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(防衛戦を終えたばかりの遠藤をKOした坂口。タイトルマッチに向け「殺す」と物騒な宣言も)

DDTの頂点に立つ者の証・KO-D無差別級王座をめぐる闘いが、このところ混沌としている。

2月の両国国技館大会で新時代のエース・竹下幸之介が3度目の戴冠。今回も長期政権になるかと思われたが、4月のニューヨーク大会で前王者・佐々木大輔に奪還を許してしまう。その佐々木も試合後に「いつでもどこでも挑戦権」を行使した遠藤哲哉に敗北。遠藤が初の王座奪取を果たした。

大石真翔との初防衛戦をクリアした遠藤だが、5月19日の後楽園ホール大会では、試合前に石井慧介(ガンバレ☆プロレス)がリングイン。石井も「いつどこ権」を持っており、行使を予告していた。

長くDDTに所属していた石井だが、昨年、自身の希望でガンプロにレンタル移籍。「弱小と思われているガンプロを大きくしたい」と激しいファイトを展開してきた。その意気込みが遠藤とのタイトル戦でも発揮され、攻防は白熱したものに。ルール上、予定された試合を終えて疲れた状態の遠藤に挑戦することも可能だったが「正々堂々、タイトルを獲るのが僕の見てきたプロレスなので」と石井は語っている。

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(大接戦となった遠藤と石井のタイトルマッチ。石井のセコンドにはガンプロ勢がついた)

大奮闘を見せた石井をどうにか振り切り、シューティングスター・プレスで防衛した遠藤。しかしこれは、もともと対戦カードになかった試合だ。すぐさま、正規カードであるタッグマッチが始まった。

ベルトを守って上機嫌でマイクを握ったところを、6.2松山大会で遠藤に挑戦する坂口征夫が襲撃。坂口の必殺技「神の右膝」を食らった遠藤は失神KOで秒殺負けという結果に。

続く5.25下北沢大会、5.26大阪大会でも坂口のチームが前哨戦に勝利しており、遠藤はチャンピオンとして盤石の強さを見せているとは言い難い。

そしてここから先も、チャンピオンはひと息つく暇がなさそうだ。

6.2松山の遠藤vs坂口に続き、7月15日のビッグマッチ・大田区総合体育館大会でもタイトルマッチが決定済み。ここで挑戦するのは、KING OF DDTトーナメントで優勝した竹下。現在のDDTで最高の挑戦者と言っていい。さらにその直後、7.21後楽園大会では、イギリスからDDT初参戦を果たす人気選手クリス・ブルックスが挑戦することも発表されている。遠藤、坂口、竹下、あるいはブルックス。8月を迎えた時点で、誰がベルトを巻いていてもおかしくない。

しかも、「いつどこ権」はもう一つ残されている。保持しているのは“大社長”高木三四郎だ。5.19後楽園では、権利奪取を狙う新世代レスラーたちとのハードコア5WAYマッチ(高木vs上野勇希vsMAOvs梅田公太vs吉村直巳)に勝利。試合後は「クソガキども! お前らがハネなかったら未来なんかねえんだよ!」、「どんどん自己主張してこい!」と強烈なアピールも。

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(新世代との闘いでいつどこ権を死守した高木は気合いの表れとしてフロアに放置されていた(公認凶器の)プラスチックケースにダイブ)

「いつどこ権」については「絶対に勝てるシチュエーションで使う」。もし高木が王座強奪に成功すれば7年ぶり、49歳での戴冠。これは自身が持つ最年長戴冠記録を更新するものだ。

竹下はキャリアの中で高木から勝利を収めたことがなく、7.15大田区での対戦を望んでいるふしもある。大田区大会はDDT初の試みである、全席無料のスペシャルベント。そのメインに49歳の“大社長”が登場するというのは確かに話題性充分だ。

場合によってはここから2ヶ月で王座が次々に移動していく可能性も。だがそれを乗り切れば、遠藤は選手として大きく成長するだろう。「安定と不安定だったら不安定を選ぶ」という遠藤は現在の状況を楽しんでいるようでもあり、それも含めて王座戦戦は“混沌”というしかない状況なのだ。

文・橋本宗洋

写真:(C)DDTプロレスリング

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