麻雀ファンの中で、そのレベルの大きな分岐点と言われるのが攻守のバランスだ。アマチュアであれば好形かつ高打点でテンパイが入れば、喜んで「リーチ!」と発声したいところだが、トッププロが集まる麻雀プロリーグ「Mリーグ」では、そうはいかない。ちょっとした隙が手痛い失点につながるからだ。EX風林火山の勝又健志(連盟)が見せたリーチに行かない我慢のダマテンは、異名である“麻雀IQ220”と呼ばれるにふさわしい、すべてのリスクを考えてのものだった。
麻雀ニュース番組「熱闘!Mリーグ」の名物コーナーで、芸人最強雀士と呼ばれるインスタントジョンソン・じゃいの打牌解説「じゃいの眼」で、1月27日回では、この勝又の戦いぶりが紹介された。毎回、この企画のために、週4日徹夜して作業するじゃいだが、今回においては、紹介した勝又のダマテンの意図が分からず、ついに本人に確認するという理解困難なレベルだった。
1月18日の2回戦、東4局2本場。11巡目で勝又にテンパイが入った。4・7索であれば、タンヤオ・赤でアガれる1・4・7索待ち。ただ、ここでは守備面、さらには高目への変化を見越して、リーチに行かずダマテンに構えた。すると直後にKONAMI麻雀格闘倶楽部の佐々木寿人(連盟)から二・五万待ちのリーチが。このリーチ後に勝又が引いてきたのが、なんと五万。先にリーチをしていれば、佐々木の追っかけリーチに一発で撃ち取られていたところを見事に回避した。
五万を引いたことで平和が完成し、1・4・7索の3面張でリーチと行きたいところだが、勝又はここでもダマテンをキープ。最終的には1索をツモって、ツモ・平和・赤でアガったが、アガリ点以上にこのダマテンの守備力こそが、Mリーガーの実力を見せるところだった。
じゃいが勝又本人に、このダマテンの理由を聞いたところ、リーチが入った佐々木だけでなく、親でトップ目だったセガサミーフェニックス・茅森早香(最高位戦)も警戒しての選択だったという。茅森の捨て牌を確認すると、4巡目で安牌と見られる中を手出し。さらに6巡目に7索、7巡目に6筒と手出しで切ったところから、テンパイが近いと感じていた。この様子を見て、警戒したのは2・3・4か、3・4・5あたりの三色同順。ダマテンをキープしたことで、仮に各種の2~5あたりを引いた際には、別の牌を切ってテンパイをキープする形を整えていた。
役満をはじめ、大きな点数が飛び出すことに目が行きがちなところだが、相手にアガリを許さずに、自分がアガったことを考えれば、その差し引きは見た目のアガリ点数よりも大きなもの。まさにプロの技が光った瞬間だった。
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