「#MeToo」運動をきっかけに性に関する問題が議論される中、最近相次いでいるのが「就活セクハラ」だ。
今週、就職活動でOB訪問に来ていた女子大生に酒を飲ませて泥酔させ、ホテルで無理やり乱暴したとして大手商社、住友商事に勤務していた三好琢也容疑者(24)が逮捕された。三好容疑者は今月2日、OB訪問に来た女子大学生と同僚を伴って居酒屋へ行き、一気飲みを強要して泥酔させた上、宿泊先ホテルに送り届けた際にカードキーを盗み、同僚と別れた後で再びホテルに戻って部屋に侵入し暴行したという。
こうした問題の取材を続けている『BUSINESS INSIDER JAPAN』統括編集長の浜田敬子氏は「MeTooの流れというよりも、就活の取材をしている中で、セクハラに遭っている女子学生が実は多いということが分かった。私たちが喫茶店で打ち合わせをしている時も、隣の席で何かの勧誘なのか就活なのかわからないような感じでOB訪問が行われている現場を目撃した」と話す。
同サイトが行った調査によれば、就職活動中の約5割の学生が就活中にセクハラ被害に遭い、うち約7割が誰にも相談できない状況にあったのだという。「私たちがアンケートを取ったところ、590人からの声が集まった。私たちが思っている以上に、ひとりひとりがものすごくディテールを書いてくれて、対面でも取材しているが、こんなに数があって深刻なのかと思う。被害に遭っている女子学生の多くはいわゆる人気企業、大手企業を志望していて、その"行きたい"という思いを利用して、OBがセクハラや性的暴行をしているという行動が見えてきた。"模擬面接をしてあげるから1対1になろう"などと言って、カラオケボックスやホテルに連れて行くなど、手口が巧妙。学生は誰もが就活が初めてなので"そういうものなんだ"と思ってしまう。大学の就職課に相談した学生の話も聞いたが、"そんなことにくじけないで頑張って"と言われたという。就職率を上げたい大学としては、触られたくらいでくじけるな、ということ。どこにも相談にいけなかったと言う学生もいた」。
一方、ネット上には、「自らの体を使って仕事を得ようとする女性もいるのではないか」というような反論も見られる。浜田氏は「私自身も20代の頃、セクハラに遭ったが、そういうことをされた時には恐怖で身動きが取れない。そこを逆手に取るほど学生はスレていないし、少なくとも私が取材した中では、そういう声はなかった」と話す。
「ある人材会社の方の言葉にショックを受けた。去年の財務省の事件などがあって、社内や取引先に対するセクハラはやったらまずいということで非常に厳しくなっている。そこで「就活生がブルーオーシャンだ」という。要は手を出しても被害を訴えにくいからだと。最も弱い立場の人のところに行こうとしているということで怒りに震えた。"社内ではセクハラを問われるけど、就活は言われてないもんね"、みたいな感じになってしまっている。企業側が男性社員に対し、お酒を飲みながらのOB訪問はいけないとか、20時以降に会ってはいけないとか、1対1で会うなら会社の会議室にするとか、きちんと教育や歯止めをしないといけない」。
また、浜田氏は「取材を進めていくと、大学OBと現役学生が会えるマッチングサービスがあって、割と簡単に会社員と女子大生が会える場がネット上にできてしまっていることがわかった。これが一つ大きな要因になっていると思う。企業も人材不足というか、採用が非常に厳しくなっているので、社員に対し積極的に登録しなさいと言っているケースもある」と指摘。これまでも構造的に続いてきた問題が、ネットによるマッチングが非常に簡単になったということで顕在化してきているとの見方を示す。実際、今回逮捕者を出した住友商事でも、350人くらいの社員がこうしたサービスを利用していたのだという。
浜田氏らの取材に対し、ある女子学生は「マッチングサイトで何度か相談していた人に"俺が人事だったら絶対にとる""見せるつもりのなかった会社の資料が家にある。君になら見せてもいい"と家に来るよう誘われた。このチャンスはどうしても逃してはいけないとついて行き、その資料を見ながら体の関係を求められた。その後、その人が会社を半年前に辞めて独立準備中だということを知らされ、どうしようもなくなった」と明かしたという。
「会社公認でやっているからと言われれば、女子学生としては当然、研修も受けていて、そんなことはしない社員だと思って安心してしまう。しかし実際にOBに会いに行くと、サイト内でのやり取りは会社側にウォッチされているので、すぐにLINEを交換しようというふうになる。そして執拗に誘われるようになる。学生は会社員だから夜に自宅の近くでしか会えないと思い込む。話をしているうちに、"もう遅くて終電ないから君の家に泊めて"と言って無理やり来られ、恐怖する。さらには後をつけられたりとか、どんな報復があるか分からなかったりということで声を上げにくくなるケースもある。やっぱり企業の方で、悪用は一発でアウトだという教育を徹底することが重要だ」。
弁護士の佐藤大和氏は「確かに"勘違いする"と主張する男性もいるかもしれないが、前提として就職活動で出会っているわけで、そこで勘違いする男性に大きな問題点がある。私は厚生労働省で労働法教育推進や教材作りもしているが、大学でもまだまだ浸透していない。企業でも、意識を高めて欲しい人こそ研修に来ない」と話す。
「企業自身がまだまだ意識が甘いということもあるので、就業規則を改善し、それに基づいて、指導とか戒告をしていく。また、学生には相談の練習をしっかりさせた方が良い。話を聞いていると、やっぱり相談するのが申し訳ないとか、どうやって相談したらいいかわからないという学生がいる。大学や企業の窓口、あるいは厚生労働省の窓口など、まずはお金かからないところからしっかり相談してほしいと思う」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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