2010年頃から急増し、約1万もアイドルが活動しているといわれる日本。しかしメンバーの卒業やグループの解散も相次ぎ、昨年も、判明しているだけで600人以上がアイドルを辞めたという。
彼女たちはその後、何をしているのだろうか。6日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、"元アイドル"たちにスポットを当て、その"セカンドキャリア"について、プロインタビュアーの吉田豪氏と一緒に考えた。
■ステージに立っていたからこそできる振り付け
槙田紗子さん(25)が「PASSPO☆」の初期メンバーとして2009年にデビューしたのは、中学3年生の時のこと。グループはメジャーデビューシングルでオリコン1位を獲得するなど、アイドル戦国時代を代表する存在になった(昨年9月に解散)。「"ポストAKB"と言われるグループが出始めたタイミングでした。始めた時は5年で武道館に行けるんじゃないかと思っていた。でも、思ったより時間がかかっているなと。このまま何年間か諦めず頑張るのか。みんなは就職していくけど、自分は部活もやっていないし、ちゃんと勉強もしていないし、何もできないなって。でもとりあえず辞めないと何も出てこないなって思って辞めてしまった」。
こうした2015年に6年間のアイドル生活にピリオドを打った槙田さんだったが、所属事務所に残っても仕事は激減。アルバイト生活を余儀なくされるが、晴れ舞台とのギャップに長続きすることはなかったという。
「毎日同じ場所に行って、毎日同じ人に会って、毎日同じ時間の電車に乗って、というのが無理だと思ってしまって。元アイドルならみんな陥ると思う。働けないというのはクズだと思う。でも割り切って親に借金して、またクズになる。途中で気づいたのは、普通に働けないなら、普通じゃない仕事をするべきなんだなと」。
そこで槙田さんが選んだのが、振付師の道だった。もともとダンスが得意で、PASSPO☆時代には振付を担当することもあったという。「ステージに立っていると、ファンがマネしているとわかる。ここで手を前に出すと前の人にぶつかってフリコピしにくいな、上にしようとか。アイドルをやっていてよかったなと思う」。元アイドルとしての強みを活かし、今では6つのアイドルグループの振付を担当する。
槙田さんに「アイドルに戻りたくないか」と尋ねてみると、「一人の時間を3年くらい過ごしているので、もうちょっとグループはできない。(ソロ活動も)もういいです、いいです(笑)」と笑顔で話していた。
■「裏方に回ってからの方が、ファンがカッコよく見えた」
「アイドルの時も自分たちで貼っていたので、慣れたものです」と、舞台上にバミリのテープを貼りながら話すのは、声優アイドルユニットのプロデューサー・水口ルイズさん(33)だ。コンセプトカフェから誕生した「アフィリア・サーガ」のリーダーとして8年間活動していたが、「25、26歳とかになると、"私、この後どうやって生きていくんだろう"と、ふと冷静になることがあった」と、将来に不安を抱くようになっていったという。
そこで所属事務所「MAGES.」の志倉千代丸代表に相談したところ、「今までアイドルをやっていたキャリアは無駄ではないから、就職までサポートしよう」と言われ、30歳を迎えた3年前にステージを降り、アイドルの育成やマネジメントを担当するプロデューサーへと転身した。
ゲームや声優など様々な事業を展開し、元アイドルの実績に合う部署への就職を支援しているMAGES.で水口さんがプロデュースするのが、「ピュアリーモンスター」だ。現役メンバーは水口さんについて「お客さんへの対応・微笑みがアイドルですよね(笑)」(桐生朱音)、「かわいいですよ(笑)褒められると倍嬉しい」(柳木みり)と話す。
水口さんも「裏方に回ってからの方が、ファンがカッコよく見えた。"俺はこれだけのことをやったんだよ!"みたいなアピールもせず、メンバーを応援しているから。これから元アイドルがもっと裏方に参入してくるのが想像できる。元アイドルだからこそ生まれアイデアもある。常に進化するアイドルシーンを、今度は私たちが作っていく側かなと思っている」と話していた。
先月13日、アイドルがまた一人、裏方へ転身した。"原宿発"を掲げるアイドルグループ「神宿」の緑を担当、4年間にわたって活動してきた「神宿」の関口なほさん(20)だ。
学業とアイドル活動を両立させ、現在は大学で福祉の勉強をしている。「家族に障害を持っている子がいるので、この道を選んだ。勉強していることを活かしてサポートしたい」。一線を退くことを決めたが、共に歩んだ神宿に対しても何かできないかと考え、裏方として関わっていくことにした。「4年以上もやってきたし、メンバーも大切なので、これで終わりにするのは嫌だなと思った」。最初の仕事は、新メンバーオーディションの審査員だという。裏方としての活動は始まったばかりだ。
■「アイドルをやってよかったと心から思う」
「かけがえのない経験をさせて頂いたし、今となってはアイドルをやってよかったと心から思う」。そう話すのは、2015年に解散した人気グループ「アイドリング!!!」の元メンバー・遠藤舞さん(30)だ。
歌うことは好きだったが、人前に出るのが好きではなく、アイドルになりたいと思ったことは一度もなかったという遠藤さんだが、事務所のスカウトを受けたことをきっかけにオーディションを受け、何もわからないまま"NOと言えずに"合格、2006年に創設デビューすることになった活動中も「アイドルに向いていない」と思い続けていたが、持ち前の責任感からグループのリーダーも務めることになる。しかし「25歳くらいが限界かなという線引きをしていたし、芸能界を続けるとしても30歳くらいまでかな、となんとなく考えていた」といい、2014年に「迷いなく」グループを卒業、ソロ歌手としての活動をスタートさせる。さらに一昨年には芸能界からも引退、現在は女性向けのボイストレーナー、レコーディングの仮歌シンガーとして活動している。
「現役の頃から続けさせて頂いているツイッターに、今もファンの方からリプライを頂くことがあって、満たされている」という遠藤さん。アイドルのセカンドキャリアについて、次のように語っていた。
「アイドルは何者でもない未熟な感じというイメージを持たれているかもしれないが、その分、演技、歌、ダンス、人とのコミュニケーションもバラエティも、一通り経験させてもらえる。そこで好きなものや得意なものを試しながらキャリアを考えていけるのはいいことかもしれない。ただ、例えば女優として舞台に上がった時に"アイドル上がりだからこういうもんでしょ"、と最初からレッテルを貼られ、歯がゆい思いをしたという話を聞いたりもする。そんな中で活動の中で自分の地位を築けた人、好きなことや特技を褒められ、次のキャリアを考えればいいと思うが、何も築けずに終わってしまうと、その後は難しくなってしまうのかな。同時に社会経験を積むのが難しい面もある。プライベートも制限されるので、そういうジレンマも抱えていると思う」。
■吉田豪氏「世界の流れに合わせて変わりつつある」
ジャーナリストの堀潤氏は「普通の会社組織の場合は人事部があり、何年後くらいにはどんなキャリアプランを、ということを考えて育成する。しかしアイドルの現場は個々人に任されているので、ある子はスキルを身に付けられるが、ある子は何も発見できないで終わってしまう。その一方、企画・運営するところが甘い果実を吸い取って、あとは放り出すという無責任な状況もあると思う。セカンドキャリアということまで考えるべきタイミングに来ているのではないか」とした上で、NGT48で起きた暴行問題に触れ「ある意味で従業員のような彼女たちを守らないし、守ると言っても中途半端。事務所や管理者の責任はどうなのか」と苦言を呈した。
アイドル業界にも精通する吉田豪氏は「最近はプレーヤーでありながらマネジメントもやるみたいなアイドルも増えてきていて、あまり事務所に頼らないような場合も増えてきている。ただ、現役の時に鍛えられるのは基本的にはダンスと歌だけで、それらはセカンドキャリアでは全然生きない。役者やバラエティを目指す人も多いが、そういうスキルを鍛えるためのノウハウがない」と指摘する。
また、堀潤氏の指摘についても「昔のように、アイドルとマネージャーが1対1で向き合っていた時代とは全然違う。でも、日本のアイドルが世界に進出するためには、海外に合わせないといけない。恋愛禁止も明らかに"人権無視"として叩かれる。最近では18歳未満の場合、水着はやらないようにしようという流れも出てきている。世界の流れに合わせて、いろいろな面で変わっていくのではないか」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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