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 6日、いわゆる"水道民営化法"が成立した。背景には、高度経済成長期に敷設された水道管の多くが耐用年数を過ぎて老朽化、一方で管理・運営する地方自治体の多くが人口減少などによる収入減で赤字体質だという問題がある。実際、大阪北部地震では水道管が破損して9万戸以上が断水。西日本豪雨でも27万戸以上が断水に見舞われている。6月、加藤勝信厚生労働大臣(当時)は国会で「水道事業は深刻な課題に直面している。水道の基盤の強化を図るためこの法案を提出した」と指摘。最終的な責任は自治体が負うものの、運営は民間に委ねるという"水道民営化"が浮上したのだ。

 しかし、野党からは懸念点も指摘されている。11月、立憲民主党の川田龍平参議院議員は「公共の水道の本来の目的とは別にビジネスとして利益を上げるという目的が入ってくる。今まで以上に料金が上がる」「諸外国では安全管理品質管理が疎かになった例が少なくない」と主張している。

 実際、民営化されたマニラでは5年間で水道料金が5倍、インドネシアでは10倍に膨れ上がっており、南アフリカや中南米では料金の高騰で貧困層が水を飲めない事態も発生しているという。また、イングランドでは民営化後に水質検査の合格率が大きく低下。フィリピンでは水道水が大腸菌に汚染されてコレラが流行、多くの死者も出ている。結局、世界で235の自治体で公営に戻っているが、厚労省による調査結果では敗例がわずか3例だったことから、立憲民主党の石橋通宏参議院議員は「その3例がどこから引っ張られたのか。古い物を文献からそのままコピペしたということだ」と厳しく批判している。

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 また、NPO法人「地域水道支援センター」理事で、水ジャーナリストの橋本淳司氏は「疲弊している自治体は元々が赤字体質なので、その事業を民間が引き受けるだろうか。民間が料金を下げるのは、競争のシチュエーションだ。今回の場合は地域に独占企業になるということもあり、努力して料金を下げようとするだろうか。反対のことも考えられる」と指摘する。

■足立康史議員「いいことしかないと思う」

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 「野党だけど、与党がだらしないから来た」とAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』(8日放送)に出演した日本維新の会の足立康史衆議院議員は「このまま放っておいても水の需要は減っていくし、老朽化が激しく耐震化も進めないといけない。だから日本の水道料金は今後上がっていく趨勢にある。そこで政府は経営を少しでも効率化して、料金上昇の傾きを緩やかにしていかないと、他の市民サービスを圧迫してしまう。みんな"民営化"と言っているが、正確には官民連携だ。上下分離といって、水道の施設などは自治体が持ち、運営権だけ経営感覚のある民間に委ねる。今回の改正水道法は災害等の復旧の責任は自治体が引き続き持っているし、その責任関係は一切変わっていない。業者は厚生労働大臣の許可を得る必要があるし、自治体には立ち入り検査、報告聴取の権限もあり、料金の公正を確保する仕組みもある。丸投げにははらない。例えば国鉄がJRになって良くなったとは思わないか。経営というのは合理的なマネジメントをしようということ。公務員の組織が努力しないなら、民間のノウハウを入れて機能させるのはあたりまえだと思う。僕はいいことしかないと思う。皆さんは民間企業を悪みたいに言うが、もしも彼らが各地で悪徳なハンドリングをすれば評判が落ちる。野放図に金儲けをするということはない。民間企業はもちろん儲けるために頑張るが、公務員よりもより効率的に、より安心安全な水を届けて喜んでもらおうという努力をするだろう」と訴える。

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 野党が問題視していたのが、法案に盛り込まれたそのコンセッション方式(官民連携方式)だ。地方自治体が水道事業を経営するというこれまでの原則は維持する一方で、運営権を民間に売却できる仕組みだ。民間業者が浄水場の維持管理、水質検査、料金徴収まで一手に引き受けることになるため、野党は事実上の水道民営化だと批判しているのだ。

 これについても足立氏は「元々民主党政権時代にPFI法案というのが出来て、すでにできるようになっていたし、法案に盛り込まれたのは、あくまでも"選択肢"だ。過大なリスクがあると思えばやらなければいい。宮城県や浜松市はやりたいと思ってきたが、法律上の制約があってできなかった。やりたいと判断して、議会の承認を得た役所の邪魔をする必要があるのか。今回、都道府県が広域化の推進役となるということにもなったので、小さな市区町村の水道料金が高騰していくのを防ぐ、その中でコンセッション方式をやりたいところは禁止しませんよというのが趣旨」だと説明した。

■みのもんた「日本企業なんてひとたまりもないと思う」

 浜松市ではすでに下水道運営を世界3大水メジャーの一つ、フランス「ヴェオリア」社の日本法人に委託。浜松市水道事業管理者の寺田賢次氏は「市が直接やるよりも民間の事業者の皆さんの創意工夫、独自ノウハウを活用して、効率的な整備をしていただく」と述べた。浜松市では、水道法改正を受けて、上水道の運営も委託することも検討している。

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 アベノミクスの成長戦略の一つともされる"水道民営化"として懸念の声が上がるのが、こうした"水メジャー"と呼ばれる大手外資企業の進出に伴う問題だ。例えばヴェオリア社はパリの水道事業運営も任されていたが、料金が2.6倍に高騰したことから、水道は再び公営に戻っている。

 この問題について足立氏は「ヨーロッパの莫大な数の水道事業の中で、1つ、2つけしからんのがあって、それが追及されているということ。また、パリとベルリンが再公営化されたとよく言われるが、パリは公社化しても経営の自由度は維持したまま、ベルリンも市が100%株主の会社。我々がやろうとしていることと逆を向いているというのはプロパガンダで間違っている」と反論した。

 前東京都知事の舛添要一氏は「民営化は悪いことばかりではないが、ケース・バイ・ケースだ。東京都水道局の場合、利用者数も多く、独立事業体としてうまく行っているし、設備もすばらしい。これが民営化してしまえば、天下り会社を作るようなものだ。ただ、小さい自治体は全然違う。足立さんが言うように、広域化は大事だ。消防・救急も地域連合でやっている」と説明。

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 その上で、水メジャー進出について「世界中で水道関係の事業をやってきたフランス企業はメチャクチャ強いし、ナメてかかってはいけない。日本企業では太刀打ちできないと思う。加えてフランス人はずる賢いので、契約を結ぶ時に一言一句ちゃんと確認しておかないと、後で足をすくわれることにもなる。儲からないと思ったら逃げるだろうし、失敗すれば首長の責任になる。最終的には、儲からなくてもやるのが公共事業だ。問題は災害などの時に採算を無視しても出てこられるかということ。私の政治哲学では、水は生活に最低限必要なものなので、税金がかかっても公営でやった方がいいと私は思うし、仮に水道料金がめちゃくちゃ高くなったら、議会と議論して税金で補填してもいいと思う」と話した。

 水道メーター製造販売会社の経営者としても知られる司会のみのもんたは「会社を52年間やってきたから他人事ではない。水道料金が自治体によって違うということを知らない方は国会議員の中にもいる。浄水場の維持管理、水質管理、料金徴収に、一体どれくらいのお金がかかるか知っているだろうか。どういう事情でその地域の料金が決まっているのか、そのことを良く分かってから考えないといけない。料金を滞納しているからと言って、電気やガスのように止めてしまうわけにはいかない。厳しい言い方をすれば、水メジャーが進出してきたら、日本企業なんてひとたまりもないと思う。もう少し慎重に審議してほしかった」とコメントした。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)


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