「歴代最強馬は?」と聞かれればディープインパクト、オルフェーヴル、キングカメハメハ、グラスワンダー……と様々な名前が挙げられるだろう。テイエムオペラオーもその1つ。
馬場を選ばずに力を発揮し、長距離を苦にしないスタミナ、そして何よりも馬群での勝負根性に光るものがあり、皐月賞、天皇賞・春、秋、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念などG1で7勝を挙げた名馬だ。
先行・差しという特殊な脚質だが、スタートで出遅れても差し切る力強さこそテイエムオペラオーの魅力。そんな“覇王”テイエムオペラオーのように「差し切るフットサル」を体現するのが競馬の街・府中を代表する立川・府中アスレティックFCだ。
歴代最強のメンバーで挑むプレーオフ
立川・府中はとにかくスタートが悪い。勝てる試合で引き分けに終わり、引き分けに持ち込んだ試合で負けるなど、勝ち点を落としてしまう。しかしシーズンも中盤に入ると上位に食い込んでいき、最終的にはプレーオフ出場権を獲得してしまう。今季もそういった「差し馬」的な戦い方でリーグ3位に食い込んだ。
試合もまさに「差し馬」そのもの。記憶に新しいのがリーグ戦の第30節、ホーム最終戦となったエスポラーダ北海道戦。前半に先行される苦しい展開から逆転に持ち込むも、試合終盤に同点ゴールを許す。しかし、誰もが諦めかけた残り2秒に決勝ゴールを奪い見事に差し切ったのだ。
キャプテンを務める皆本晃はシュライカー大阪との準決勝、そして歴代最強と称えられる名古屋オーシャンズとの決勝に向けて「サプライズを起こす準備はできている」という。
33試合を戦うリーグ戦と1発勝負のプレーオフでは戦い方が違うことは周知の事実。皆本も「大阪に3連勝している事実、名古屋に3連敗している事実は関係ない」と言う。その中で「リーグ戦でやってきたことをぶつけるのではなく、勝つために手段を選ばずにやる。例えば名古屋に対しては、終盤になってこちらがリードしている状況を作り出せるかがポイント」。
これまでのスタイルだった「差し馬」のフットサルから「先行馬」のフットサルに変えることがリーグ制覇への1つのポイントだと明かした。それはテイエムオペラオーからキタサンブラックへの変化ともいえるだろう。
キタサンブラックは、テイエムオペラオーのようなスタミナを持ち、かつ爆発的なスピードを武器にスタートから一気に飛び出してゴールまで駆け抜ける「先行馬」で菊花賞、天皇賞・春、秋、ジャパンカップ、有馬記念などG1で7勝を挙げた名馬。通算獲得賞金ではテイエムオペラオーの18億3518万9000円を抜く18億7684万3000円で歴代1位に輝いた。立川・府中は今回のプレーオフで、まさにそういった「先行馬」のフットサルによる驚きを提供してくれるかもしれない。
そして彼らには負けられない理由がもう1つある。6シーズン指揮を執った谷本俊介監督の退任に加え、長くチームを支えた宮田義人、岡山洋介が今シーズン限りで現役を引退する。
皆本は「間違いなく1つのサイクルの終焉」と今回のプレーオフを位置付ける。32歳となり自身も現役生活が残り少ないと感じている中、「これだけのメンバーが揃って戦えるプレーオフはない。これがラストチャンス」とその言葉は力強い。
立川・府中のラストG1。名馬・キタサンブラックとなれるか注目だ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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