1月27日の修斗・後楽園ホール大会で、運命的とも言えるベテラン対決が実現した。
前田吉朗vs清水清隆。フライ級世界王座戦線において重要な一戦であり、エモーショナルなマッチメイクでもあった。
前田は38歳。パンクラスでフェザー級、DEEPでバンタム級タイトルを獲得した日本軽量級の先駆者の一人だ。爆発的な打撃を武器に、PRIDEなどビッグイベントに出場した経験もある。対する34歳の清水も元パンクラス王者。長くフライ級に君臨し続けてきた。一時は連敗、王座も返上したが本格的に修斗に戦場を移すと復活。粘り強くテクニカルな闘いぶりに一発で倒せる打撃も加わり、戦績も上がってきた。
前田、清水とも2連勝中、ランキングは世界2位と4位。元パンクラス王者同士が修斗の世界王座を目指して対戦するのは避けられない流れだった。しかし前田はここ数年、清水が所属するTRIBE TOKYO MMAでの出稽古で力をつけてきた。2人は練習仲間であり、言ってみれば“兄弟分”。ファンにとっても複雑な心境になる試合であり、非情になり切れるかどうかが勝負のポイントだと思われた。
そして試合は、まさに“非情な結末”を迎える。打撃戦の中、押し気味だった前田が1ラウンド後半にラッシュ。しかしそこに清水のカウンターが直撃する。倒れ込んだ前田に追撃のパウンドを浴びせ、清水が劇的なKO勝ちを収めた。
試合後の清水は「前田吉朗、最高だよ!」と仲間に戻ってマイク。さらに「チャンピオン、いたら出てきてください」と世界王者の扇久保博正をケージに呼び出した。もちろん目的はタイトル挑戦だ。日本トップレベルの実力を誇る扇久保だが、UFCとはギリギリのところで契約できず、RIZINでは堀口恭司に判定負け。そんな扇久保を、清水は「天下を取り損なった男」と長州力ばりに皮肉った。
しかし、もちろんその実力は認めるところ。すぐさま「よろしくお願いします」と頭を下げて対戦を表明。これに扇久保も「5月6日、やりましょう」。後楽園ホールで開催される、修斗30周年記念大会でのタイトルマッチが濃厚になった。扇久保も豊富なキャリアを持つ選手であり、清水同様、今が円熟期にあると言える。ただ清水は勢いに乗っているだけでなく前田に勝って前進したというドラマ性も。日本を代表する選手たちによる世界王座戦、正式発表を待ちたい。
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