厚生労働省の不正統計問題で、第三者委員会による聞き取り調査のうち約7割が、委員会のメンバーではなく厚労省の職員のみで行っていたことがわかった。
厚労省は聞き取り対象37人のうち、幹部級など20人には有識者が聞き取りを行ったとしていたが、実際は12人だったという。残りの25人は職員のみで聞き取りを行っていた。根本匠厚労大臣は29日、これまでの答弁を訂正し「ヒアリングの人数について、合計12名と答弁すべきだったところ合計20名であるなど謝った答弁があった。大変遺憾だ」と述べた。
また、部局長級の職員らの一部ヒアリングに厚労省の定塚由美子官房長らが出席していたことも疑問視されている。これについて定塚官房長は「私たちがいることでもっと聞き出せるのではないかと思っていた」と説明した一方、「特別観察委員会の第三者性に疑念を持たれることになり申し訳ない。追加調査にも人事課職員は同席しているが、記録など事務的な作業に徹している」として、第三者性には問題がない考えを示した。
不正統計問題で起こった更なる不備について、政治学者で東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は問題点を次のように指摘する。
「厚労省の職員のみの聞き取りでは第三者性に疑問符がつくということで、特別観察委員会のメンバーが追加で聞き取りをして正当性を持たせようとしている。そもそも、それをわかって最初に報告した特別観察委員会の第三者性は本当にあるのか。こういう調査を行うにあたってどこが勘どころなのかきちんとわかっているのか。第三者が調査するから意味があるのであって、中にいる人が聞いても意味がないという感覚が欠如している人が委員会にいる」
この特別観察委員会の委員長を務めるのは樋口美雄氏。樋口氏は、厚労省が所管する独立行政法人労働政策研究・研修機構の理事長も努めている。それを踏まえ佐藤氏は「これは本当に第三者性があって、専門性がある委員会が行っているものだと我々は信じられるのか。そこが大きな焦点になっている。これから追加報告が出てくるが、恐らくそれで終わりにはならない。また問題が出てくることになりかねない状況」と懸念を示した。
野党は根本大臣の責任も追求しているが、どのような幕引きになることが予想されるか。佐藤氏は「安倍政権としては支持率もそれなりにあるし、安倍総理が自身も根本大臣も辞めないと立場をはっきりさせている。しかし、官僚のヘッドを政治家が務めている以上、政治家が責任をとることは大事。根本大臣は『遺憾だ』といっていたがこれはニュアンスが広い表現で、自分の責任でもあるから謝るという態度は行政の一部局の長として当然のことだと思う」と指摘した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)