“老後に2000万円が不足する”とした金融庁の報告書について、麻生財務大臣は正式な報告書としては受け取らないとの考えを明らかにした。
金融庁が3日に公表した報告書では、「平均的な高齢夫婦無職世帯の場合、公的年金などでは毎月5万円の赤字になり、退職後の30年間で2000万円が不足する」と試算。また、先月22日の報告書から表現を変更し、公的年金の給付水準について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」という箇所は「今後調整されていくことが見込まれている」に、老後の生活水準について「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」という記述は削除された。
麻生大臣は11日、金融庁の報告書について「世間に著しく不安や誤解を与えている」としたうえで、「これまでの政府の政策スタンスとも異なっているので、担当大臣として正式な報告書として受け取らない」との認識を示した。
報告書をめぐり国会も紛糾しているが、歴史学者で東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏は「年金問題は国民全員に関わることなので、いたずらに選挙の道具にしてほしくない」と指摘。国会で民主党政権を引き合いに出した安倍総理と追求する野党に対しては、「民主党をどうこういうのも格好良くないし、野党もただ攻めるのではなくて『どうしたら僕たちの老後を守れるか』を建設的に議論してほしい」と率直な意見を述べる。
また、若い世代について「僕らの世代は年金を貰えるのかと考える人の方が圧倒的に多い」との見方を示したうえで、「多くの権力者は庶民に対してあまり本当のことを言わないが、嫌な結果であっても情報をきちんと教えてほしい。高齢者はなんとか逃げ切れるかもしれないが、若い世代は逃げ切れないかもしれないわけで、受け取る側もきちんと勉強しないといけない」と述べた。
そんななか、自民党は10日、女性誌の『ViVi』に若者向けのPR記事を掲載した。その記事は「わたしたちの時代がやってくる！権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい？」と題し、Tシャツを着たモデルらと今後の社会をどうしたいかという様々なメッセージが紹介されている。
若者への訴求に力を入れる自民党について「うまい手ではある」と話す本郷氏だが、一方で田中芳樹氏の小説などで出てくる「哲人王」という表現を引用し「『我々庶民にとって幸せな状況というのは哲人王を戴いている状況である』という言葉があるが、哲人王とは深く将来を見通せるような知性に溢れた王様のことで、その王様の言う通り後ろを付いていけばいいという意味。田中先生はこれが民主主義の一番の敵だと、リーダーにすべてを任せるのではなく自分たちが勉強してリーダーを選ばなければいけないと表現していて、この問題は特にそうだと思う」と指摘した。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
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