自動運転に欠かせない先端技術「ダイナミックマップ」とは?日本での自動運転実用化には課題も
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 ドラマでも注目を集めた自動運転の農業用トラクター。人間の代わりに機械が自動で作業してくれる、そんな夢のような世界は今や現実のものになっている。農機メーカーとして国内トップを走るクボタが開発した自動運転農業トラクター・アグリロボは、無人で農作業を行う"第1次産業の救世主"、まさに「リアル下町ロケット」だ。

 31日放送のAbemaTV『AbemaPrime』は、自動運転の技術開発の現場を取材した。

 自動運転に必要な3つの要素が、「認知」「判断」「操作」だ。認知は、人間では「視覚・聴覚」にあたるもので、自動運転になるとカメラやセンサー、認知する基準となる地図などのことだ。判断は、人間なら「脳」に当たる部分で、自動運転ではAI・人工知能が判断する。操作は人間だと手やハンドル操作のことで、自動運転では制御システムがハンドル・ブレーキを制御する。例えば走行中に歩行者を発見すると徐々にスピードを落とし、横断歩道の手前でゆっくりストップするという具合に、自動運転車は、車の周りに取り付けたレーダーやセンサー、カメラなどで周囲の情報を分析、それをAIが判断しながらハンドルやブレーキに指令を出すという仕組みになっている。

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 1月15日、静岡県で行われていたのはコンチネンタル社が開発したバスタイプの自動運転車両による自動運転の実証実験だ。ここに欠かせない技術が「ダイナミックマップ」だ。スマートフォンのGPS機能で現在地を確認する時、自分のいる位置が違っていて迷子になったという経験はないだろうか。これが自動運転車だったとしたら、わずかなズレでも事故につながってしまう危険性がある。それを解決するため、「自分の車の現在地がどこか」という情報を、数センチ単位の超高精度に特定するための地図をベースに、刻々と変化する事故や工事の情報、渋滞や歩行者の動きなどをプラスしている、いわば“リアルタイム地図”だ。

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 ダイナミックマップ基盤株式会社の藤尾秀樹氏は、この分野での日本の競争力について「高速道路が全国で約3万kmあるが、そのうち約2万6000kmを弊社の方で整備していて、今年度中には完了する。さらに地図を更新していくことについても検討が進んでいる。計測車両でデータを取っていくのには非常にお金がかかるし、安全性に大きく貢献するものになるので、ある程度共通のルールを決めないといけない。そこでオールジャパンで効率よく地図を作っていこうという取り組みに皆さんが賛同している」と話す。

 コンチネンタル・オートモーティブ社の浅井祥朋氏は「横断歩道の位置を地図で取得し、歩行者がいれば道を譲ってやり過ごし、再発進をするというのを自動で行ったり、対向車が来た時に、それが本当に車線を走っているのか、あるいは横から飛び出してきているのかなどを地図と照合したりする」と話す。

 現在、ダイナミックマップには、トヨタ・スズキ・日産・三菱・いすゞや、ゼンリン・パスコ・アイサンテクノロジーなど、国内の企業がこぞって出資しているという。

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 この「ダイナミックマップ」の測量を担当する株式会社PASCO・道路情報部部長の北川知秀氏は「計測車両を走らせ、空間情報というか、地物を"点群"として集めてくるような作業になる」と説明する。通常、広い範囲の地図を作成する場合、ヘリコプターで空から撮影、実際に現地にも足を運んで測量を行うなど、かなり手間のかかる作業となるが、ダイナミックマップの地図作りは、特殊な車両で道路を走るだけで一気に細かい地図情報が得られるのだという。

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 その仕組みは、まず3台のGPSアンテナで正確な位置情報をキャッチし、特殊な計測器で道路の傾きも検知。そして前後・上下に設置されたレーザースキャナーが1秒あたり2万7000回発信、跳ね返る"点"を認識することで、車から周りの障害物・看板・車線などの距離や位置などを正確に把握するというものだ。「自動運転の誤差の範囲としては、白線の幅1本分、大体25センチあればいいということになっている」と北川氏。

 こうして集められたデータがダイナミックマップのベースとなり、そこに工事情報や渋滞情報など、リアルタイムで変化する情報が加わって地図になるのだ。

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 ダイナミックマップ基盤株式会社・営業部営業二課課長の和田智靖氏は、「車の周辺はセンサーが感知しているが、センサーが届かない範囲、カーブの先がどうなっているか、この先勾配がどうなっているかは地図が補完しているので、自動運転システムの負荷軽減に寄与できる」と語った。

■日本での実用化に向け残る課題は

 日本唯一の自動運転専門ウェブメディア「自動運転ラボ」編集長・下山哲平氏は「日本にはトヨタという世界にも誇れる大きい会社があり、技術力そのものは十二分に世界に誇れるレベル」だという。自動運転技術の高さについては、世界共通のレベルが決められており、レベル0は運転手が全て操作する普通の車、レベル1がハンドル操作、ブレーキ・アクセルどちらかを人間がサポート、レベル2はハンドル操作、ブレーキ・アクセルの両方をサポート、レベル3以降は車が全てを操作するという基準になっている。下山氏は「市販されているという意味でいうと、日本はまだレベル2以前の段階。ただ、技術的にはレベル2、レベル4の部分までどんどん進んでいるし、海外も民間人が乗って公道を走るという意味でいうと、レベル3以上はどこも認められていない」。

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 他方、自動運転の実用化にとって重要なのが、法整備だ。

 「日本は法律など、社会の許容性という部分では、中国などのアグレッシブな国と比べた時に遅れがちな状況だと言える。特に日本はコンピューターや機械、ロボットに完璧を求めるので、人が運転しているよりもいい状態というか、悲惨な事故が1件起きてしまえば、間違いなく自動運転そのものが危機になるということがありえる」(下山氏)。

 下山氏が指摘するとおり、中国では自動運転車などを開発するエンジニアが住み、実証実験などを行っている「自動運転シティ」が出現している。配送ロボや無人店舗などもあり、別の地区では建物・信号・街灯など街全体にセンサーを設置、歩行者などを検知して街全体で安全を管理しているという。また、アメリカでは、(どちらもGoogle系自動運転開発企業Waymoが行なっているのもの)車が主体となって全ての動作を行うレベル4の自動運転タクシーの運行が開始している。有料商用サービスとして去年12月に開始しており、安全のため人が同乗しながら運行しているという。また、フィアット・クライスラー・ジャガーなどから車両を調達し、レベル4の自動運転車両に改造するなど、自動運転車を量産する工場建設も行っている。

 下山氏は「アメリカ、中国はまずやってみる。世界でトップを取るという意気込みで国をあげてやっているので、法律ができてなくても、特区とかこの領域だけ特別に許可を与えるとか、企業にこのエリアであれば走らせてもいいという許可を与えるとか、柔軟性がすごくある」話していた。


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