将棋の順位戦A級の最終戦、9回戦が3月1日に5局一斉に行われる。3期連続で名人の座を保持している佐藤天彦名人(31)への挑戦権を争う戦いだが、挑戦の可能性があるのは豊島将之二冠(28)、広瀬章人竜王(32)、羽生善治九段(48)の3人に絞られている。果たして挑戦権を勝ち取るのは、どの棋士か。
現在、最も有利な立場にいるのが豊島二冠。今年度、初タイトル奪取から一気に二冠になった実力者が、あと1勝すれば初の名人挑戦の権利を得る。7勝1敗と単独トップに立っており、久保利明九段(43)に勝利、8勝1敗となった時点で挑戦権確定。昨年は久保九段(当時王将)とトップタイで最終戦を迎えたものの、揃って敗れたことで史上最多6人によるプレーオフに。変則トーナメント1回戦から3連勝したものの、羽生九段(当時竜王)に敗れたため、昨期は最も多くA級で勝利を挙げながら挑戦権を逃す形になっただけに、なんとか勝利したいところだ。
ただ、この豊島二冠が最終戦で敗れて7勝2敗になると、その時点で2期連続でのプレーオフが確定する。6勝2敗で追う広瀬竜王と羽生九段が、最終戦で直接対決するからだ。必ずどちらかが7勝2敗となる。順位戦A級では、勝敗数が並んだ場合はプレーオフを行うため広瀬竜王、羽生九段は「豊島負け」という条件付きながら、最終戦に勝利を挙げることが、名人挑戦への望みをつなぐ唯一の道だ。まとめると、条件は以下のとおりになる。
豊島二冠が勝ち → 8勝1敗で豊島二冠が挑戦権獲得
豊島二冠が負け → 広瀬竜王と羽生九段の勝者とプレーオフ
AbemaTVで独自にアンケートをしたところ、1317票の回答が集まり、豊島二冠の勝利を予想する人が51%、羽生九段とのプレーオフが43%、広瀬竜王とのプレーオフが6%だった。
また、同時に残留争いも熾烈だ。降級2人のうち、既に阿久津主税八段(0勝8敗)の降級が決まっているが、2勝6敗の深浦康市九段がピンチ。3勝5敗には稲葉陽八段と三浦弘行九段がいるものの、深浦九段は前年成績を元にした順位が7位で、同2位の稲葉八段と勝敗で並んでも、順位で追い越せない。同8位の三浦九段が敗れ、ともに3勝6敗となった場合のみ、深浦九段が逆転で残留を決めることになる。名人挑戦、降級が一気に決まることから「将棋界の一番長い日」とも称させる一斉対局は、各棋士にとってどんな結末を迎えるか。持ち時間は各6時間。