4勝3分け6敗、4戦未勝利の15位。J1昇格を目標とするFC町田ゼルビアにとっては、痛い足踏みが続いている。最下位のFC岐阜とは勝ち点3差、得失点1差。次節の結果次第では、一気に順位が入れ替わる可能性がある。
しかし、決して内容が悪いわけではない。むしろちょっとした歯車が噛み合えば、昇格争いに食い込めるだけの力を持っている。チャンスは作れているだけに、あと一歩。そのちょっとした歯車を噛み合わせるために期待したいのがダイナモであるロメロ・フランクだ。
球際の強さを思い出す必要性
ゼルビアで2年目を迎えるロメロ・フランクは、主にボランチを主戦場として戦う。相手のボールを奪い取るフィルター役を担ったかと思えば、両サイドへと正確なパスを散らして攻撃をオーガナイズ。さらには自身で持ち運ぶ推進力も彼の魅力のひとつ。
特に今シーズンのゼルビアは、パスを繋ぐ能動的な攻撃を見せている。その中で、パスを散らしつつ、2次攻撃に備えて高い位置まで攻め上がることができるロメロ・フランクは貴重な存在だ。
しかし、現在のゼルビアは繋ぐ意識が高まった影響から、昨シーズンに見せたような球際での激しさが薄れている。第12節の水戸ホーリーホック戦でも球際で後手になってしまったことで「セカンドボールを拾えずに苦しい展開になった」(相馬直樹監督)。さらに敵将の長谷部茂利監督でさえも「町田はもっと激しく、ダーティーにくると思っていた」と、球際の強度の低さを指摘した。
ロメロ・フランク自身も「水戸は首位のチームだけあって、球際が強かった。去年の自分たちのような戦いをしていた」と認める。さらに「やっぱりそこ(球際)で負けていたらダメ」とチームに足りないものを口にしていた。
その言葉通りに第13節、横浜FCとのダービーマッチでは、チーム全体として球際の攻防で強さを見せた。38分の場面では、ルーズボールをハーフウェイライン付近でしっかりと回収すると左サイドから崩して、最後はルーズボール地点からボックス内まで攻め込んでいたロメロ・フランクがシュート。惜しくもGKの正面を突いたが、マイボールにしてからの早い展開でシュートまで持ち込んだ。
結果としてこの試合も先制しながら追加点を奪えずにドローに終わったが、相馬監督は「選手たちが最後までファイトして戦い続けられた。最後まであきらめずに戦ったことを、次のゲームにつなげられるように」と一定の評価を下す。
ゼルビアが挑戦している、“繋いで崩す”新たなスタイルの完成には課題が多く、まだまだ未完の状態だ。ただ、その中でも忘れてはいけないのは、ロメロ・フランクもいう昨シーズンに見せた球際の激しさ。そして、パスを捌けて、ボールを運ぶことができ、相手からボールを奪い取れる彼だからこそ、彼自身のさらなる活躍がチームにとって必要だ。
次節は19日にホームで5位の京都サンガF.C.と対戦する。リーグ戦2連勝中と好調な相手に対して、泥臭くも球際で気迫のこもったプレーを見せられるか? チームの心臓であるロメロ・フランクに期待だ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)