先月3日、東京・後楽園ホールで行われた「RISE130」。その第11試合でRISEライト級1位であった秀樹(新宿レフティージム)をTKOで下し、第5代RISEライト級王座に就いた白鳥大珠(TEAM TEPPEN)。3R途中、秀樹の偶発的な負傷によるドクターストップということもあり、場内は騒然。観衆と同じく“完全決着”を望んでいた白鳥は試合後、マイクを手に取り「今日は僕の勝ちでいいですか? 初防衛戦は秀樹選手で決まりでお願いします」と話し、初防衛戦の相手に秀樹を指名することで、自らその場を沈めた。この勝利で白鳥は3月10日に行われる「RISE WORLD SERIES 2019 -61kg Tournament」への出場権を獲得。優勝賞金1000万円をかけ、一回戦でヘクター・サンチアゴと対戦することが決まっている。
秀樹との勝負については、アクシデント決着ばかりに注目が集まり、“双方にとって不運”な結末となったことは言うまでもない。では、同じサウスポー同士の戦いとなった一戦について、白鳥自身はどのように感じていたのだろうか。改めて本人に心境を、そして間近に迫ったトーナメントについて話を聞いた。
「サウスポー同士ということもあったが、相手の秀樹選手よりも距離をつかめていたので、思いの外、やりやすさを感じていた。後半にかけてパンチが入る確信があったので、3R以降、パンチで倒す組み立てを実行するつもりでいた矢先のアクシデント。それだけに自分としても煮え切らない結末でした」
白鳥の口を突いて出たのは、確かな手応えだった。三日月蹴りを効果的に使いながら相手との距離をとって攻撃を封じ、自分の距離を掴むことに成功していた白鳥は、勝利を確信していたことを明かした。では試合後、秀樹との間にどのようなやり取りがあったのか。そして、その時の秀樹の様子はどうだったのか。控室での会話について白鳥は次のように振り返った。
「リング上でも話しましたが『初防衛戦でやりましょう』と再度伝えると、『必ず這い上がって来るんで、機会があったらお願いします』という返事をもらいました。次やることになれば、お互い対策を練りやすいでしょうし、もっといい試合になると思っています」
勝負には「運」も付き物という認識は同じだったという。そして、二人の再戦、決着をより良い状態で迎えるためには、白鳥が勝ち続けて秀樹を迎え撃つことが望ましい。その点、次戦は前回よりも2kg軽い61kgでの契約となるため、減量とコンディショニングがポイントになるが、本人はさして気になっていない様子だ。
「マイナス2kgは確かにキツイ。それでも昨年は60kgで二試合こなしている。そこから考えれば、プラス1kg。その時は攻撃をもらわなかったのでスタミナ面に関しては何とも言えませんが、キレやスピードに関しては、むしろいい状態で臨めるという感覚があります」
10日に出場するトーナメント1回戦の対戦相手はヘクター・サンチアゴ。白鳥はネット映像を見ながら相手の分析を進めているというが、その第一印象については「パンチがメインのファイタータイプ。蹴りを上手く使いながら打ち分けをするなど、上手さもある。今回は3Rしかないので、最初から詰めてくるはず」と警戒を怠らないが、一方では「入ってくればカウンターやひざを合わせやすくなる。秀樹選手よりも戦いやすい」と自信を口にした。
高校では「同時に3人の女子に告白された」こともあるという白鳥は、そのルックスもあいまって“キックの王子様”と言われることが多く、ビジュアル先行の印象が付きまといがち。今回のトーナメントは有言実行のパフォーマンスを披露し、白鳥ファンはもちろん、格闘ファンにもその実力と存在感を見せつける格好の機会となる。そもそも本人は“イケメンキャラ”についてどう思っているのか。少し戸惑った表情を浮かべた白鳥は、苦笑いを浮かべながら次のように心境を語った。
「最初はすごく嫌でした。王子様って……せめてカタカナでプリンスとか、もう少し他にあるじゃないですか。何と呼ばれようとリングに上がれば関係ないし、RISEのファンの間では定着しつつあるようにも感じているので、まぁ」
順調に実績を積み重ねれば、名実ともにRISE、または日本の格闘界を代表する選手の一人になる可能性を秘めている白鳥。所属するジムにはRISEのエースである那須川天心がいる。そして天心には学ぶことも多いと話す。
「結果はもちろん、実力、試合の面白さ、どれをとっても素晴らしい。“魅せる格闘家”だなと思います。プロの格闘家は、ファンが『次を見たくなる』試合をしなければいけない。今の自分にはそこまでは難しいかもしれませんが、たとえ入り口はルックスでも、少しでもKOを予感させる試合をお見せしたい。今度のトーナメントは、団体、階級の世界一の称号が手に入る。胸を張って『世界チャンピオンです』と言えるよう、優勝を狙いに行きたいと思うし、その可能性を感じてもらえるように頑張ります」
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