先日行われたアジアカップ・グループステージ第1節でトルクメニスタンと対戦した日本代表は辛くも3-2で初戦を白星で飾った。スタメン出場を果たした弱冠20歳の堂安律は、アジアカップにおける日本代表の最年少ゴールとなるチームの3点目を奪って勝利に貢献した。
堂安といえば、所属するフローニンゲンでも右サイドを主戦場にカットインから得意の左足でゴールを重ねている。昨年12月11日に行われたエールディビジ第12節のヘーレンフェーン戦で見せたカットインからの芸術的なコントロールシュートは「最高のショット!」、「幻想的なカーブ」と地元メディアに称えられた。
そんな堂安と同じく左利きで右サイドからの強烈なカットインを武器に驚異的なペースで得点を量産している選手がFリーグに存在する。それこそがペスカドーラ町田のクレパウジ・ヴィニシウスだ。
サッカーにも共通するディフェンスとの駆け引き
2011/2012シーズンに来日したヴィニシウスは、初年度からコンスタントにゴールを積み重ねていき、ここまでの8シーズンに232試合で252ゴールをマーク。このゴール数は、同じペスカドーラ町田の森岡薫が持つ286ゴールについで2番目の記録だ。しかし森岡が309試合の出場での記録であることから、ヴィニシウスの得点力の高さが伺える。
そんなヴィニシウスの必殺技が、わかっていても止められない右サイドからのカットイン。ディフェンスにマークされた状態でも、ワントラップではがし得意の左足を振り抜く。この得意のプレーだけにフォーカスすると、堂安に似たスタイルといえる。
しかしこれだけ得意な形が明確な中で、なぜディフェンスは彼を止められないのだろうか――。ヴィニシウス自身はその理由を「ディフェンスとの間の作り方」だと明かす。
「1番大事なことは絶対にボールを止めないこと。動きながらボールをもらうことで相手はマークしにくい。ボールは止めるためにトラップするのではなく、次の動きをするためのトラップ」
つまりはボールを受ける前に状況を判断し、どうすれば得意の形に持っていけるかを考える。そしてボールを受ける際には、導き出した最適解を遂行するだけ。ディフェンスとの駆け引きのほとんどは、ボールを受ける前に終わっていることになる。
サッカーやフットサルで最大の盛り上がりはゴールシーンだ。しかしこういった一瞬の駆け引きはフットボールの醍醐味の1つでもある。現在行われているアジアカップやシーズン終盤に突入したFリーグでもそういった駆け引き、特にストライカーとディフェンスの読み合いに注目すると新たな観戦方法を発見できるかもしれない。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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