NHK「紅白歌合戦」への出場も決定した人気グループ「King&Prince」。しかし今年10月、「必ず病を克服し、皆様の前に立てる日を目指して治療に専念します」と、メンバーの岩橋玄樹が活動休止を発表した。同じく紅白に出場する「Sexy Zone」の松島聡も先月「苦渋の選択とはなりますが、今はこの病気を克服することが一番と決断致しました」と活動休止を発表した。
2人に共通しているのが「パニック障害」だ。動悸やめまい、過呼吸など体の突発的な異常や、「このまま死んでしまうのでは」といった強い不安感に襲われる疾患だ。人口の1~3%と、決して珍しい病気ではなく、男性に比べて女性の発症率が高く、特に20~40代に多いという。また、中学受験を控え、熱心に勉強していた子どもが試験の緊張で過呼吸になってしまったり、サラリーマンが転勤先の土地や人に馴染めずにめまいや不安を引き起こしたりと、発症するきっかけは人それぞれ。そして何よりも、多くの人が突如として困難を抱えてしまうことになる病気でもある。10日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この「パニック障害」について、当事者だったお笑いコンビ「中川家」の剛と一緒に考えた。
1992年に弟・礼二とコンビを結成すると、1996年には「ABCお笑い新人グランプリ」で最優秀新人賞を受賞。仕事が順調に増えていた1997年に発症した。
「27歳の時、ご飯を食べていて"急に息ができない"と感じた。今考えると、突然仕事が増えたことで、出だしの人間が10歳も20歳も上の先輩に堂々と絡みにいけるわけでもなく、顔色を伺いながら。それとストレスだったんじゃないか」。
慈恵医大第三病院の舘野歩医師は「プレッシャーがあって、期待を背負って、ご自身も頑張らないといけないみたいになると、そういったタイミングでパニック発作が起きることはよくある。気を遣う、内向的、几帳面、完璧主義、あるいは強い面と弱い面の両面を持たれているような性格の方がなりやすいと言われている。やはり周りの方に気を遣って、"頑張らなければならない"という意識が働いていたのではないか。動悸、息切れなどのパニック発作が数分きて、ピークが過ぎればおさまるが、またそれが起きるのではないかという"予期不安"によってパニック障害になっていく」と話す。
急行や特急に乗ると発作が出たため、各駅停車を何度も乗り降りしながら、それまでは30分で行けた大阪ー京都間を4時間かけて仕事にでかけた。
「なんとか相方の礼二に分かってもらって、付いてきてもらった。人混みの圧迫感が辛く、各停に乗って2駅で降りて、また次の電車に乗って2駅乗っては降りて、を繰り返した。ラジオの仕事でも、スタジオの防音ドアを閉められると苦しくなる。食事も調子のいい時ぐらいだった。それが1年くらい続いた。治ったかなと思って、劇場の舞台袖まで行って、やっぱり無理だと家に帰ったこともある。そのときは礼二が1人でやった。いけたかな?と思ったらいけなかったという繰り返し。漫才中も、移動中もそうだった。仕事に行けないので休む、仕事がなくなる、もう一つ仕事に行けなくなる、なくなるという中で、結果として休むことになった」。
また、「King&Princeの岩橋がUSJに遊びに行っていた」という報道について剛は「言いたいことがあった」と前置きした上で、「気持ちが分かる。多分、試したんじゃないか。本当はもう治っているんじゃないか、昨日は苦しかったけど、今日は治ったんじゃないかとと、調子がいい時はやってみたくなるものだ」と話した。
そんなパニック障害の治療方法について、舘野医師は「セロトニンを阻害する、ある種の抗うつ薬と、あとは医師との対話という心理療法・精神療法の両方をバランスよく組み合わせていくことが大事だ」と話す。「急性の発作を和らげるのは薬だ。効果があって副作用がないのが一番いいが、抗不安薬の中には眠気、ふらつきの副作用が出てしまう場合がある。発作の方に効かずに、副作用があると患者さんは思ってしまう」。
剛も「僕は薬だが、薬がきつくてフラフラしたり、仕事の時にボーッとなったし、眉毛がポロポロ抜けてきたこともあった」と話す。
まだ「パニック障害」という病名の浸透していない時代。「"気の持ちようだ"と。"辞めてしまえ"とか"しょうもない"とか、ひどいことも言われた」。それでも礼二さんや周囲の人の支えによって、少しずつ症状は落ち着いていった。
「相方も最初は怒っていたが、汗をかいたり、手が震えたりしたりしていたので、ただ事じゃないなと段々分かってきたんだろう。当時、AとBが喋る内容をきっちり台本に起こして、一言も間違えたらいけないというような漫才をやっていたが、それを止めることにした。礼二"自分が主に喋るから、それを邪魔したらいいから、とりあえず真面目に考えるな。お前はただ立っていてくれたらいいから"と言ってくれた。また、明石家さんまさんに"額にパニックのPというのをつけたコントを作ればいいじゃないか"と言われた時に、なんだか知らないけれどホッとした。分かってもらえて、笑いにしてくれて、みんなも知ってくれた。だから治った後には本当Pを付けて、慌てるだけのコントをテレビでやった」。
舘野医師も「"気のせい"というのがあまり良くない言葉だ。周りは声がけをしたり、理解して支えるような姿勢で寄り添うことが大事だ。パニック発作がライフスタイルを見直す機会だと思えば、生活を立て直して、人生を充実させるきっかけにもなると思う」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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