ドラマや映画などに引っ張りだこの俳優、新井浩文こと朴慶培容疑者の逮捕に伴い、過去の出演作も含めた放送中止や配信停止の動きが広がっている。
テレビ東京が『このマンガがすごい!』のBlu-rayを予定通り発売するとした一方、NHKオンデマンドは『真田丸』など10作品を販売停止に、4日にフジテレビ系で再放送された『プライド』第10話ではオープニングで新井容疑者の名前にモザイク処理が施され、「何でパクられたの?初めて?ブタ箱入るの」と言うセリフのある出演シーンなどが全てカットされた。また、CSの映画チャンネルNECOは「出演者が法令違反容疑で逮捕されたことを重く受け止め、番組を変更して放送させて頂きます」として『銀魂』『葛城事件』『名前のない女たち』の放送中止を発表。今年6月に公開を予定していた映画『台風家族』は、配給会社のキノフィルムズが公式Twitter上で公開延期を発表した。
同じ作品であっても対応が分かれるものもある。映画『星ガ丘ワンダーランド』『明烏 あけがらす』はWOWOWが番組を差し替えたのに対し、Amazon Prime Videoは配信を続けている。レンタル業界ではTSUTAYAが「特に貸出し中止の予定はなし(メーカーからの要望あれば検討)」としている一方、ゲオは「商品撤去の予定はないが、社会的影響度を鑑みて検討」とコメントしている。
こうした状況を受け、Twitter上には「作品をお蔵入りさせるのだけは勘弁してほしい」「作品に罪はない」と、作品が見られなくなることに不安や疑問の声も上がっている。コラムニストの小田嶋隆氏も「こういうのって、NHKあたりが先陣切ってこういう措置を発表するから、ほかが追随せざるを得なくなる気がするのだが」とTweetした。
5日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した。ケンドーコバヤシは「僕も気持ちは"作品に罪はない"という意見と同じだ。僕は役者でも何でもないが、少なからず映画やドラマに出させてもらってきた。現場の出演者たちは"監督、好きに使ってください"、"見て頂く人のためだ"、"役者なんて人形だ"という空気だ。もちろん問題を起こした人を積極的に使えと言っているわけではない。本人と役を重ねて見る人はいるのだろうか」とコメント。
一方、漫画家の峰なゆか氏は「私は性犯罪者が出ている作品は発禁で当然だと思っている。監督や脚本家のことを考えると、という意見もあるが、最初に考えるべきは被害者やそのご家族だ。ただでさえセカンドレイプが横行している今、あらゆる性犯罪の被害者の方々が軽んじられていると思うし、加害者が堂々と表に出るようになれば、被害を訴えにくい空気もできあがってしまう。出す・出さないをどうするとかを議論すること自体あり得ない。厳しく対処していくべき」と主張。
小川彩佳アナウンサーは「今回まだ容疑の段階ではあるが、もし事実であったならば、心の傷、体の傷はいかばかりかと思う。そんな中でセカンドレイプが生じかねないと考えると、この被害者の方だけの問題ではないと思うし、多くの女性の尊厳を傷つけると思う」、タレントの山田菜々も「好きなドラマもあったので、見られなくなるのは単純に寂しいなと思ったが、出る側にはそこまでの責任がある。見られなくなっても当然と言われたら当然だと思った」と語った。
働き方評論家の常見陽平氏は「強制的に目に入るものなのか、という問題もある。最近"差別ではないか"とか、女性など、"特定の人を傷つけないか"などと指摘されてCMが炎上するが、CMは強制的に目に入るものなので、クライアント筋も降りる。ただ、過去の作品の多くは自分の意思がなければ見られない。新井容疑者は主役級から名脇役まで色々こなしているから、関係する作品は130くらいに上るとも報じられている。もしそれだけの作品が止まれば、中古市場で不当に値段が上がり、見たいと思った人々が作品を楽しめなくなるということも考えられる。今回の各社の判断も基準がバラバラだと思う。容疑段階なのか、罪が確定した段階なのか、不倫はどうなのか、借金はどうなのかとか。あるいは俳優が政治家になった後、汚職をしたらどうなのか…など、責任のとり方をどう決めていくのか。被害者と視聴者含めた納得感を踏まえ、どう落とし所を持っていくかが気になるところだ」とコメントした。
リディラバ代表の安部敏樹氏は「当事者の方や当事者と同じような経験をした人たちが映像を見ることでフラッシュバックしたり、セカンドレイプだと感じたりすることがある。それは経験をしていない人が簡単に語れるレベルではない。その人たちを守るという観点では、厳しめに自粛していくのはやむを得ない。ただ、そのラインを引くのかという時に、宣伝もされておらず、見たいと思った人しか見ることができないものまで止める必要はないと思う。また、何となく"禊が済んだ"ということで、暗黙の了解でOKになることもあると思うし、人によって扱いが違うのは良くない」と指摘していた。
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