今月19日、普天間基地の辺野古移設をめぐり、安倍総理と官邸で会談、先月行われた県民投票の結果を尊重し、全ての工事停止と約1か月の協議の場を設けることを要請した玉城デニー知事。会談後、「軟弱地盤の問題や県民投票の件、1万人規模の県民大会が開催されたということにあっては、ここは対話の時間をぜひ作るべきではないかという話を今般させていただいた」とその狙いを語った。
それから20分後、多忙を極める中、ウーマンラッシュアワーの村本大輔と対談するため、急遽テレビ朝日へと足を運んだ玉城知事。いまだ出口の見えない基地問題への思いと、対話を続けることの重要性について、村本と熱く議論した。
村本:県民投票の熱というが"始まり"なのに、あれで"終わった"という。元山仁士郎くんとかデニーさんが「次は本土の番だ」という話をよくされるが、本土の無関心層が一回のお祭り的な匂いをさせている感じがする。
玉城:県民投票は通常の選挙と違う。選挙は誰かを選んだら、誰かにその仕事を任せる。県民投票というのは、自分たちの気持ちが明らかになったので、次は誰がどう動くのかという責任が生まれる。辺野古の埋め立てに対して7割が反対を投じたわけで、政府であり沖縄県はその反対を受けてどう動くのかということに責任を持たないといけない。沖縄県は当然、辺野古は中断して計画は止めなさいと言う。普天間の一日でも早い、危険性の状況から早く手を付けろ、もう辺野古はいらない、ということを総理への面談でも中心に言い続けた。そして行動する。色々な人たちにそれを伝えていく。だから県民投票は終わりではない。責任の始まりだ
村本:責任の始まり?
玉城:私はそう受け止めている。基地問題も、基地を作ったら終わりだとみんな思っているが、平和への破壊の始まり。終わらないよと。語り続けないと、さも辺野古に移ったら普天間も返ってきて万々歳みたいな話になってしまう。普天間を返すために、辺野古をつくっても、そもそも飛行機が着陸できない短い滑走路なので、結局は那覇空港に滑走路が2本もあるんだから米軍に1本使わせろと言われかねない。そしたら何のために2つ作ったのと。それは沖縄県が発展するため、日本全体が発展するための起爆剤にするためだと言うのだろう。そして那覇空港を使わせないと言うと、じゃあ普天間は返さないとなってしまう。普天間を返す8条件の中に、「固定翼機が十分使えるような滑走路を他に見つけなさい』という約束がある。だから辺野古を作っても普天間が返ってくるということにはなってない。
村本:8つの条件をちゃんとクリアできるかというのをしっかりと調べずに基地の除去、危険の除去と言って辺野古の方に移そうとする。事実として不可能なこともあるし、危険な思いをするかもしれないこともある。基地の問題ではなく人権問題だとずっと思っている。
玉城:その通りですよ。
村本:どう見ても沖縄の気持ちありきですべてを考えないといけないのに、「しょうがない」とか「我慢してくれ」という話になる。
玉城:僕がよく若い人たちに話すのは、「何のために米軍基地があるの?」ということ。47都道府県のうち、米軍専用施設があるのが13都道府県。そのうち第1位が沖縄の70%。第2位はどこで何%かと聞いても、誰も知らない。第2位は青森県で、9%だと聞くと、みんなびっくりする。
村本:俺もびっくりした。
玉城:1位と2位がこんなに離れていて、1位にもたれかかり過ぎというのが数字でもはっきりとわかる。だから沖縄県民が負担軽減をと言っているのは、70%を例えばどこかの県が引き受けてくれるのかということだ。それを全国のみなさんに自分のこととして考えてほしいと言っている。でもこれ以上引き受けられないから、これはもうアメリカに財産として引き取ってもらうしかないという運動している人たちがいる。しかし「引き取ろう」と言葉に出すことによって刺激を与え『「何?引き取ろうってどういうことなの!?」「米軍基地を持って来るっていうの!?」「あなたたちひどいわね。私たちの命をおろそかにしたいと思っているの?」「じゃあ沖縄は…?」というクエスチョンが生まれてくる。よく「沖縄に要らないものはどこにも要らない」という言い方をするけど、それでは沖縄の基地問題は解決しない。なぜなら、沖縄に置いておけばいいというのが日本政府の簡単な考え方だから。日本国民も総じて「沖縄だからしょうがないよね」となってしまう。
村本:おっしゃる通り。全て違う理屈で丸め込んで押さえつけようとしている。僕はこの言葉を使いたくないが、本当に差別だ。黒人奴隷の映画を見ていたら、黒人は奴隷であることがあたりまえだと。「おかしくない?平等ではない」と言っても違う理由をつけて、「労働力がなくなるからしょうがないんだ」と言う。「そうさせておく」ということを沖縄にしようとしている。デニーさんとか沖縄の人は自分たちのことだから勉強している。若者も基地のことについてきちんと意見を持っていて、調べて勉強して、ちゃんと考えて言う。でもまた違う理屈を言う。「こうでこうだからしょうがない。沖縄県は過去にオッケーしているから仕方ない。鳩山さんがどうだったからしょうがない。こうだからしょうがない」と。今止めてって言っているのに、違う理由をつけてがんじがらめにして押さえつけようとしている。沖縄県という県に対する完全な差別だ。
マーティン・ルーサー・キング牧師の『最も悲劇的なのは悪人の辛辣な言葉や暴力ではなく善人たちの恐ろしいまでの沈黙と無関心である。沈黙は暴力の陰に隠れた同罪者である』という言葉を見た時に、パッとすぐ沖縄のことを思いついた。官邸前などに行って「沖縄に基地を作るな」と一生懸命声を上げている人たちと、それを冷笑する空気。あの時代のあの地域のあの話と同じ差別が違う形で日本にある。これはやっぱり僕らは声を上げていくべきだ。元山くんがハンガーストライキしたとき、フィフィは「あんなのただのダイエットだ」「本当のハンガーストライキはそんなもんじゃない」と言った。フィフィのファンだった子がそれを見て、元山くんにホッカイロ送りたいんだけどどうしたらいい?と僕のところに聞いて来た。だからイエスでもノーでも発言することがつながって沖縄を考えることになる。だから僕もまたしゃべる。
玉城:僕は若い人たちに「自分の力で考えて結論が出せれば、自信が生まれるよ」ということをいつも言っている。そのためには調べること。フェイクニュースなんて、気持ちの良い言葉が多すぎてついつい引き込まれてしまうが、これって本当にそうなのかな?と。村本さんがおっしゃったみたいに、ちょっと調べてみたら、いや全然違うよ、というのが分かってくる。分かってくるということは自分が利口になる。利口になることは嬉しいことだ。その気持ちで、さらに利口になるために調べる。「これだからこうなんだな」「じゃあ私はやっぱりそうじゃない。こっちの考え方を選ぶ」と決断した時には知識になって、間違いなく自分のものになる。そういう積み重ねをして、自分らしく成長していく一人の人間になってほしい。そうすると、世の中のいろんなことにもアンテナを張って興味を持って調べるだろう。活動にも参加するだろうし、参加しないならしないなりの立場からまた世間を見ていくこともできる。そういうふうに自分の力でやらないとダメだ。自分のことを信じて頑張ってほしいと思う。基地問題であれ、貧困の問題であれ、仕事の問題であれ、何が原因で何をどう解決すべきなのか。でも解決できないのは何かということを、誰かのせいにしないで、誰かに任せないで自分で調べてみて、これだなと納得して、自分なりの解決方法で動くということが大事だと思う。
村本:それがどっちの意見にしろ、一生懸命考えた末に出した答えを。
玉城:そう!それを尊厳として大事にする。反対だからあっち、賛成だからこっちという、そんな単純な話ではない。尊厳を守って話し合いをする。対話をする。そのためには自分も自分の力で考える。調べる。そして相手の意見に対して、「自分は、こうだからこう思う」と言う。相手に対して「なるほど、あなたにはあなたの問題意識があるのね。俺には俺の問題意識がある。俺はあんたの問題意識を調べるから、あんたは俺の問題を調べてくれないか」と言うと、今度はそこから協力が生まれてくる。お互いを知り合うから。決して対立というのは解消できないものではなく、向き合っていれば必ず握手するタイミングが生まれてくると思う。でも、「相手はどうせ向こうだから、あいつはこういう人間なんだよ」となると、これは差別以外の何者でもない。差別からお互いの融和や協力は生まれない。少なくとも対等に、尊敬する気持ちを持っているということが大事だと思う。
村本:引き続き安倍総理には真摯に向き合うと、沖縄と対話できないのに、北朝鮮とか中国と対話できるわけがないが、真摯に会話を続けると。
玉城:北朝鮮は去年1発もミサイルを発射していない。我々は対話の場で韓国とも仲良くなって、アメリカとも仲良くなりたいという気持ちを出しているわけだから、発射させないことが大事。静かな環境でお互いが対話する、向き合っていくというのが大事だと思う。
対談を終え、村本と握手をしながら「お願いだから助けてくれ」と笑顔で力強く語りかけた玉城氏に、村本は「どのスタッフに聞いても、こんなに柔らかい政治家の人は初めて見たというくらい。最初、デニーさんを連れて来たマネージャーかと思った。僕はインタビュー中に何回も「安倍総理は本当に最低じゃないか」と言ったが、「政府には政府の考えがあるので」と、すごく柔らかく、対話を大事にする。すぐブロックする僕は見習わなければならない」と振り返った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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