王座挑戦、地元凱旋、そしてトーナメント… タッグパートナーと駆け抜けた乃蒼ヒカリの5月
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 アップアップガールズ(プロレス)・乃蒼ヒカリのキャリアにとって、この5月は大きな意味を持つものになった。デビューからアイドルとプロレスの同時進行。東京女子プロレスの1.4後楽園大会でレスラーデビュー2年目を迎え、そこで「運命的な出会い」もあった。

 アクトレスガールズで活躍していた“なつぽい”こと万喜なつみがフリーとなり、東京女子に参戦してきたのだ。シングルでの対戦を経て「似ているところがある」(万喜)と意気投合した2人はタッグを結成。タッグ王座への挑戦を表明した。一度は挑戦者決定戦で敗れたが、春に再びタッグを組むと「ぱんでみっくBoo-Boo」(ぱんでぶー)とチーム名も決定。プライベートでも仲がいいという万喜とのタッグで、ヒカリはこれまでの必死さに加えてプロレスを楽しむ姿勢も目立つようになった。5月3日の後楽園ホール大会では坂崎ユカ&瑞希のタッグ王座に挑戦している。

 この試合では力の差を見せられて敗れたヒカリだが、あらためて「2人で一緒に強くなっていきたい」と語っている。その3日後、5月6日には東京女子初の札幌大会がマルスジムで開催。ヒカリは(札幌ではないが)北海道出身、夢だったという地元凱旋興行だ。大量の紙テープに迎えられてリングインしたヒカリは、ここでも万喜とのタッグで試合に臨んだ。伊藤麻希&原宿ぽむと対戦し、ヒカリが裏投げでぽむをフォールしている。

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 ヒカリの故郷は「札幌からは東京と名古屋くらい離れてるんですけど、道内は道内なので(笑)」ということで親類や友人も観戦に。デビュー以来、初めてのシチュエーションに緊張したという。レスラーになる前から、地元ではプロレス好きで有名だった。マルスジムはファンとして試合を見ていた会場。そこで自分がプロレスをやっていることに、不思議な感慨も覚えたという。

 プロレスに反対していた祖母も応援に来てくれた。地元の友人には「私も頑張ろうって思ったよ」と声をかけられた。かつてレスラーにもらった力を、いまは自分が与えられるようになったのかもしれない。そう思えることが何より嬉しいという。

「キラキラした目で感想を話してくれるのを聞いて、憧れていたものに近づけたのかなって。私も少しは一人前になれたんですかね」

 札幌で試合をしたことで、新しい目標もできた。「いつか東京女子で北海道(各地への)ツアーができたら」。そして5月25日の北沢タウンホール大会。恒例のシングルトーナメント「東京プリンセスカップ」では、抽選の結果、1回戦で万喜と対戦することになった。そうなったのもまた「運命」か。

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「やりにくい相手」と語っていたヒカリだったが、気持ちが通じ合っているからこそ思い切りぶつかることもできたのではないか。試合内容はデビュー以来最高と言ってよく、特に感情むき出しで殴りかかった場面は彼女の真骨頂だった。

 “とっておき”の必殺技であるジャーマン・スープレックスで勝利した万喜は「これがヒカリにとって意味のある一戦になってくれたら嬉しいです」。敗れたヒカリは「悔しいですけどなつぽいに負けたのなら」。タッグパートナーとして、後ろからついていくのではなく「隣に立つ」選手に成長したいという思いも強くなった。

 たった1ヵ月。しかしその充実感は何倍もの期間に相当するだろう。ベルトは獲れず、トーナメントでも勝ち上がることはできなかったが、いつか「あの5月の経験が大きかった」と思える日が来るに違いない。

文・橋本宗洋

写真:(C)DDTプロレスリング

(C)AbemaTV

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