ふかわりょう「”見ない”という選択肢しかないのでは」相次ぐマスゴミ批判、事件・事故の報道で必要な取材とは?
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 川崎市で起きた殺傷事件へのマスコミ報道をめぐって、またしても「被害者の気持ちを考えて!」「本当に報道しなきゃいけない内容か考えてほしい」といった批判的な意見が上がっている。

 今月8日には、滋賀県大津市で起きた事故の当日に行われた保育園側の会見に非難が殺到、遺族が文書で報道に配慮を求めたことも記憶に新しい。しかし今回の事件でも、直後から現場周辺や容疑者の自宅周辺に多くの取材が殺到。ネット上には「娘が亡くなったばかりの遺族取材必要ある?」「また泣き顔撮るまで校長質問攻め」「被害者児童のプライバシー暴露いる?」「ひどい現場映像流す必要ある?」「音声を自分たちの都合で消したり…やはりマスゴミ」「毎回、加害者の卒業アルバムって、誰が見るの?」といったものがあがっている。

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 児童が被害に遭ったカリタス小学校の内藤貞子校長が「保護者から、子どもたちの写真を撮ったり、インタビューをしないで欲しいということが出されていた。これは保護者の願いなのでどうか受け止めて頂ければありがたく思っている」と取材上の配慮を呼び掛けている。

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 30日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した同番組の杉原啓太プロデューサーは「コメント欄やTwitterでも同様のご意見を頂戴している。やはり他の番組や新聞だけでなく、ネットメディアも含め競争相手がいる中で駆られてしまう、という背景もあるかもしれない。3年前まで事件取材の現場にいた身から批判を恐れずに言うと、自分も"これはメディアスクラムだろう"と感じながらも取材をしてしまった経験もあるし、私生活を侵して迷惑をかけてしまったこともある。これは記者やディレクターたちが常に直面している問題だと思うし、そこでひとつひとつ立ち止まれているのかがどうかが問われていると思う。我々は視聴者や一般市民の方の代わり、代表として現場に行き、報道しているという倫理観を忘れてはいけないし、そこに対する意見はちゃんと受け止めなければいけない。以前、上司に言われた"記者である前に人間であれ"、という言葉をもう一度心に刻まなければと思っている」と話す。

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 一方、ふかわりょうは「例えば警察発表に基づいて、犯行の数十秒間がどんなものだったのか、レポーターが"ここでこう振りかざして…最後は自分の首に刃を当てて…"と現場で再現しているが、果たしてそれを視聴者が求めているのかどうか。今まではそういうことは考えず、我々がやること=視聴者が求めていることだと一方的に考えていただろうが、そうではないということがネットで可視化されるようになった。ただ、"いまさら何を言っているのか"という気がしている。ネットニュースのコメント欄で"興味ねえ"とか、"そっとしといてやれよ"と書いているが、それはお前のことだよ、と感じるのに似ている。まず自分がお客さんであるという自覚が足りないと思う」と憤る。

 その上で「テレビというのは昔からそういう体質だったし、視聴者がそれを支えてきた結果、惰性として今の状況がある。ずっと支えてきた客が突然、自分が嫌悪感を抱くところだけに石を投げ始めるというのは好きじゃない。マスコミ報道はよりベターな方向に持っていくべきだとは思うが、尺をどうやって埋めようというのがテレビだし、ちょうど良い加減でお茶の間に届けることは得意ではない。関心のない人もお客さんにしなければいけないというシステムでやっている以上、極論すれば自浄作用はないかもしれないし、止められるのは視聴者の"見ない"という選択肢だけではないか。そこで数字が落ちればやらなくなるし、あと10年くらいはかかると思う」という悲観的な見方を示した。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「テレビ、新聞、雑誌しかなかった時代は、記者やカメラの目線が視聴者の目線だった。そこにインターネットが入ってきたことによって、必ずしもそれだけが我々の目線ではないと感じるようになり、"なんであんなに踊らされていたんだろう。メディアスクラムに乗っかって、野次馬根性で事件を見ていたんだろう"と考えるようになった。そのズレが大きくなっているのではないか。ただ、今回の議論を見ていると、一律に取材がけしからんという話になっているが、メディアスクラムがいけないのであって、公共権を担うメディアとして、取材はしていいし、しないといけない。かつて僕は事件発生から数か月後、手紙を書いて交渉し、単独で遺族にインタビューをさせて頂いたことがある。トラブルは起きなかったし、"ようやくしっかりしたことが言えて良かった"と言われた」とコメント。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「今、視聴者のコメントを見ていて面白いと思ったのが、"なんでこの絵を撮ったのか、その意図がわかるならまだいいが"というもの。つまり"こういう大義があるから、あえて諸刃の剣になる取材した"、というのではなく、"こういう事件のときはこういう絵を撮るもんだ"、という惰性、サボりに視聴者は厳しいんだと思う。ワイドショーに出演するようになって改めて感じたことだが、視聴者は普通、情報番組を頭から最後までじっと座って見ることはないと思う。その視点に立つと、だからこういう演出にするんだな、ということがわかってくる。これからはチャンネルを回しながら見てもらうような番組を作るのか、それとも最初から最後まで見たいなと思わせる番組を作るのか、その狭間で頑張らなければいけないんだと思う」と分析した。

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 議論を受けて、司会進行を務めるテレビ朝日平石直之アナウンサーは「もちろん会見の映像そのものは流さなくても良かったのではないかなど、様々な論点はあるが、会見で教頭先生が詳細を話してくださったことで見えてきたものは、事件を知る上で非常に重要な要素だったと感じている。だから会見の取材そのものが必要だったのかと言われてしまう現状については大変に危惧している。その上で、非常に厳しい声がたくさんあることは日々受け止めているし、昨日も深夜3時まで杉原プロデューサーとこの問題についてずっと議論していた。そういう反省の中で日々お送りしている」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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