「頼んだ覚えのない荷物が代引きで届くのが多発している」「心当たりのない代引きを家族が払ってしまっていた。注文履歴もないし怖い」。最近、一部のAmazon利用者から、そんな"送りつけ詐欺"の被害を訴える声が上がっているという。
都内在住の芸術家・けみ芥見氏の家にも今年3月、妻宛の荷物が代引で届いた。送られてきたのは、車にスマホを取りつけるホルダーで、支払った額は約1700円だった。しかし、妻のアカウントに購入履歴はなかった。「友人のFacebookで見て知っていたので、"カードでしか決済していない"と言われて、"やられたな"って気づいた。高いものだったら別だけど、千数百円だったから、つい払ってしまった」。
Amazonのサポートページから連絡したところ、返金対応をしてくれることになった、送りつけ詐欺はこれだけでは終わらなかった。「同じ日に3つ、翌々日くらいにも3つ、合計10個ぐらい来た。最後は約8000円の荷物だった」。夫妻は代引き荷物を届けないように、宅配業者に相談したという。しかし、差出人はついに分からないままだった。「Amazonとしても、個人情報の漏洩になるとのことで教えてはくれなかった」。送りつけ詐欺の特徴の一つが、この"送り主がわからない"という問題だ。Amazonの送り状には発送元である同社の情報のみが記載されるという点を悪用しているのだ。
国民生活センターにも同様の被害の相談が寄せられているという。担当者は「ぬいぐるみが届いたり、スマホの関連商品が届いたりと、商品は本当にバラバラ。それに伴って価格帯も本当に様々。まずは自分が本当に頼んだものなのか、あるいは家族が頼んだものなのかをきちんと確認してから商品を受け取るか判断をしていただきたい」と話す。
被害はAmazonに出品している店舗にも及んでいる。何者かが大量の商品を注文した後に全て返品するというもので、店側は送料や手数料の負担を強いられているのだ。アウトドア用品を扱うある店舗では、3日で10件以上の代引き商品の返品が相次いだ。1件につき1000~1500円で、合わせて2万円近くの損失を余儀なくされた。取引の15%ほどが代引きだったこの店舗では、代引きできない設定への変更をする他なかったという。
こうした事態にAmazon側は「違法行為は容認していない。お客様から不正について申告いただいた場合は、厳正に調査を行った上で、お客様や販売事業者様に対する不正行為には確固たる措置を講じている。またAmazonは不正行為を行った者がその責任を負うよう法的機関との連携を強化している」と報告。「まずはご家族やご友人の方のお送りいただいた商品ではないかお心当たりをご確認いただいている。覚えがないのであればお受け取りを拒否していただくこともご検討いただくようご案内している」とし、受け取ってしまった場合はカスタマーサポートページから問い合わせができるようにしているとした。
Amazon専門のコンサルを展開するアグザルファ社長の比良益章氏は「競合店舗への嫌がらせ」という可能性を指摘する。「代引き注文で何十件と注文し、返品させることによって、在庫を一切動かせなくする嫌がらせだ」。ITジャーナリストの三上洋氏も、Amazonマーケットプレイス内の上位表示をめぐるライバル店同士の争いだったケースを紹介した。
比良氏は、もう一つの可能性として「Amazonギフト券狙い」とも話す。「本来、商品を購入した後に返品する場合、払った側に返金するのが一般的。しかし、送りつけ詐欺の場合、注文者に返金をしてしまう仕組みになっている。もちろんAmazonとしても対策はしているが、個別にイレギュラーな対応をしてもらわない限り、最終的には詐欺をした人に返金されてしまう。いたちごっこの状態が常に続いている」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)