11月29日 東京・後楽園ホールで行われた「WORLD TAG LEAGUE 2018」。ザック・セイバー・ジュニア、タイチ(4勝2敗)対鈴木みのる、飯塚高史(3勝3敗)の鈴木軍同士の対決で、暴走と噛みつきの権化「クレイジー坊主」こと飯塚が、かつての技巧派レスラー時代を思わせる技を繰り出すハプニングで会場を沸かせた。
見応えのある対戦だった。序盤戦の鈴木とザックのグラウンドでのハイレベルな戦いから、飯塚の無差別噛みつき攻撃、両軍入り乱れての場外乱闘と同門でも安定のラフプレイの応酬。しかし単なる反則攻撃ではなく、鈴木とザックの関節技や打撃戦と幅の広い応酬と、タイチと飯塚のイス攻撃と真逆の場外戦が展開される。
しかし、この試合の最大の見せ場は試合後半に訪れた。荒れ気味の展開でお約束とばかりに鉄の爪「アイアンフィンガー・フロム・ヘル」を装着した飯塚。攻撃が未遂に終わり、かわしたザックのヨーロピアンクラッチをカウントツーで返すと、昔を彷彿とさせる通称・魔性のスリーパーを繰り出す。あまりにも唐突に繰り出したスリーパーホールドにザックも失神寸前まで追い込まれ危機一髪の状況に…。
飯塚といえば、かつて新日本プロレスきっての技巧派として名を馳せた。特に村上和成を場外戦で瞬殺、その後もトレードマークとなった魔性のスリーパーは、寡黙な殺し屋・飯塚の代名詞だった。紆余曲折、ヒールターンを経て鈴木軍では、「狂乱のアイアン・フィンガー」の異名どおり予測不能な入場シーンと技らしい技もなく暴れまくり噛みつきゾンビ化の一途を辿っていたが、一瞬我に返ったのかキレ味するどいスリーパーに観客から、どよめきとともに、飯塚コールが飛んだ。
最後は一瞬のスキから飯塚が丸めこまれザックに押さえ込まれて敗退となったが、今年52歳になるベテランの不穏すぎる鋭い動きは、長年暴走する飯塚だけを観てきたファンからするとプロレス版クララが立った!的な瞬間。試合の結果以上に観客の度肝を抜いたのは確かだ。
飯塚の目覚めとの関連性は不明だが、この日の大会ではかつての盟友、天山広吉が象徴的な技、ムーンサルトプレスを数年ぶりに決め鮮やかな勝利で健在ぶりをアピール。そんな天山の奮起が、一瞬ではあるが飯塚に魂を注ぎ込んだ、そう思わせるような瞬間だった。
この同門対決での勝利で、ザック、タイチ組が(5勝2敗)10点と勝ち星を積み上げ、鈴木、飯塚組は(3勝4敗)とリーグ戦は後退したが、再び正気を取り戻し、飯塚に奇跡が起きたら本命食いの番狂わせも予想される。今大会も鋭さを増す鈴木みのるの50代コンビは侮れない存在となりそうだ。
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