失敗してもいい」

 「"やりたいけど会社がOKしてくれない"というのは言い訳。会社だって儲からなかったらやっていけないわけで、金儲けを死ぬ気で考えて、下地を作ってからやりたいことをやれという話」。出版不況について、そう断言する箕輪氏。

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 「例えば僕が出している『NewsPicks Book』というレーベルは、月額5000円の『NewsPicks アカデミア』というサービスの一部。そこにいる3000人以上の会員に毎月送られるというビジネスモデルになっているので、最初の段階でもう原価はペイしている。多くの本は大体赤字だが、そうでなければフルスイングできる。だから誰にも文句を言わせずに僕の読みたいものをつくることができる。常にチャレンジしなきゃいけないし、失敗してもいい。SNSの世の中では、チャレンジした上での失敗は物語として記憶されるし、ファンが増える。簡単に敵を倒す漫画の主人公には人気が出ないのと同じ。僕はそこに味を占めたということだと思う。失敗は怖くない」。

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 来年にはCDデビューも控えているという箕輪氏。今後はアジア進出も考えているという。「暖かいところが好き。だからとにかくアジアに行きたい。アジア進出と言えば、そこになんらかのコネクションを持っている会社や人がどんどん集まってくる。実際、"実はプーケットに住んでいて、空いているオフィスがあるので使ってください"とか。とにかく具体的なノウハウは何もないけど、言い続ける。そうすれば1年後くらいには形になっているはず。立てた旗が面白そうだったら、みんなそこにダッシュしてくる」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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