転職したい夫を止めたい妻を表す「嫁ブロック」。世間の認知度はまだわずかだが、この言葉が大手転職サイトなどで注目を集めている。
その背景にあるのが内定辞退の数の多さ。エン・ジャパンのアンケートによると、転職先から内定が出ていたにもかかわらず、家族の反対にあって辞退した経験のある人は2人に1人。家族の中では「妻の反対にあった」という人が約8割と、大多数を占めている。
実際に街で話を聞いてみると、夫の転職は「絶対ヤダ!」と反対する妻や、「(転職の)お話をいただいたことはあるんですけど、止めてくれたのが(妻)」と、言葉こそ知らなかったものの嫁ブロックによって転職を踏みとどまった夫も。
なぜ、妻たちは嫁ブロックをするのか。理由として、アンケートでは金銭や勤務地、残業の多さなどを挙げた人が多くいたが、ほかにも「大手企業の肩書きがなくなる」「ベンチャーだから」などという意見も。実際に嫁ブロックをした妻からは「けっこう周りの環境が良かったりするので」、子どもがいる夫婦では「5時に帰ってきてくれるので。今のテンポ、生活リズムでいい感じ」という声があがった。
そんな中、嫁ブロックによって転職への思いを捨てられないまま悶々とする人に対して、この嫁ブロックを専門にアドバイスを行っている人物がいるという。
“NO WIFE NO LIFE”のTシャツを着て現れたのは、株式会社ペライチの代表取締役も務める橋田一秀さん。橋田さん自身も「嫁ブロックコンサルタント」という職業は知らなかったといい、「僕はこのサイトを作っていないんですよ。2年前、僕の誕生日にウチの社員が作ってくれた。僕が嫁ブロックで取材を受けたことがあったので、『コイツを嫁ブロックコンサルタントに仕立て上げたほうが面白いぞ』というノリで」と明かす。
現在のコンサルティング対象は、自分の会社に転職してくる人の家族への説得が相談の中心だということだが、そのきっかけは大手企業を1年半で辞め、エンジニアとしてベンチャー企業で働いていた時に起業を考えていた自身の経験からだった。
「起業する段階でいわゆる『嫁ブロック』を受けまして。(企業したいと言ったら)『いやいや、そんなこと聞いてないよ』と。もう喧嘩ですよね。僕の時は『僕はこういうことが向いていると思うので自分で立ち上げてみる』という資料を作りました」
妻へのプレゼンと妻の家族への説明、条件面での話し合いを経て、最終的に決着したのは“念書”だった。橋田さんによると「最後は誠意、どれくらい熱意があるかを伝えることが重要」だといい、そのうえで今後転職を考える人に嫁ブロックコンサルタントの立場から次のようにアドバイスしている。
「テクニカルな話をすると、『早めに言ったほうがいい』ということ。説得するのはとても時間がかかるので、その時点からよりは『なんとなくこう思っているんだけど、どう思う?』というレベルの話ができたほうが、奥さんも心構えができる。そこから話し合いが始まるので。『嫁ブロック』というのはその中でも一つのキーワードでしかなくて、働き方とかライフスタイルというものが、何をもってウチの家族は幸せなのかということ」
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)