SNSを中心に大きな反響を呼んでいる、1人の女性芸術家がいる。日本だけでなく、世界中で話題となっている驚愕のアートをAbemaTV『AbemaMorning』は取材した。
白と黒の2色で表現された芸術作品、タイトルは「海蛸子(かいしょうし)」。黒い紙にタコの絵が描かれたリアルなアート作品にも見えるが、実はたった1枚の紙で作られた「切り絵」だ。いくつもの細かい模様から放たれる立体感に、まるで生きているかのような躍動感。
この作品を手掛けたのが、切り絵アーティストの福田理代さん。切り絵の世界に飛び込んで、今年で27年目を迎える。代表作の1つである「海蛸子」は、去年11月にツイッターに掲載すると「いいね」の数が11万を超えるほど話題となっている。
この繊細なアート作品は、どのように作られているのか。千葉県にある福田さんの自宅兼アトリエを訪れた。自宅の1階にある約6畳のアトリエには、福田さんの作品の一部が飾られている。
およそ半年かけて創作したという作品「深海魚」について、「深海魚と機械っぽいものを組み合わせたら、カッコいいかなと思った」と福田さん。1日の生活の中で、仕事の時間と寝る時間を除き、ほぼ全ての時間を切り絵の創作に費やしているという。
「すごく楽しいです。癒やされます。疲れたといっても遊び疲れたみたいな感じの疲れ。切っていると喋ることも忘れてしまいます。(細かい作業が)もう大好きで、ビーズで遊んだりするのも好きだったし、普通に絵を描くのも好きだった。どちらにしても、目を使って指を使ってということをずっとしていました。小さい頃から『目が悪くなる』ってずっと親に言われていました」(福田さん)
切り絵を始めたきっかけは、高校生の時に友人の誕生日カードにハートを切り抜いて、メッセージを書いて送ったこと。それ以降、友人に手作りのカードを作ることが定番になったという。
切り絵を本格的に始める前から絵を描くことが好きだった福田さん。高校生の時には、アクリル画で描いた「愛鳥週間」のポスターで、千葉県知事賞を2年連続で受賞した。
高校卒業後は、美術系の短期大学に進学。デザイン課で勉強しながら、切り絵の才能を開花させる。
「(切り絵は)完全に独学ですね。細かく切るだけだと誰でもできたりするので、その中で自分の“味”というものを考えた時に、立体感とか奥行きとかを出してみようと思って、いろいろ試行錯誤して今の形になりました。(作品は)ひらめきというか、『これ作りたい』みたいな感じ。(出来上がると)もう感無量ですね」(福田さん)
福田さんの感性で生み出される切り絵アートの数々。作り方は非常にシンプルで、まずはシャープペンで下書きを作成。あとは、デザインナイフと呼ばれるペンタイプのカッターで切り抜くという地道な作業を続ける。「ジャクソン・カメレオン」という作品は、およそ半月で創作したそうだ。
日本を代表する切り絵アーティストとして活躍中の福田さんだが、実はもう1つの顔がある。
「本職は時計修理の仕事をしています。会社の昼休みに30分くらい切って、帰宅してからも切り絵を切るという形」(福田さん)
就職時の面接では、手の器用さをアピールするため切り絵の作品も披露。会社員と芸術家の“二足のわらじ”で取り組んでいる福田さんだが、帰宅後の創作活動にはさらに驚きの事実が。
「主人などに協力してもらって、帰宅したあと早い時間に寝させてもらう。夜中の2時半とかに起きて、そこから6時半くらいまで、出勤する直前まで切るという。主人がとても協力的で、切り絵の期日が迫っていたりするとほぼ全て家事をやってくれるので、家族の協力無くしてはできないですね」(福田さん)
福田さんの活動を支えているのが、夫の一(はじめ)さん。平日は、食事を中心とした家事全般を担当しているそうだ。
「慣れていないので試行錯誤して、インターネットでレシピを見て料理を作ったりしています。なるべく(切り絵を)切ってもらえるように、時間を作るように頑張っています。応援しています」(一さん)
家族のサポートのおかげで、今ではアート展に出品したり個展を開いたりするなど、活動の幅を広げている福田さん。去年5月には、ルーブル美術館で開催されたアートイベントに出品するなど、海外での評価も高まっている。
「自分がその状況に付いていってない感じ。会社員で主婦で、趣味で切り絵をやっていてという感じなのに、海外の方に見てもらったり、問い合わせが来たり、注目されたタコの切り絵が独り歩きしているような気分です」(福田さん)
今後の目標は「海外で個展を開くこと」と語った福田さん。福田さんの作品は公式ホームページ「切り剣Masayo」で見ることができるほか、13日から21日まで上野のGALLERY心で開催されている「八百万之紙&切藝展・参」にも展示されている。
(AbemaTV/『AbemaMorning』より)