
日本時間6日に行われた一般教書演説で、トランプ大統領はメキシコとの国境の壁の必要性を訴えた。
壁建設の費用をめぐっては、民主党と激しく対立し、政府機関が一時閉鎖する事態にまで発展。その後、トランプ大統領が折れる形で、壁の建設費用を含まない“つなぎ予算”で合意が交わされている。演説でトランプ大統領は、両親を不法移民に殺害された女性をゲストとして招き、壁の建設を絶対に諦めない姿勢を強調した。
「数えきれないほどのアメリカ人が不法入国した犯罪者に殺されている。彼女の80代の両親は3週間前に不法入国した強盗に射殺された。今日は孫とひ孫もここに来ている。立ってください。みんな彼らの痛みをわかってほしい」
壁建設の費用は約6000億円ともされるが、「物理的な壁を建設するよりももっと簡単なやり方が注目されている」と指摘するのは『WIRED』日本版編集長の松島倫明氏。

WIREDでは、VRと監視ツールを組み合わせた国境警備システム「ラティス」を取材。レーダーや通信用アンテナ、高感度カメラを備えた高さ10mの移動可能なタワーは、人工知能で人の動きやクルマ、動物などを特定し、VRで監視することもできる“デジタルな壁”だという。テキサス州での試験運用では、10週間で55人の不法入国者を拘束。コンクリート製の物理的な壁よりずっと安価で設置できるということだ。
「開発したのは『オキュラスリフト』を作ったパマー・ラッキー。かなり風変わりな若者で、彼が次に取り組んでいるのがスマートボーダー。実際に壁をつくる代わりに国境の役割を担保できるということで注目されている」と説明する松島氏。

一方でテクノロジーによって“デジタルな壁”が実現してもそれが人間相手に使われることを忘れてはならないとし「AIが“壁”を作ることはできても“文脈”をつめることができるのは人間だけ。どの人を排除して、どの人を排除しないのかという選別には慎重にならないといけない。さらにAI、VR、センサーを使って人を特定して、この人は入れる・入れないと区別できるような社会が実現すると、あらゆる都市で“見えない壁”をつくれるようになる。トランプ大統領は味方と敵をつくって危機感を煽るのが常套手段だが、そういった意味の“壁”をテクノロジーが助長する側面もある。人を特定できても人柄までは見えないので、そうした部分をどう包摂していくかが問われている事例だと思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)





