プロ入りから7年。七段に昇段を果たした八代弥七段(25)が、確実に棋界トップクラスへと迫っている。昇段を決めたのは竜王戦3組ランキング戦の準決勝。同世代の三枚堂達也六段(25)を下し、2組昇級も決めた。いつ一気にブレイクしてもおかしくない、そんな期待感を持たせる若手棋士だ。
2012年にプロデビューを果たした八代七段の名が一気に広まったといえば、2017年の早指し棋戦・朝日杯将棋オープン戦。当時としては一次予選から勝ち上がっての初優勝、22歳11カ月での最年少優勝と、記録ラッシュだった。翌年、藤井聡太七段(16)に記録を塗り替えられたが、一次予選から優勝まで駆け上がった偉業は、色あせることはない。
若さの感覚と経験とのバランスが絶妙となる25歳を、棋士として一番脂が乗るという人は少なくない。現在の棋界を見渡せば、1つ上の26歳には永瀬拓矢叡王、斎藤慎太郎王座とタイトルホルダーが2人いる。同世代で仲もいい高見泰地七段も、前叡王。かの羽生九段が七冠独占したのも25歳だ。八代七段の昨年度の成績は、38勝17敗で通算勝率を上回る0.6909の高勝率。タイトル戦という晴れの舞台にいつ登場しても不思議ではない成績を上げている。
若手からベテランまでがそろう超早指し棋戦AbemaTVトーナメントでは、単純明快に「絶対優勝する!」を目標に掲げた。「いろいろ悩んだんですけど」と何を書こうか考えたものの、最終的には「素直な今の気持ちを。これ以上ストレートな言葉はないと思うので」と、頂点だけを目指す。非公式戦ながら、棋界に与えるインパクトは絶大だけに「八代、ここに在り」と知らしめるには絶好の機会だ。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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