あるのか、ないのか。注目されていた来月の"衆参ダブル選挙"について、安倍総理が見送る意向だと報じられた。10日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、政治ジャーナリストの細川隆三氏とともにダブル選挙に向けて永田町に吹いた衆議院の"解散風"を振り返り、今後の動きを予測した。
"風が吹き始めた"といわれたのは、4月半ばのことだった。きっかけは「(6月の日銀短観を踏まえ)万が一景気が腰折れすれば、何のための増税なのか、与党として良く見ながら対応したい」「国民の信を問うことになる」という萩生田幹事長代行の発言だった。また、菅官房長官も4月22日の定例会見で「解散は総理の専権事項である。総理がやるといえばやるし、やらないといえばやらない」などと発言、解散に踏み切る可能性をちらつかせ野党側をけん制していた。
細川隆三氏は「ここで風が吹き始めた。まだ微風ではあったが、政治家の発言には裏の意味もあるので、永田町はそわそわし始めた。また、5月17日に菅官房長官が"総理の専権事項だから"で普通は止めておくところ、"内閣不信任決議案の提出が解散の大義になる"と、非常に珍しい発言をした。自民党の国会議員の中にも連休明けくらいから準備を始めていた方もいた。そこに発言なので、一挙に風が強くなった」と話す。
一方、自民党の二階幹事長も「消費税の問題を国民のみなさんにこれ以上、これでもか、これでもかとこすりつけてね、それで解散するというのは愚の骨頂ですよ」としながらも「大義は一日あったら作りますから」「総理が決断すれば自民党はいつでもその準備、用意はある」とコメント。そして安倍総理は5月24日、「基本的に信を問うことは考えていない」と発言する。
「総理は解散について聞かれても、"考えていない"などと答えるもの。ところがここでは"基本的に"という言葉を付けて、何かを匂わせることを言っている。これも普通は言わないこと。逆になぜこんなことを言ったのか、よく分からなくなった(笑)」(細川氏)
さらに安倍総理は5月末、「風という言葉には今、永田町も敏感なんですが、一つだけ言えることは、風は気まぐれで誰かがコントロールできるようなものではい」と""風"に言及した。
「コントロールできるようなものではない、というのは、解散権は自分にある、ということを言っている。どんなに反対があろうが、解散すると言えば解散になるということ。24日の発言とはまた違うので、再び"やるのかな"と見えてしまった」(細川氏)。
しかし今月に入り、"老後に2000万円の貯蓄が必要"とする金融庁の報告書問題や、自民党の森山国対委員長が会期延長ついて「必要があればそういうことだと思う」と発言したこと、さらに先週"スーパーシティ構想"法案が閣議決定したことを受けて、会期が延長されるとの観測が広まった。衆参ダブル選の風が強まったかに思われる中、10日になって共同通信などのメディアが10日、"与党内で同日選見送り"報道するに至る。司会進行の平石直之アナウンサーは「ダブル選に向けてテレビ局の中も準備を始めていたが…」と困惑気味だ。
「森山国対委員長の発言には大きな意味はない。会期延長して解散、という選択肢もあるので、総理がどういう判断をしてもいいようにという、意向の忖度だ。国対というのはそういうところなので、この発言が解散するかどうかには直接的には結びつかない。ただ金融庁の報告書の問題については、年金問題には安倍さんもトラウマがあるし、永田町の人たちはネガティブに捉えてしまう傾向もあるし、影響は受けると思う。それでも言い方の問題で、正しいことを言っていると理解する人もいるし、時間はまだある。政府の説明が理解を得られて、影響が少ないと判断されれば、まだダブル選挙の可能性はある。次の参院選で自民党の議席は減るだろうというのが普通の見立てだし、そうはいってもそこそこ取るのではないかという分析が随分前から出ていたので、その見通しが理由というわけではないと思う」(細川氏)。
今週に入り、風は止んだかのようにも見えるが、実は"死んだふり"ではないかとの見方もある。そこで思い出されるのは、1986年の「死んだふり解散」だ。解散を否定し続けていた中曽根総理が臨時国会冒頭でいきなり解散。そして行われた史上2回目の衆参ダブル選では自民党は圧勝する。
「それこそ"安倍目線"で考えた時、ここで解散がなければ、次の機会はオリンピックの直後だ。総裁任期があと1年という中で解散し、さらに4年の任期を訴えることにはちょっと無理があるし、自分は勇退して他の人が選挙をやる、みたいな話になれば解散を打つタイミングも非常に難しい。後々の安倍政権の政権運営を考えてみると、色々な戦略を練ることができるという点で今回の衆参ダブル選挙の可能性はあると見ていた。"やるやる"と言って解散するよりも、"ないない"と言っていて解散した方がインパクトはある。前回(2017年)、総理が解散について会見したのが9月25日。その2週間前くらい前に"解散か"という報道が出た。このときとスケジュールを比べてみると、今回、総理が外遊から戻る14日以降の最終判断でも間に合うので、まだ解散は打てる。19日に党首討論が開催される可能性があるので、そこまではまだ可能性はある」(細川氏)。
先週末、天候に絡めて「風はどうでしょう?」と記者に尋ねられ、「まあ気持ちのいいそよ風ですね。ほとんど無風ですけども」と発言した安倍総理。その胸の内は…。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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