10年以上にわたって国内外のタイトルを総なめしてきた“フットサル界の銀河系軍団”、名古屋オーシャンズのリーグ優勝が危うい状況だった。

 2月23日に行われたDUARIG Fリーグ2018/2019 ディビジョン1のプレーオフ決勝戦の第1戦でシュライカー大阪に2-3敗れてしまったのだ。彼らは昨シーズンから数えて、国内で47試合無敗、今シーズンのリーグ戦で1度も黒星を喫していない。敗戦は実に48試合ぶりのことだった。

 プレーオフは2戦の合計勝ち点で争われる。リーグ1位ながら、勝ち点も得失点も並んだ時に初めて、「リーグ上位が優勝」というアドバンテージを得られる。翌日の第2戦で引き分け以下なら王座を明け渡してしまう。まさに背水の。しかし彼らは、そんな追い詰められた表情を微塵も見せなかった。

レアル・マドリードとは毛色の異なる銀河系軍団

「私たちはチャンスをものにできませんでしたが、試合の主導権を握っていた印象はあります。敗れたことで不利な状況になりましたが、明日勝てば何も問題ないので、チームとしても焦ることはないです」

 第1戦を終えた後、ペドロ・コスタ監督は冷静にそう話した。名古屋の選手たちも「“80分”のゲームの半分が終わっただけ。明日勝てば優勝なので今日の敗戦は何も問題ない」と、全員が前を向いていた。

 明日勝てば問題ない――。たしかにそうなのだが、一度敗れた相手と翌日に再戦して勝つことは簡単ではない。しかし彼らの言葉には、強い説得力があった。

 33試合のレギュラーシーズンは28勝5分の無敗だったが、敗戦の危機は何度かあった。しかし、そのすべてにおいて、引き分けか勝利という結果を残した。逆境で見せる彼らの強さにはワケがあった。

 たとえば“元祖・銀河系軍団”レアル・マドリードをイメージしてもらえれば分かるように、最強の集団について回るイメージは「どこか殺伐としていて全員がストイック」。事実、名古屋もそんな時期があった。しかし3シーズン前、星龍太がキャプテンを務めるようになった頃から、その空気感は変わっていった。

「まずは雰囲気づくりを大切にしています。このチームは若手選手からベテラン選手、外国人選手もいるので、互いに話さないと意図や意思が伝わらない。ふざけるのも大事だし、外国人に変な日本語を覚えさせたり、僕らがポルトガル語を覚えたり。そうやって人と人との距離を短くすることを心掛けています」

 日本代表に常時呼ばれるようなベテランから育成組織出身の若手、ブラジル代表経験を持つ外国人選手。そんな個性派集団がまとまることで、チーム力はさらに高まった。チームを率いるのは現役時代、誰よりもうまいのに、誰よりも黒子に徹したペドロ・コスタ監督。星龍太が選手側から、コスタが監督側からフォア・ザ・チームの精神をチームに植え付けることで、全員が献身的に働ける土台が築かれていったのだ。

 しかし、1年ですべてが変わったわけではない。昨シーズンも、彼らは「団結力」を根底にして戦い、前年に逃していたリーグタイトルを取り戻した。そして今シーズンは、さらに上積みを加えた。大ケガで1年を棒に振ったペピータの復帰とバルドラール浦安で絶対的存在だった龍太の兄・翔太の加入だ。

「優勝したシーズンとほぼ同じメンバーでやれているので、すでに戦術が浸透しているところにペピータと兄の翔太が入りました。自分たちの戦いに自信を持てているので、試合中に相手の優位になったとしても、我慢して引き分けや逆転することができました」(星龍太)

 心技体を整えてリーグ戦をぶっちぎった彼らの言葉には説得力がある。

 その言葉どおり、プレーオフ第2戦は名古屋が3点を先制。残り4分を切り、優勝をほぼ手中に収めたかと思われたが、大阪のパワープレーにより残り3分40秒と3分29秒のわずかな間に2失点。快勝ムードから一転、同点に持ち込まれたら王座を明け渡してしまうという、厳しい状況に追い込まれた。

 だが、彼らのリバウンドメンタリティは、ホンモノだった。「明日勝てば問題ない」。彼らは団結力と、これまで何度も逆境を跳ね返してきた粘り強さでリードを守り切って3-2で勝利。この結果、2戦して1勝1敗、得失点も5-5で並び、アドバンテージを持つ名古屋がリーグタイトルを手にした。

「1年間、頑張ってきたことが大きなアドバンテージになった」。

 GK関口優志はそう振り返った。それぞれの選手が持つ強大な個の力。それらをキャプテンが束ね、監督が導くことで生まれた強烈な団結力。この2つの掛け合わせによって、名古屋は優勝できたのだ。

 そして「歴代最強」といわれる彼らは、今シーズン最後のタイトルを目指している。3月2日から、全日本フットサル選手権が始まる。負ければ即敗退のトーナメント、フットサル日本一を決める戦いだ。名古屋がこの大会で頂点に輝けば、彼らは史上初となる「2年連続国内3冠」の偉業を達成する。

 その可能性は十分にある。いやむしろ、その可能性がもっとも高い。これまでもこれからも、日本フットサルを先頭で引っ張り続ける最強チームが、新たな歴史を刻もうとしている――。

文・舞野隼大(SAL編集部)

(C)AbemaTV

Fリーグ 2018-2019 | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
Fリーグ 2018-2019 | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
Fリーグ 2018-2019等、15,000を超える番組を好きな時に何度でもお楽しみいただけます。
SPORTSチャンネル | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
SPORTSチャンネル | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
AbemaTVのSPORTSチャンネルで現在放送中の番組が無料で視聴できます。