「管理人です。最高裁で上告が棄却され敗訴となりました。」「2ちゃんねる」に投稿された中国や韓国に関する書き込みを引用し、まとめる「保守速報」の管理人が敗訴確定を報告した。2014年、「保守速報」の記事よって名誉を毀損され、精神的苦痛を受けたとして、在日韓国人のフリーライター・李信恵さんがサイト運営者を相手取り訴えを起こした裁判で、最高裁は11日、「保守速報」側の上告を受理しない決定を出した。
運営者側は記事について「2ちゃんねるの記載内容以上の情報を伝えるものではない」として、あくまでもネットにあふれる情報をただまとめただけで、問題になっても自分たちに責任はないと主張してきた。
しかし、二審の大阪高裁判決は引用された投稿の並び替えや文字の拡大・色付けなどの加工がなされていることから"編集されたもの"として、「一定の意図に基づき、新たに作成した一本一本の記事(文章)であり、引用元の2ちゃんねるのスレッド等からは独立した別個の表現行為である」と判断していた。
2ちゃんねるの投稿などを一部引用し集めることで記事を構成、若者を中心に多くの人が利用する「まとめサイト」をめぐっては、これまでも様々な観点から議論の対象となってきた。しかしネット界では「転載しているだけだから大丈夫」「苦情が来たら削除すればOK」「判決が出ていないから平気」といった認識も少なくない。
13日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この「まとめサイト」が"一つの表現行為"であると認定されたことの意味について、IT関連の法律問題に詳しい深澤諭史弁護士に話を聞いた。
まず、今回の最高裁の判断について深澤弁護士は「ヘイト要素や金額の問題とは別に、"まとめただけだから問題ない。転載だから問題ない"という主張は通らないのではないか、ということは法律家の間で予想されていた。その判断が示されたことは非常に画期的だといってよい。さらに、まとめる行為で責任が生じるだけでなく、引用元よりも違法性が高いこともあるという形で確定したことは大きい。従前からこうした訴訟はいくつかあったが、今後ますます増えると思う。実際に責任を問うことができるということが広まってきたので、もう泣き寝入りする必要はない」と指摘する。
裁判の過程では、「保守速報」の内容を問題視した読者が広告を配信していた企業に通報し、止めさせるという"広告剥がし"の動きもあった。広告主が撤退することで収入源が失われることになり、運営継続が危ぶまれることになった保守速報は、オリジナルデザインのしおりを販売するなどして現在も運営を続けている。
運営者にとっては「コピペだから楽だし、PVを稼げば表示された広告の収入で儲かる」、読者にとっては「見やすくわかりやすい」として、多くの「まとめサイト」が立ち上げられ、人気を集めてきた。その影響力や拡散力は、新聞社などマスメディアのサイトを凌ぐ場合もある。
「自分のことがよくまとめられている」と話す矢口真里は「ようやく今かと思った。これまで問題視されてこなかったのが不思議なくらい」、柴田阿弥も「ネガティブな内容の方が人の目を引くので、私もアイドル時代からボコボコにやられてきた。2ちゃんねるの書き込みには一時の感情で書かれたものもあるし、時間が経てば流れていってしまう。それがまとめられることで拡散し、2ちゃんねるを見に行かない人に対しても届いてしまう」と話す。
週刊東洋経済担当部長の山田俊浩氏は「Yahoo!ニュースのようなニュースサイトやSmartNews、Gunosyのようなニュースアプリも、契約しているメディアから配信された記事を基本的に加工せず転載している形だが、仮に東洋経済が配信した記事が名誉毀損に当たるとなれば、共同被告という形で責任を問われることはある。また、ユーザーがまとめを作成するNAVERまとめの場合、4月に大手新聞社と契約して正式に引用できるような形にするなど、対策を講じている」と説明した上で、「私たちメディア側には、なぜ自分たちの記事は読まれず、まとめサイトの記事が読まれるのかという反省がある。ユーザーが作った記事やメディアには、私たちから見ても本当に分かりやすくて面白いものも多い。そういう分かりやすい伝え方をもっとしないといけない」と話した。
深澤弁護士は「PVが増えれば儲かる仕組みなので、"この際ウソかホントかはどうでもいい、とにかく目立ってクリックしてもらえれば勝ち"だという競争が生じ、違法行為すらも横行している側面がある。利用者は鵜呑みにしてフェイクニュースの拡散に協力してしまわないこと大事だ。また、"文句が来たら消せばいい"というのは基本的に嘘だ。万引きが見つかったら物を返せば許されるのかと言えばそうではない。それとまったく同じで、文句が来た時点でもう遅い。サイト運営者も、判断に迷うことがあれば弁護士に相談する癖をつけた方がいい」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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