(決勝の高尾戦。竹下は打撃をはじめあらゆる局面で高い攻撃力を発揮)
DDT恒例のシングルトーナメント「KING OF DDT」は、大本命と言える竹下幸之介の優勝で幕を閉じた。
竹下は高校時代にプロレスデビューし、現在23歳。団体の頂点であるKO-D無差別級王座を過去3度、獲得したDDT新時代のエースだ。2度目の“竹下政権”は歴代最長、最多防衛記録も持っている。
今年2月の両国国技館大会で3度目の戴冠を果たしながら、わずか2ヶ月後、4月のニューヨーク大会で佐々木大輔にベルトを奪われた竹下。今回のトーナメントは「最低でも優勝。格の違いを見せつける」というテーマを掲げていた。実際、竹下は上野勇希との1回戦、吉村直巳との2回戦で圧倒的な力量を見せた。竹下vs吉村は吉村にとってベストバウトの一つとなる熱戦だったが、パワー合戦で真っ向から張り合った竹下がポテンシャルを引き出した面もある。
5月19日の後楽園ホール大会は準決勝、決勝の2試合。準決勝ではDDT屈指の大型ファイターである樋口和貞をラリアットでねじ伏せ、決勝はタッグ王者の高尾蒼馬から3カウント。リーグ戦「D王グランプリ」に続いての優勝に、竹下は「これで僕がDDT最強かな」と胸を張った。
今年デビュー10周年となる高尾は、トーナメントを制して夏のビッグマッチ、大田区総合体育館大会(7月15日)のメインでタイトルに挑戦しようと強い意気込みを見せていた。竹下も「引き出しが凄くある」と、高尾がいつも以上の力を見せたことを認めていた。だが竹下は、そこが自分との違いだとも語っている。
(これでリーグ戦、トーナメントと連続優勝。ベルト奪還に成功すれば文句なしのトップだ)
「(大事な試合で)引き出しを出してきたのは、普段の試合で出してないってことじゃないかと。僕は365日、出し切ってますから。それは自信を持って断言できる」
王者として、あるいは挑戦者として、ここ数年の竹下は常にDDTの中心で試合をしてきた。それは後楽園でも両国でも地方でも関係ない。「大事な試合だから頑張る」という感覚はすでにないのだろう。すべてが大事な試合であり、どの試合でも興行を背負って観客を満足させることが竹下の仕事だった。そこで培われた底力が、すなわち「格の違い」だった。
トーナメント優勝により、竹下は7.15大田区のメインで王座に挑戦することが決定。チャンピオンは6.2松山大会での遠藤哲哉vs坂口征夫の勝者になることが濃厚だが、まだ「いつでもどこでも挑戦権」が残されており、不透明な状況だ。とはいえ竹下が大田区のメインでタイトルに挑むことは確定。挑戦者だが“待ち構える”形になる。挑戦者と王者の両方で何度もビッグマッチのメインを経験している竹下曰く「追われる者より追う者のほうが間違いなく強い」。竹下の充実ぶりも含めて考えると、王者が誰であろうと“挑戦者優位”のタイトルマッチになるのではないか。
文・橋本宗洋
写真:(C)DDTプロレスリング