■佐藤浩市さん事務所「コメントを出すことはありません」
20XX年、尖閣諸島沖での海上自衛隊と中国海軍の衝突の危機が高まる中、日本政府が就役させた事実上の空母「いぶき」。翌年、ついに中国軍が尖閣と先島諸島に上陸・占領。日本政府は垂水慶一郎総理の指揮の下、武力による奪還を決断。最新鋭戦闘機を搭載した「いぶき」の艦隊による作戦の火蓋を切る。
そんな架空の戦闘を描いたマンガ『空母いぶき』の実写映画が24日に公開されるのを前に、垂水総理を演じた俳優の佐藤浩市さんへのインタビュー記事が物議を醸している。
原作が連載されている『ビッグコミック』に掲載されたこのインタビューの中で、佐藤さんは「最初は絶対にやりたくないと(笑)。体制側の立場を演じることに対する抵抗感が僕らの世代の役者には残っているんですね」と明かしている。また、原作では戦闘開始の決断を下すプレッシャーで嘔吐する場面が描かれているが、佐藤さんは「彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」ともコメントしている。
ネット上では、この発言が安倍総理の潰瘍性大腸炎の持病を揶揄しているのではないか、との見方が浮上、「バカにしているととられても仕方ない発言だな」「病気で苦しむ人も傷付いているかもしれない」といった批判的な意見も次々と書き込まれている。
ただ、明星大学の藤井靖准教授によると、「ストレスでお腹が痛くなる病気は過敏性腸症候群で、安倍総理が罹った潰瘍性大腸炎は身体の器質的な問題で、ストレスによって悪化することはあっても発症することはない」のだという。
また、この論争に対し、出版元の小学館は「作品はフィクションで実在の人物とは関係ありません」、原作者のかわぐちかいじ氏は「ネットを見ないため(批評の内容が)分からない。この件に関してはノーコメントでお願いします」、そして佐藤さんの所属事務所は「コメントを出すことはありません」としている。
■スマートニュースメディア研究所・瀬尾氏「感情的にならず、まずはしっかり原文に当たり、その上で議論してほしい」
14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した、元講談社でスマートニュースメディア研究所所長の瀬尾傑氏は「このインタビュー記事から主に(上記の)2か所が抜粋されて語られているが、実際に読んで見ると、それぞれが違う文脈で出てくる。総理役を演じる点については、そういう気持ちがあったけれども、やっているうちに、どんどん役作りにのめり込んでいった、という話。もう一つの設定変更についても、別に安倍総理を揶揄しているというわけではなく、政治家にかかる重圧をどういう形で伝えようかという、役作りに取り組む話だ。総理大臣というのは、大平総理や小渕総理のように仕事中に亡くなった総理大臣もいるくらい大変な重圧のかかる仕事。原作にも嘔吐のシーンは出てくるし、そうした表現の一つだと思う。とにかく切り取られた部分が伝聞に伝聞を重ねて議論されている。特段問題はないインタビューではないし、事前にチェックしたり、内容を変えたりするような話でもない。感情的にならず、まずはしっかり原文に当たり、その上で議論してほしい」と理解を求める。
その上で瀬尾氏は「核武装した潜水艦が一国を名乗る『沈黙の艦隊』など、かわぐちさんの作品は"和製トム・クランシー"だと思う。つまり、ある種のポリティカル・フィクションなので、すごく議論を呼ぶ。そういう原作である以上、議論が起きるのはかわぐちさんらしいと前向きに捉えればいいし、映画は映画として観てから議論してほしい。仮に政治的なメッセージを持った映画だとしても、ハリウッドを見ればわかるように、そういう映画は当たり前にある。音楽もそうだ。批判的に捉えるのではなく、意見を言うのはいいことだと捉えてほしい。僕が心配するのは、炎上することによって作品に対する思い入れが話せなくなってしまうことだ。窮屈で面白くない社会にしないでほしい」と訴えた。
■ケンドーコバヤシ「"原作ファンから怒りの声"みたいなニュースも増えた」
タレントで事業家の栄藤仁美氏は「私もインタビューを拝読したが、冒頭で佐藤さんは"間違いは取り返しがつかない。日本は常に戦後でなければいけない"というようなことをお話されているし、表現者として、プレッシャーとの闘いなど、総理の裏側をどういうふうに描くかと考えたということ。見たくなければ見なければいいと思う」と指摘した。
また、ケンドーコバヤシは「思想・言論の自由はあるが、擁護派と攻撃派、それぞれの言葉がキツくてビビってしまう。映画にはいろんなものがあっていいと思うし、そういうルールのようなものは要らないと思う。最近は原作のある映画が多いので、"原作ファンから怒りの声"みたいな取り上げ方のニュースも増えた。でも、俺なんか"文句言うたろ!"みたいな感じで観に行って、泣いてしまうこともあるからね(笑)。今回の事で映画に興味を持つ人が増えて、チケット代払う、電車代払う、飲食店に払うということで経済も周る。みんな外に出よう(笑)」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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