2014年に中国の大連からオーストラリアに麻薬222kgを密輸しようとしたところを逮捕され、今月14日に死刑判決が下されたカナダ人のロバート・シェレンバーグ被告。ファーウェイ事件後、緊張状態にある中国とカナダ両国だが、その最中に下された死刑判決は執行されるのか? 世界の注目が集まっている。
20日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』で取材に応じた中国の死刑制度に精通する一橋大学の王雲海教授(58)は「中国の法律上、麻薬密輸をした場合、ヘロインだと50g以上で死刑になりうる。このままでは死刑執行される可能性が高い」との認識を示すと、「中国での年間死刑執行者数は800人前後で、世界の7割から8割を占めている」と中国における死刑制度の実情を明かした。
この発言に対して、番組MCを務める千原ジュニアが「報復とみて間違いなのか?」と尋ねると王氏は「このカナダ人男性を死刑にすることは、中国の法律上問題はない。ただ、問題なのはタイミング。ファーウェイ事件の後の判決なので、報復とみられても仕方ない」と答えた。今回は一審判決で懲役15年の実刑判決が下るも、差し戻し直後の判決での死刑判決。そのことについては「建前上、司法は独立しているが、行政や政治は司法に対して強い影響力を持っている」と含みを持たせた。
意見を問われた前東京都知事の舛添要一氏が「報復だろう。フランスと変わらない。政治的な意図を感じる」と述べると、王氏は中国国内の反応について触れ「ファーウェイの副会長が飛行機の乗り換えの際に逮捕されたことは、中国国内では“司法を使った外交戦争”と考えられている。であれば、こっちもやりますよという発想は、民間でも政府でもある」と説明。また中国国内における麻薬犯罪に対する認識について「毎年約800件の死刑が執行されており、そのうち150件ほどが麻薬犯罪絡み。世界的に見ても、中国は麻薬犯罪に対して最も厳しい国の一つ」と話す一方、「過去にアヘン戦争を経験した中国では、麻薬は“中華民族を滅ぼす”重大な行為として厳罰が適用されるが、残念なことに麻薬犯罪率はむしろ増えている」とも明かした。
ちなみに中国の死刑執行方法だが、1997年までは銃殺で心臓か頭を一撃。その後、1997年3月からは注射による毒殺も採用されている。その選択方法は地方または犯罪の種類によって異なり、中には本人の希望もあるという。このカナダ人男性については今後、控訴審、さらに最高裁での強化手続きがあるため、死刑が確実に執行されるわけではないと補足した王氏だったが、「このままいけば執行される可能性が高い」と言及。しかし、即時執行ではなく、2年の猶予付きでの執行となる見通しを示した。
その説明に対して舛添氏が「政治的、外交的な取引の道具に使うことも考えられますよね?」と食い下がると、王氏は「おそらくそれを考慮する」と答え「ファーウェイの副会長がカナダの法廷に出廷したとき、手錠だけでなく足かせもつけられていた。その様子は中国でも放送され、『テロ犯罪、殺人犯罪ではなく、経済関係なのになぜそこまでやるのか』と中国の国民はかなり怒っている。報復の世論が出来上がっている」と続けた。
スタジオの緊張状態を察した王氏が「ただ日本人は、軍事施設に近づいたり、写真を撮ったりしなければ安全ですよ」とフォローすると「ファーウェイ製品を持って中国に行ったら歓迎された」と嬉しそうに明かした舛添氏。しかし、「“台湾独立バンザイ”と言ったら3分以内で捕まえに来ますよ」と中国国内での危険性を指摘することも忘れなかった。
(C)AbemaTV
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