Krushで初期から活躍、新生K-1もトップ戦線で支え続け、兄弟対決でベルトを争ったこともある卜部弘嵩・功也の兄弟が、3月10日のK-1さいたまスーパーアリーナ大会でともにタイトルマッチを行なった。
先に登場した弟の功也は、ライト級タイトルの防衛戦で林健太と対戦。功也と林は同じジム(KREST)に所属する同門だが、林が世界トーナメントに優勝し、対戦が決定している。キャリアとテクニックで上回る功也に対し、林はパンチの爆発力が持ち味。この試合でも、多彩な攻撃を見せる功也に対し、林は前に出てパンチを振るっていった。
お互いの手の内を知っているからなのか、決定的な一発がないまま試合は延長戦に。際どい勝負となったが、3ラウンド終盤から勢いに乗ってきた林が延長でもパンチをまとめ、大金星と言っていい判定勝利。ベルトを巻くと「まさか自分が…」と涙を見せた。
勝者が「まさか」と言うほどだった功也の敗戦。そこから4試合を挟んで、兄・弘嵩は村越優汰が持つフェザー級王座に挑戦した。
フェザー級に階級を下げ、昨年は芦澤竜誠を相手にKO勝利。復活を果たしたベテランの弘嵩。今回も序盤からスピーディーな動きでパンチを飛ばしていった。このまま弘嵩が主導権を握るかに思われたが、2ラウンドからは王者が本領を発揮。挑戦者の攻撃がパンチに偏りがちなのを見逃さず、前進をいなしながら得意の蹴りをヒットさせていく。派手な見せ場はなかったものの判定は3-0。強敵相手に、村越が底力を見せる一戦となった。
兄弟ともに敗れるショッキングな展開。功也は試合後「正直、もう一度ベルトを目指す気にはなれない。あとはキャリアをどう締めるか」と、これから現役生活の“まとめ”に入ることを示唆した。
一方、弘嵩は「結果的に、卜部兄弟にとって最悪の日になってしまった」としつつ「そこからまた這い上がるから面白いんです。ここで諦めちゃいけない」と復活を誓った。狙うのはあくまでK-1のベルト、2階級制覇だ。
敗戦に対する受け止め方は対照的だったが、どちらも極端に力が衰えたというわけではないはず。“展開”にせよ“まとめ”にせよ、卜部兄弟の今後のキャリアに注目したい。敗者が描くドラマも、格闘技の重要な要素なのだ。
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