世界各地に点在する脱北者によって組織された“反金正恩政権”の団体「自由朝鮮」。HPには金一家の肖像画を投げつける映像が見られるなど、その活動が活発化して注目を集めている。自由朝鮮はこれまで、マレーシアで殺害された金正男氏の息子・ハンソル氏の保護、さらには先月22日に発生したスペインにある北朝鮮大使館襲撃などへの関与を主張しており、北朝鮮内にも構成員や協力者がいることも示唆。今後の活動からも目が離せない。
北朝鮮事情に詳しい国際ジャーナリストの高橋浩祐氏は「自由朝鮮のリーダー格であるとみられているエイドリアン・ホンさんはアメリカの(カリフォルニア州)サンディエゴ出身の在米韓国人2世。自由朝鮮で活動するメンバーのほとんどは韓国系アメリカ人であり、国籍上はアメリカ人だが、民族的には韓国人というケースが多い」と説明すると、今現在、彼らの動きは非常に活発であると指摘する。
「今は水面下ですごい動きがあり、今年1月にはイタリアにある北朝鮮大使館の大使が行方不明になっている。情報機関によると、この大使は既に亡命したのではないかと言われており、その前には北朝鮮のイギリス公使も亡命している。自由朝鮮は今、金正恩体制を崩すために、大使や公使の脱北を次々に企てている」
先述したスペイン大使館の襲撃事件も、例外なく「北朝鮮の外交官を脱北させる目的」があったと話す高橋氏は、「今回の襲撃でエイドリアン・ホン氏らは、北朝鮮の暗号解読に使われていたパソコンの持ち出しにも成功している」と続けると、北朝鮮の暗号の情報がアメリカに渡る可能性を示唆した。
自由朝鮮は今後、“金正恩体制の転覆”を実現させる存在になっていくのか?
この問いに対して高橋氏は「難しい。北朝鮮はずっと飢餓がなんだ、崩壊するのではとも言われてきたが……(実現には至っていない)」と否定的な見解を示した。
ネット時事問題に詳しい文筆家の古谷経衡氏(36)は「北朝鮮国外に、反体制の実力を持った団体が出てくるのは、おそらくこれが初めてだろう。さらに本拠地は北米でアメリカの後押しがあるのではないか」と話す一方、自由朝鮮による金正恩体制の崩壊については懐疑的で「ダライ・ラマはチベット亡命政府をインドにつくっているが、高度な自治を達成できていない。さらにウイグルについても、ドイツのミュンヘンに世界ウイグル会議という亡命政府を組織しているが、そこでも高度な自治の達成には至っていない。中国で達成できていないことを、北朝鮮のような国ではなおさら難しいだろう。北朝鮮国内の派閥争いについて話はあるが、金正恩が先軍政治による粛清で締めつけを行っていることを勘案すれば、この程度では」と話したが、「初めてのケースなので、注目はしたい」と続けた。
「米国が自由朝鮮を上手く使うということは考えられないのか」という問いに対しては、「1980年代、イランの時はCIAが入って体制転覆を図ったが実際にはうまくいかなかった。そもそも、今、彼らを使って体制転覆を図るほどの数でもなければ、力も無いだろうから、迂回ルートで体制の転覆を図るまでは至っていないだろう。国内的にも経済制裁で厳しいと言われているが、実際には中朝国境、主に中国などと貿易をしており、経済成長しているという側面もある。一般の国民はクーデターについては考えておらず、この先も10年。20年は無いだろう」と持論を展開した。
この意見に同調したのは国際政治学者の舛添要一氏(70)。舛添氏は「国内では情報統制が行われており、クーデターの“ク”の字も無いだろう。よって、これ(自由朝鮮)は大した動きにはならないだろうが、米朝対話が行われる今、アメリカが揺さぶりをかけているということはあるだろう」と話した。
(AbemaTV/『Abema的ニュースショー』より)
(C)AbemaTV
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