2月3日、札幌・北海きたえーるで開催された新日本プロレス「THE NEW BEGINNING in SAPPORO」で、IWGPインターコンチネンタル選手権(IC)王者・内藤哲也が挑戦者のタイチを退け防衛に成功した。年明けの風物詩1.4東京ドーム大会で、クリス・ジェリコとの壮絶なノーDQマッチを制し、昨年から続いたストーリーに終止符を打った内藤に対し、ドーム大会にエントリーされなかったタイチが、その鬱憤を晴らすべく翌日の1.5大会より仕掛けた新たな因縁物語は、この1戦で終止符を打つばかりか、長き闘争の歴史の幕開けとなりそうだ。
内藤の入場時に、花道でタイチの所属する鈴木軍の飯塚高史がラダー(脚立)で背後から襲撃、それに便乗したタイチが、ブラックメフィストでトドメをさす波乱含みの展開。一旦控室でチェックを受けた内藤はドクターストップによる無効試合という裁定を押し退けリングに上がった。
冒頭の飯塚の介入が水を差す形とはなったが、試合自体はヘビー級転校からちょうど1年を迎えるタイチの実力を再認識する場面も数多くみられた。師匠・川田利明を継承するストレッチプラム、高角度のデンジャラスバックドロップ、ジャンピングハイキックなど局面を左右しそうな迫力ある大技を放ち内藤をあと一歩まで追い込み、ベルトでの殴打、急所攻撃、イス攻撃、さらには2度目の飯塚の介入などなりふり構わず攻勢をかける。内藤もタイチのマイクスタンドを奪った攻撃、レフェリー突き飛ばし、急所攻撃など重要な場面では狡猾さをみせ、ディステーノへ持ち込むフィニッシュの流れでは珍しいバレンティアという大技も披露した。
タイチが1.5後楽園大会で内藤を、前日内藤自身がジェリコに放った映し鏡のようにICのベルトでの殴打して幕を開けた1月の抗争。その後のタッグ戦などシリーズを通しロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン勢と鈴木軍との仁義なき戦いがヒートアップする中、メインカードとして組まれたのが札幌での内藤vsタイチのIC戦だった。結果は圧倒的劣勢を跳ね返した内藤を含むタイトル戦3連勝でL・I・Jの完勝だったが、ユニット間の抗争を越えた部分で、この両選手のどこか抱える共通点と、今後の進むべき道を示唆するような戦いに思えた。
試合後に内藤は「(タイチの)何かしようという必死さは伝わってきたが、もう1歩、踏み出す勇気を見せてほしい」とコメントしたが、一時期レスラーの息詰まりを克服した内藤ならではの本心からの言葉だろう。
2013年のG1覇者になったにも関わらず、2014年にファン投票を受け、1.4のメイン・カード剥奪され屈辱にまみれた内藤は、メキシコから復帰後の2015年、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(L・I・J)を結成し団体内でイニシアチブを握るために奔走してきた。
L・I・J結成直後の内藤は事あるごとに自身の冷遇とオカダカズチカ優遇を理由に挙げ会社批判を続けてきたが、その姿は昨年のG1のエントリーから外され、その怒りを糧にNEVER無差別級王座につくも陥落、リマッチ権を不可解な形で奪われ、さらに1.4不参加と、存在感を示しながらも冷遇され続けている、現在のタイチの姿と重なるものがある。表現はどうであれ、内藤の発言にはタイチに対するシンパシーのようなものを感じる一方、反目しながらも、内藤の一言でヘビー級に転向し、事あるごとにターゲットに挙げてきたタイチにも共鳴する何かがあるのだろう。
その後、自らの制御不能を貫き、現在の高い支持につなげた内藤とはまた違った驚きをもってファンに訴求する必要はあるが、2019年さらに新日本のリング全体を巻き込むタイチ流のさらなるムーブメントを起こすことが内藤の言うところの「もう1歩、踏み出す勇気」ではないだろうか。
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